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第三章
80『ツベルクローシス』
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今回のお話には個別の病気、症状、状況などに過度な表現、そしてそれに関しての批判などが出てきますが、これはすべて小説上のフィクションです。
気分が悪くなると思われた方はブラウザバックをお勧めします。
この件についての批判はお受けしませんのでよろしくお願いします。
学院長とともにロドス伯爵、そしてエレアント公爵が駆けつけてきた。
アンナリーナは彼らに向かい、完璧な淑女の礼をして見せた。
「これは公爵閣下もご一緒にお出でとは好都合ですな。
……この娘は私の弟子でリーナ。
【錬金薬師】です。
今回の件はこのリーナが発見した事なのですが、もちろん彼女の【解析】は完璧で、私も確認しております。
リーナ、皆様にご説明を」
「はい、ご紹介に預かりました【錬金薬師】のリーナと申します。
わざわざご足労頂きありがとうございます。
実は……ロドス伯爵様、まことに申し上げにくい事なのですが、お嬢様は【ツベルクローシス】に罹患なされています」
他者に聞かせられない話題なので、今彼らはアンナリーナの結界の中で話をしている。
それでも、顔色を蒼白に変えたロドス伯爵は警戒するかのように周りを見回している。
「ユングクヴィスト様、私の知る限りでは【ツベルクローシス】には治療薬はなかったと思いますが……」
アンナリーナの問いかけにユングクヴィストが即座に応えてくれる。
「治癒薬はないのう。
症状に合わせての対処療法しかない。
……まずは隔離じゃな」
アンナリーナはポーチからクリップボードと万年筆を取り出し、書き始めた。
「感染っている者がいないか【解析】しなければなりません。
この場にいる方々は全員、私が解析しました。感染者はゼロでした。
あとは……大丈夫だとは思いますが、学院全体と出来れば今日の入学式の参列者、というところですか」
アンナリーナがユングクヴィストを見ると、彼が頷く。
「そして大切なのは感染源です。
まずは、失礼ですがロドス伯爵家の皆様を解析して、選別していきたいと思っています。
伯爵様、よろしいでしょうか?」
「ああ……
それよりも我が家はどうなってしまうのだろう」
ロドス伯爵は頭を抱えて蹲ってしまう。
「しっかりなさって下さい、伯爵様!
伯爵様の決断が、これからを決めるのです!ここで不味ったら伯爵様が今想像されているような未来が待ち受けているでしょう。
でも、この後の対処次第で伯爵様は評価される存在にもなり得るのです。
大丈夫です、ユングクヴィスト様もついていて下さいます。
私と、一つずつ対処していきましょう」
アンナリーナの手を取って、ロドス伯爵は涙すら零している。
「ユングクヴィスト様、解析できる医師様をロドス伯爵家に派遣していただけますか?」
「うむ、儂の塔に出入りしている者を見繕おう。
すまぬがリーナ、学院内の者の解析を手伝ってもらいたい」
「もちろんです、ユングクヴィスト様。それと、彼女の出入りしていた場所を消毒しなければ……」
ひとつひとつを要点立てて、クリップボードに書き込んでいく。
その姿をエレアント公爵が驚嘆しながら見つめていた。
小声で学院長に尋ねる。
「学院長殿、あの錬金薬師殿はどういった方なのです?」
「ギィ辺境伯と冒険者ギルドが後見となっているのだが、先日ユングクヴィストの縁者だという事が判明しましてな」
「ユングクヴィスト殿の?」
「左様、奴の姉弟子殿の内弟子だそうです」
今はもう古の大賢者と言われる、ユングクヴィストの師匠には2人の弟子がいた。
その姉弟子、女大賢者オッティリネリーナ・アダバンテスト。
その内弟子と言うと。
「見た目に騙されてはなりませんぞ」
そう、アンナリーナの見かけはどう見ても10をいくつか出ている……ほどにしか見えない。
「あの子の纏う魔力と英知。
取り込みたいと思われるかもしれませんが、機嫌を損ねると……
あの高魔力、どうなるかおわかりですね?」
貴族など、ある程度の魔力を持つものは、相手の魔力を “ 視る ”事が出来る。そして公爵の目にはアンナリーナは、溢れる魔力で眩しすぎるくらいだ。
「それと、もう2人」
気づけば、アンナリーナが学院長の方を見ている。
「先ほど【解析】で発見しました。
今すぐどうの……と言うわけではないですが、1人は男子……確かプロマンティ子爵家の方。
彼は【トレポネーマ】ですね。
