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第四章
10『アレクセイ』
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「リーナ君!」
アンナリーナが動かなくなったビッグワームを収納して、初めて教官の結界内に意識を移すと、生徒たちは喝采の歓声をあげていたが教官たちは真っ青な顔色でパニック寸前だった。
「今すぐに行きます。【洗浄】」
全身を清めて彼らの元に駆け寄る。
そこにはワームの直撃を受けた生徒が横たえられていた。
「食いちぎられてはいないが、かなり酷い。手持ちのポーションで何とか保たせてきたが……」
アンナリーナは【解析】で、横たわる男の子の状態をスキャンしていく。
「出血が多いですね。
どんな種類のポーションを使いました?」
「初級と中級を。
だが傷は塞がらなくて」
「大丈夫ですよ」
アンナリーナはアイテムバッグからポーション瓶を取り出した。
まずはそれをそれぞれの傷にかけていくと沁みたのか、意識のない男の子が呻いて、身じろぐ。
「ちょっと我慢してね」
一番酷い脚は、すでにズボンが切り裂かれ、傷が露わになっていた。
そこはようやく、出血が治まりつつある。
「骨は大丈夫……
腱が傷ついているからもう少しポーションを使うね」
アンナリーナはもう量産しているが、まだ一般には流通させていない【上級ポーションC】を、まるで湯水のように使っていく。
「あ、気がついた?
じゃあ、これ……飲んでくれる?」
男の子にポーション瓶が2本、渡される。
同時に丸薬も差し出された。
「これは増血のお薬だよ。
少し様子を見て、痛み止めとか熱冷ましとか考えるね」
当然の事ながらオリエンテーションは中止となり、まずは教官とアンナリーナが付き添って男の子が運ばれていった。
学院に戻ったアンナリーナは、男の子に付き添って寮の医療室にいた。
この男の子、実は北の辺境の領地を守る伯爵家の嫡男で、伯爵が老年に至ってから授かった一粒種である。
アレクセイ・サバベント、それが彼の名だ。
「毒消しのポーションで洗ったから大丈夫だと思うけど、一応このお薬も飲んでおいて。
これは毒状態解除薬だから」
「はい、ありがとうございます」
「痛みはない? 今夜は熱が出るかもしれないから、ここに泊まってね。
私も付き合うから」
そこに、呼ばれて駆けつけた、アレクセイの従者が飛び込んできた。
「坊っちゃま!」
「イゴール」
「坊っちゃま、ああ、よかった……
錬金薬師様、この度は本当にありがとうございました。ありがとうございますぅ……」
年配の、爺やと言ってもよい従者であるイゴールが、最後はさめざめと泣いている。
「従者さんが来てくれたし、ちょうどいいから私も部屋に戻って着替えてきます。
えっと、なんて呼んだらいいのかな?」
「僕はアレクセイ。
アレクセイ・サバベントです」
「じゃあ、アレクセイくん、ベッドで大人しくしていてね」
アレクセイ・サバベント。
彼は今年度最年少の12才である。
いささか過保護に育てられた彼は、年若いのもあって未だに友だちの一人もいない。
ギフト授与式も済ませていないため、適正を図る事も出来ずにいる “ 半端者 ”扱いされているのだ。
「坊っちゃま、学院の方から報せを受けて、爺は生きた心地がしませんでした」
「うん、本当に突然な事だったんだ。
リーナ様がいらっしゃらなかったら、僕は脚を……いや、命すら危なかった」
「何と!!」
イゴールが卒倒しそうな顔をしていた。
アンナリーナが動かなくなったビッグワームを収納して、初めて教官の結界内に意識を移すと、生徒たちは喝采の歓声をあげていたが教官たちは真っ青な顔色でパニック寸前だった。
「今すぐに行きます。【洗浄】」
全身を清めて彼らの元に駆け寄る。
そこにはワームの直撃を受けた生徒が横たえられていた。
「食いちぎられてはいないが、かなり酷い。手持ちのポーションで何とか保たせてきたが……」
アンナリーナは【解析】で、横たわる男の子の状態をスキャンしていく。
「出血が多いですね。
どんな種類のポーションを使いました?」
「初級と中級を。
だが傷は塞がらなくて」
「大丈夫ですよ」
アンナリーナはアイテムバッグからポーション瓶を取り出した。
まずはそれをそれぞれの傷にかけていくと沁みたのか、意識のない男の子が呻いて、身じろぐ。
「ちょっと我慢してね」
一番酷い脚は、すでにズボンが切り裂かれ、傷が露わになっていた。
そこはようやく、出血が治まりつつある。
「骨は大丈夫……
腱が傷ついているからもう少しポーションを使うね」
アンナリーナはもう量産しているが、まだ一般には流通させていない【上級ポーションC】を、まるで湯水のように使っていく。
「あ、気がついた?
じゃあ、これ……飲んでくれる?」
男の子にポーション瓶が2本、渡される。
同時に丸薬も差し出された。
「これは増血のお薬だよ。
少し様子を見て、痛み止めとか熱冷ましとか考えるね」
当然の事ながらオリエンテーションは中止となり、まずは教官とアンナリーナが付き添って男の子が運ばれていった。
学院に戻ったアンナリーナは、男の子に付き添って寮の医療室にいた。
この男の子、実は北の辺境の領地を守る伯爵家の嫡男で、伯爵が老年に至ってから授かった一粒種である。
アレクセイ・サバベント、それが彼の名だ。
「毒消しのポーションで洗ったから大丈夫だと思うけど、一応このお薬も飲んでおいて。
これは毒状態解除薬だから」
「はい、ありがとうございます」
「痛みはない? 今夜は熱が出るかもしれないから、ここに泊まってね。
私も付き合うから」
そこに、呼ばれて駆けつけた、アレクセイの従者が飛び込んできた。
「坊っちゃま!」
「イゴール」
「坊っちゃま、ああ、よかった……
錬金薬師様、この度は本当にありがとうございました。ありがとうございますぅ……」
年配の、爺やと言ってもよい従者であるイゴールが、最後はさめざめと泣いている。
「従者さんが来てくれたし、ちょうどいいから私も部屋に戻って着替えてきます。
えっと、なんて呼んだらいいのかな?」
「僕はアレクセイ。
アレクセイ・サバベントです」
「じゃあ、アレクセイくん、ベッドで大人しくしていてね」
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「坊っちゃま、学院の方から報せを受けて、爺は生きた心地がしませんでした」
「うん、本当に突然な事だったんだ。
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「何と!!」
イゴールが卒倒しそうな顔をしていた。
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