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第三章

102『ネロの成長と城塞都市クレヴィット』

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 今アンナリーナは、毎日寝る前の日課……ツリーハウスに来ている。

「アラーニェ、いつも任せっきりでごめんね」

 今夜はちゃんと休ませるためにイジを伴い、彼はもう自室に戻っている。

「残り物だけど、これも食べて?」

 アラーニェの遅い夕食に、先ほどのトンカツを取り出し、テーブルに置いた。
 まだ食べ足りないセトやアマルには別に、ステーキを取り出した。

「2人とも、今日はありがとう。
 セトは引き続きこの後もお願いするけど、よろしくね」

「主人、礼には及ばない。
 昼の奴らも大した事はなかったし、主人の結界が破られる事などあり得ないだろう。
 今宵は俺1人でも大丈夫だと思うが?」

「熊さんは休ませて、アマルにお願いするよ。アマル、よろしくね」

 ジェリーフィッシュが嬉しそうに、くるくる回る。
 滅多に外に出る事のないアマルは、殊の外嬉しそうだ。

「それで、ネロの具合はどうかな?」

 食卓にちょこんと着いているネロは、様子を見ながら少しづつステータスを上げている状況で、その歩みは亀の如く鈍い。
 彼は、アンナリーナが創り出した初めてのアンデッドで、他の従魔たちとは根本的に違う。

「ネロ、今日も少しだけどUPさせるね【体力値供与】【魔力値供与】【鑑定】」

 ネロ(スケルトン、雄)
 体力値 30
 魔力値 15

 ギシリと音を立てて、ネロが立ち上がった。
 今まで、ゆっくりとしか歩けなかったネロが、その動きも滑らかに歩き始める。

「これならルームウォーカーでトレーニング出来そうだね。
 筋肉……はないけど、歩いたり走ったりする練習を始めてくれる?」

 ネロは頷き、最近は誰も使用していなかったトレーニングルームに向かう。
 アンナリーナはしばらくそれに付き合い、風呂に入ってから護衛の馬車に戻っていった。



 王都を出発してから5日目、初めての町に到着した。
 町の名は【クレヴィット】
 代官が派遣されている、国の直轄地だ。

 門番は、この季節外れの商人の訪れに、いささかびっくりしていたが、彼らの証明書を改め、アンナリーナとテオドールはギルドカードを、あとセトの登録証も出して見せた。
 無事に通過を許されて、馬車が動き出す前にアンナリーナが門番に聞く。

「実は、この荷馬車には高価な商品を積んでいまして、これから宿に行くのですが……もし、そこの馬車置き場で何かあった時、この場合は賊ですが、場合によっては撃退しても?」

 これは賊を退けると言うより屠ってしまうことを意味している。

「そんな事はないと思いますがね」

 アンナリーナたちが通り過ぎるのを、手を振って見送る門番。

「ちょっと、緊張感なさすぎでしょう……大丈夫なの?」


 宿に着き、ふた部屋確保してから、テオドールとボリスは隣接している駐馬車場に向かった。
 馬屋で馬たちを労わり、世話をする。この2人にとっていつもの事だが、今日はアンナリーナの魔力水でないのが不満そうだ。


 今夜は宿で食事を摂るため、ダージェは少し残念に思っている。
 彼らと旅をはじめて5日、たった5日しか経っていないのに、もうすっかり餌付けされてしまっている。

「今夜は私がセトと見張りをしますね。熊さんにはゆっくり休んでもらいます……あの、セトもいるから大丈夫ですよ?」

 どうせ結界を張るのだ。
 魔獣の森の高位魔獣でも破れない結界を人間が破れるとは思えない。

 ダージェの方も、セトの実力を疑っていない。
 それに、毎夜【結界】を見ていると、はっきり言って夜番など必要ないと思ってしまう。
 彼はここで話を変えた。

「リーナちゃん、この町を最後にあとはしばらく立ち寄れる場所がなくなるんだ。
 だから、食材などの補給はここでした方がいい」

 市は早朝の方が良いのだが、目星をつけるために早速出かけてみる事にする。
 アンナリーナはテオドールを誘って、宿を出た。


【クレヴィット】は典型的な城塞都市だった。
 塀が二重に張り巡らされ、国軍の第13師団辺境大隊が常時駐屯している。
 町の産業は軍事一色。
 そして彼らの衣食住、そして軍備を賄うため、この町は冬だというのに賑わっていた。
 市はほとんどが店じまいした後だったが、大体の雰囲気は掴める。
 そして今は屋台がたくさん出ており、2人は味見をしながら、美味しかったものを買い込んでいた。

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