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第四章
23『よりどころ』
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テオドールは無理に聞き出したりしない。
服を握りしめ震えるアンナリーナを、股座に抱き込んで、抱きしめた。
「熊さん……」
「ん?どうした?」
もそもそと動き出したアンナリーナに、テオドールは背中を撫でていた手を止める。
「昨日……
モロッタイヤ村に行ってきたの」
「モロッタイヤ村?」
「うん、私が森から出てきて一番はじめに行った村。
……すごくお世話になったの」
アンナリーナは唇を噛みしめる。
「そこが、去年の初冬……
盗賊団に襲われて、お世話になった人が殺されたの」
テオドールの手がピクリと動いた。
「宿屋の女将さん……
とってもよくしてもらったの。
私、世間の事に疎くて、この村で常識を教えてもらった」
そこで、またしばらく黙り込んで、次に話しはじめたアンナリーナの顔つきが変わっていた。
「一番最初に話した門番の兵士さん、野菜や果物を売ってくれた食料品店のみんな、そして女将さん。
問答無用で斬り伏せて略奪したって」
「まだ捕まってないのか?」
「国境を越えて、まだ暴れているらしい」
テオドールはギルドの依頼でそれらしいものがあったか、考えていた。
だが、間に国二つ挟んでいるのだ。
「明日にでもギルドに問い合わせておいてやる。
闇雲に突っ込むなよ?」
「さすがに、いくらなんでもどこの誰かわからないのに突っかかったりしないよ」
力なく笑ったアンナリーナだが、少し元気が出てきたようだ。
「その宿屋は女将さんと厨房担当のひとが二人で経営してたんだけど、二人は夫婦だったんだよね」
それはよくある話だ。
「で、そのひとは “ ノーム ”だったの」
「そりゃあまた、珍しいな」
ノームは魔獣寄りに分類される亜人種だ。
異種族間の婚姻は、ないわけではなかったがとても珍しかった。
「家を焼かれて、酷い怪我をして。
奥さんを殺されたショックで生きる希望をなくして……でも私の従魔になる事を受け入れてくれて、今ツリーハウスで治療中なの」
「そうだったのか……
俺にできることなら何でも言え。
これでも国軍にコネがある」
「うん、ありがと」
顎をあげるようにしてテオドールを見上げるアンナリーナ。
その小さな顎に指を添えて、顔を近づけていくテオドール。
彼の髭はきれいに剃られていた。
翌日、寮のアンナリーナの部屋には、食事会用のダイニングセットが設えられ、純白のテーブルクロスがかけられた。
そこにロココ調の燭台が置かれ、銀のカトラリーがセットされていく。
食器は有名なイギリス製だ。
料理は午前の授業を終えてきたアンナリーナとアラーニェ、そしてアマルの手で作り上げた。
それはすべてキッチンのアイテムボックスに入っていて、順番に給仕していくことになっている。
アラーニェに食事会用のドレスに着替えさせられ、侯爵一行を出迎える。
薄桃色のシンプルなロングワンピースだが、高価なアラクネ絹をこれほど惜しげなく装うものは少ないだろう。
「ようこそ、いらっしゃいました」
服を握りしめ震えるアンナリーナを、股座に抱き込んで、抱きしめた。
「熊さん……」
「ん?どうした?」
もそもそと動き出したアンナリーナに、テオドールは背中を撫でていた手を止める。
「昨日……
モロッタイヤ村に行ってきたの」
「モロッタイヤ村?」
「うん、私が森から出てきて一番はじめに行った村。
……すごくお世話になったの」
アンナリーナは唇を噛みしめる。
「そこが、去年の初冬……
盗賊団に襲われて、お世話になった人が殺されたの」
テオドールの手がピクリと動いた。
「宿屋の女将さん……
とってもよくしてもらったの。
私、世間の事に疎くて、この村で常識を教えてもらった」
そこで、またしばらく黙り込んで、次に話しはじめたアンナリーナの顔つきが変わっていた。
「一番最初に話した門番の兵士さん、野菜や果物を売ってくれた食料品店のみんな、そして女将さん。
問答無用で斬り伏せて略奪したって」
「まだ捕まってないのか?」
「国境を越えて、まだ暴れているらしい」
テオドールはギルドの依頼でそれらしいものがあったか、考えていた。
だが、間に国二つ挟んでいるのだ。
「明日にでもギルドに問い合わせておいてやる。
闇雲に突っ込むなよ?」
「さすがに、いくらなんでもどこの誰かわからないのに突っかかったりしないよ」
力なく笑ったアンナリーナだが、少し元気が出てきたようだ。
「その宿屋は女将さんと厨房担当のひとが二人で経営してたんだけど、二人は夫婦だったんだよね」
それはよくある話だ。
「で、そのひとは “ ノーム ”だったの」
「そりゃあまた、珍しいな」
ノームは魔獣寄りに分類される亜人種だ。
異種族間の婚姻は、ないわけではなかったがとても珍しかった。
「家を焼かれて、酷い怪我をして。
奥さんを殺されたショックで生きる希望をなくして……でも私の従魔になる事を受け入れてくれて、今ツリーハウスで治療中なの」
「そうだったのか……
俺にできることなら何でも言え。
これでも国軍にコネがある」
「うん、ありがと」
顎をあげるようにしてテオドールを見上げるアンナリーナ。
その小さな顎に指を添えて、顔を近づけていくテオドール。
彼の髭はきれいに剃られていた。
翌日、寮のアンナリーナの部屋には、食事会用のダイニングセットが設えられ、純白のテーブルクロスがかけられた。
そこにロココ調の燭台が置かれ、銀のカトラリーがセットされていく。
食器は有名なイギリス製だ。
料理は午前の授業を終えてきたアンナリーナとアラーニェ、そしてアマルの手で作り上げた。
それはすべてキッチンのアイテムボックスに入っていて、順番に給仕していくことになっている。
アラーニェに食事会用のドレスに着替えさせられ、侯爵一行を出迎える。
薄桃色のシンプルなロングワンピースだが、高価なアラクネ絹をこれほど惜しげなく装うものは少ないだろう。
「ようこそ、いらっしゃいました」
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