それと公爵様、お嬢様に関して重大なお話があります」
エレアント公爵は冷や水を浴びせられたような気がした。
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この件についての批判はお受けしませんのでよろしくお願いします。
学院長とともにロドス伯爵、そしてエレアント公爵が駆けつけてきた。
アンナリーナは彼らに向かい、完璧な淑女の礼をして見せた。
「これは公爵閣下もご一緒にお出でとは好都合ですな。
……この娘は私の弟子でリーナ。
【錬金薬師】です。
今回の件はこのリーナが発見した事なのですが、もちろん彼女の【解析】は完璧で、私も確認しております。
リーナ、皆様にご説明を」
「はい、ご紹介に預かりました【錬金薬師】のリーナと申します。
わざわざご足労頂きありがとうございます。
実は……ロドス伯爵様、まことに申し上げにくい事なのですが、お嬢様は【ツベルクローシス】に罹患なされています」
他者に聞かせられない話題なので、今彼らはアンナリーナの結界の中で話をしている。
それでも、顔色を蒼白に変えたロドス伯爵は警戒するかのように周りを見回している。
「ユングクヴィスト様、私の知る限りでは【ツベルクローシス】には治療薬はなかったと思いますが……」
アンナリーナの問いかけにユングクヴィストが即座に応えてくれる。
「治癒薬はないのう。
症状に合わせての対処療法しかない。
……まずは隔離じゃな」
アンナリーナはポーチからクリップボードと万年筆を取り出し、書き始めた。
「感染っている者がいないか【解析】しなければなりません。
この場にいる方々は全員、私が解析しました。感染者はゼロでした。
あとは……大丈夫だとは思いますが、学院全体と出来れば今日の入学式の参列者、というところですか」
アンナリーナがユングクヴィストを見ると、彼が頷く。
「そして大切なのは感染源です。
まずは、失礼ですがロドス伯爵家の皆様を解析して、選別していきたいと思っています。
伯爵様、よろしいでしょうか?」
「ああ……
それよりも我が家はどうなってしまうのだろう」
ロドス伯爵は頭を抱えて蹲ってしまう。
「しっかりなさって下さい、伯爵様!
伯爵様の決断が、これからを決めるのです!ここで不味ったら伯爵様が今想像されているような未来が待ち受けているでしょう。
でも、この後の対処次第で伯爵様は評価される存在にもなり得るのです。
大丈夫です、ユングクヴィスト様もついていて下さいます。
私と、一つずつ対処していきましょう」
アンナリーナの手を取って、ロドス伯爵は涙すら零している。
「ユングクヴィスト様、解析できる医師様をロドス伯爵家に派遣していただけますか?」
「うむ、儂の塔に出入りしている者を見繕おう。
すまぬがリーナ、学院内の者の解析を手伝ってもらいたい」
「もちろんです、ユングクヴィスト様。それと、彼女の出入りしていた場所を消毒しなければ……」
ひとつひとつを要点立てて、クリップボードに書き込んでいく。
その姿をエレアント公爵が驚嘆しながら見つめていた。
小声で学院長に尋ねる。
「学院長殿、あの錬金薬師殿はどういった方なのです?」
「ギィ辺境伯と冒険者ギルドが後見となっているのだが、先日ユングクヴィストの縁者だという事が判明しましてな」
「ユングクヴィスト殿の?」
「左様、奴の姉弟子殿の内弟子だそうです」
今はもう古の大賢者と言われる、ユングクヴィストの師匠には2人の弟子がいた。
その姉弟子、女大賢者オッティリネリーナ・アダバンテスト。
その内弟子と言うと。
「見た目に騙されてはなりませんぞ」
そう、アンナリーナの見かけはどう見ても10をいくつか出ている……ほどにしか見えない。
「あの子の纏う魔力と英知。
取り込みたいと思われるかもしれませんが、機嫌を損ねると……
あの高魔力、どうなるかおわかりですね?」
貴族など、ある程度の魔力を持つものは、相手の魔力を “ 視る ”事が出来る。そして公爵の目にはアンナリーナは、溢れる魔力で眩しすぎるくらいだ。
「それと、もう2人」
気づけば、アンナリーナが学院長の方を見ている。
「先ほど【解析】で発見しました。
今すぐどうの……と言うわけではないですが、1人は男子……確かプロマンティ子爵家の方。
彼は【トレポネーマ】ですね。
それと公爵様、お嬢様に関して重大なお話があります」
エレアント公爵は冷や水を浴びせられたような気がした。
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