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第三章

99『オークのトンカツ』

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 一度、すべてを収納してこの場を離れることにした。
 このままここに居れば血の匂いを嗅ぎつけて、森狼などの魔獣が襲ってくるかもしれない。
 そして、セトが持ち帰ってきた上位種も検分して、これもインベントリにしまい込んだ。

「熊さん、このオークの繁殖していた村……残党がいないか確かめに行った方がいいかな?」

 そう話しながらも【探査】を広げて見ている。

「今のところ……魔獣が纏まっているっていう反応は出ないのよね。
 ポツポツといるのはいるんだけど広範囲に広がってる」

「一応、次の町でギルドがあったら報告するぐらいでいいんじゃないか?
 この人数なんだ……うるさいことは言うまいて」

「わかった。
 ダージェさんたちに報告して、出発しようか」

 アマルを戻し、怯えないように頭巾をかぶせていた馬の世話をする。
 結界を解いて、ダージェとボリスに声をかけると、おっかなびっくり顔を出した。

「お待たせしました。
 急ですがボリスさん、すぐにここから立ちたいのでお願いできますか?
 詳しい事は休憩のときにでも」

 ダージェたちとて素人ではない。
 見た目には何もないが、濃く残る血臭は誤魔化しようがない。
 ボリスは、すでに馬の準備を始めていたテオドールの元に走り、イジは念のため荷物を積んでいる馬車の一番後ろの、積み込み用のステップに陣取った。

「ごめんね、イジ。
 寒い思いをさせるけど、よろしくお願いします」

「ご主人様、俺は人より寒さに強い。
 こんな、分不相応な外套ももらっている。心配しなくて大丈夫」

 馬車が出発したのは、アンナリーナ たちがオークの群れを殲滅してから一刻ほども経っていなかった。



 途中の休憩もそこそこに、アンナリーナたちを乗せた馬車は、その魔法の付与のおかげもあって街道を疾駆していた。
 御者台との連絡用の小窓を開き、先程からダージェとボリスが話していた。

「テオドール殿、リーナちゃん、ちょっと聞いてくれ」

 馬車は速度を落とさず、走り続けている。

「今、私たちの馬車は順調に来ているのだが、順調すぎて中継地を通り過ぎている。
 それでなのだが、この先に中継地にたどり着けなかった時にたまに使う空き地があるんだ。
 少し早いが今夜はそこで野営しようと思うんだが……どうだろうか?」

 アンナリーナが反対する理由はなかった。
 結界さえ張ってしまえば、例え街道上でも関係ないのだ。

「はい、結界も張りますし見張りの従魔ももう一匹増やします。
 それと今夜の夕食は期待していて下さい。
 それと……」

 結局、オークの群れの素材は、上位種はアンナリーナとテオドールに、他の、結果的に129匹いたオークの素材60匹分の睾丸がダージェとボリスのものとなった。
 これはもらいすぎだとダージェは抗議していたが、アンナリーナは聞き入れない。
 それよりも空き地全体に強めの結界を張り、昨夜と同じように調理のための準備を始めた。


 血抜きが完璧になされたオークの肉を【解体】のスキルで肉のブロックにしていく。
 今回の調理にはアマルも呼び出して、手伝わせていた。

「はぁ~ ジェリーフィッシュとはまた、珍しいものを見せて頂きました」

「この子は生活魔法に特化していて、こうしてお料理とか手伝ってくれるんです」

 今はパンをおろしてパン粉を作っている。
 そしてバットに小麦粉を出したり、卵液を作ったりとまめまめしく動いていた。
 オークの、適度に脂身の入ったロース肉が切り分けられていく。
 そして筋切りをし、塩胡椒で下味をつけてから小麦粉をまぶし、卵液につけてパン粉をつけて余分は叩く。
 魔導コンロにかけられた鍋には食物油(【異世界買物】で購入したサラダ油)が熱せられていて、アンナリーナ はそこにパン粉を数粒落とし温度の加減を見てからトンカツ(オークカツ?)を投入した。
 ジュワッと油の音がして肉が沈んでいく。
 そしてアンナリーナ は続けて3枚入れると、油の加減を見ながらアイテムバッグからキャベツの千切りが山となったボウルを取り出した。

「アマル、お皿の準備をお願い。
 イジはテーブルのセットを急いでね」

 この時、ダージェとボリス、テオドールは馬の世話をしていた。

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