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第四章

30『テオドールの決心』

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 抱き込んで、宥めすかしてようやく翌日の出立は取り消させた。
 基本、温厚?なアンナリーナだが一度キレると手がつけられなくなる。
 今回はどう落としどころをつけようかと、テオドールは考えていた。
 そしてもうひとつ、以前から悩んでいた事柄にも、そろそろ決着をつけるべき時がきたようだ。

「この年でこんな事になるとは思わなかったな」

 静かにくつくつと笑っていると、腕の中のアンナリーナが身じろいだ。

「熊さん、どうしたの?」

「何でもない……」

 それでも、その後もテオドールは考え込んでいる姿を隠そうとしなかった。



 その後、アンナリーナはセトとイジに魔獣の森での採取を命じた後、調薬室に篭った。
 そしてかつてないほどの量の調薬にかかる。
 アマルやアラーニェの手も借りて、さくさく仕上げられていく様はまるで工場のようだ。

 そんな頃、テオドールと言えば、クランマスター・ヨーゼフの元にいた。

「何だ?いつになく真剣な顔をして」

「あんた、気づいてるんだろ?」

 ドサリとソファーに座ったテオドールはヨーゼフを睥睨した。
 それに対してヨーゼフは顎をしゃくって話の先を促す。

「ギルドでの一件で、リーナが機嫌を損ねた。
 すぐにここを立つと言って大変だったが、どうにか説得してあと数日は滞在する事になった。
 ただ……将来的にはこの町と距離を置きたいようだ」

 本当はもう少し深刻だったのだが、そのあたりはぼかして伝える。

「今回は俺もついて行って、拠点を王都に移したい。
 側で支えてやりたいんだ」

「……では、かねてから予定していた、王都進出を早めるか」

「それ、それも俺は抜けさせてもらいたい」

「なんだと?」

 ヨーゼフの表情が引き締まった。

「あんたもわかっていると思うが、リーナは色々訳ありだ。
 あいつの周りに、よくわからん奴を近づけたくない。
 それとリーナは近々、従魔たちを冒険者登録してパーティを組むらしい。
 ……俺もそこに参加するつもりだ」

「テオドール!」

 ヨーゼフの怒気が伝わって来るが、テオドールは飄々としている。
 それどころか更に彼を煽った。

「俺はこのクランを出て行くつもりでいる。
 ……そうなれば、リーナを留めるものがなくなるから、今すぐと言うわけではないが」

 そうして二人は睨み合った。



 ギルドとクランに納めたポーションや薬は合わせると、金貨2000枚を軽く超えた。
 どちらの納品もアンナリーナは姿を見せず、すでに王都に戻る準備を終えていると言う。
 アンナリーナが転移出来ると言う情報はなるべく隠匿したいので、町の門を出るところを印象付けなくてはならない。今回はそれに、テオドールも同行するのだ。


「へ?熊さん、もう一度言って?」

「ああ、俺も王都に拠点を移す。
 まだあと何年かはクランに部屋を残して、今まで通りポーションを卸すが、行く行くはおまえと一緒に、気ままに旅暮らしもいいな、と思ってる」

「熊さん……」

「さあて、外に出たら転移するんだろう?どこに行くつもりだ?
 デラガルサか?」

「うん、少し腰を据えて攻略してみる?」

 アンナリーナは嬉しそうだ。

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