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第三章

34『ダンジョン入口とセトたちの実力』

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 このダンジョンは、元々鉱山跡だったわけで、入り口はぽっかりと空いた洞穴である。
 そこで早速、入り口で止められてしまったアンナリーナだった。

「お嬢さん、まさかひとりで行くんじゃないでしょうね?」

 これからギルドカードを渡そうとしている若い兵士に、諌められるように言われて、頷く。
 渡されたカードを見て、薬師だと確認したもう1人の年配の兵士が全力で止めにかかる。

「薬師殿、どうか思いとどまって下さい」

 ただでさえ貴重な薬師、こんなところで何かあれば大変だ。

「えーっと、私は自分の身を守る魔導具を持っていますし、攻撃するすべも持っています。
 ダンジョン内で薬の素材を採取したいので数日間滞在したいと思っています」

 とんでもない! と顔色を青くする兵士たちはアンナリーナを列から外し、説得をやめようとしない。
 いい加減焦れたアンナリーナはローブの合わせを開いた。
 そこからセトとアマルが顔を覗かせる。

「この子たちは私の従魔なんですが」

 たしかにギルドカードには従魔2匹の記載がある。

「あの木、よいですか?」

 門に近い林の、1番手前の木を指差す。兵士が頷くとアンナリーナのローブから2匹が飛び出した。

 ローブの中に居るために小型化していた2匹が、本来の大きさに戻り、その姿を晒す。

 全長3mのブラックリザードと笠の直径が1mはあるジェリーフィッシュ。
 まずはジェリーフィッシュの触手から液体が噴き出し、それがかかった木が真っ黒になる。

「毒っ?!」

 続いてブラックリザードが噴き出したのは氷の息で、見る間に凍りつく樹木。
 そこに、ローブの中から抜いたククリナイフを持って、近づくアンナリーナ。
 振りかぶって斬りつけた瞬間、凍りついていた木は粉々に砕け散った。
 兵士たちは唖然とする。

「これでも駄目でしょうか?
 何か、生物でもやってみましょうか?」

 ノーサンキューである。
 見たところ、今現在ダンジョンに挑戦している冒険者で最強ではないだろうか。
 くれぐれも、くれぐれも自重してくれと言い聞かされて、やっと解放されたアンナリーナはセトとアマルを伴い、口笛吹き吹き、ルンランとダンジョン通路を進んで行く。


 ぽっかりと口を開けたダンジョンの入り口。
 そしてそこから続く通路を抜けると岩肌がゴツゴツしたホールになっていて、ダンジョンはここから始まる。
 ただ、この第1階層には魔獣が出なくて、そこかしこにこれからダンジョンに挑戦する冒険者が準備の為に腰を下ろしていたりする。
 それに気づかないようにアンナリーナは先に進む。


 下層に降りて行く階段を前にしてアンナリーナは自分とセト、そしてアマルに【防御】と【小結界】を張った。
 常時【探索】して、ヘッドアップディスプレイのようになった位置情報に魔獣や他の冒険者、そして採取可能な素材をUPさせる。
 次に【悪意察知】【危機察知】を常時展開し、腰のククリナイフを抜いて階段を降りていった。
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