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第一章

旅立つ日まで 4月12日

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アンナリーナは今、己のステータスを記したパネルを前に、その身体の震えを治められないでいた。

「うわ、うわ~ これって!!」

 先ほど、いつもの朝の日課【ギフト】の取得を行い、薬の調合や料理に役立てるため【加温】を取得した。
 これで湯を使った沐浴も容易くなる。
 前世の記憶が蘇ったアンナリーナは風呂に入れないのがかなりの苦痛だったのだ。

 それよりも、アンナリーナの取り乱しようの理由はその魔力量を示す数字にある。



 アンナリーナ 14才
 職業 薬師、錬金術師、賢者の弟子
 
 体力値 25
 魔力値 2044/2048(ステータス鑑定に1使用、加温取得に3使用)

 ギフト(スキル) ギフト(贈り物)
  [一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する]
 調薬
 鑑定(看破)
 魔力倍増・継続(12日間継続)
 錬金術(調合、乾燥、粉砕、分離、抽出、時間促進)
 探索(探求、探究)
 水魔法(ウォーター、水球、ウォーターカッター)
 生活魔法(ライト、洗浄クリーン、修理リペア、ファイア、料理、血抜き、発酵)
 隠形(透明化、気配掩蔽、気配察知、危機察知、索敵)
 防御
 飛行(空中浮遊、空中停止)
 加温(沸騰)


「ま、魔力値が2000超えてるよ」

 今更である。
 実はこの世界、魔力値が1000を超えるものは魔術師として一般人と一線を画す。
 アンナリーナの場合、すでに昨日魔力値1000を超えていたのだが、ギフト【飛行】の取得にぶっ飛んでしまっていた。
 ようやく今朝、その事に気付いたのだが。

「魔力値、これだけあれば【飛行】の練習ができるかも!
 よし!準備して出掛けよう!!」

 思いついたら一直線。
 いつもの採取ルックにアイテムバッグをたすき掛け。
 ブーツの紐をしっかりと結んで、アンナリーナは庵を飛び出した。
 階段を駆け下り地面に足をつけて深呼吸する。
 さすがのアンナリーナもいきなり飛び降りるという暴挙には至らなかったようだ。

「飛行」

 ふわりと身体が浮き上がり、今まで体験したことのない感覚に包まれる。
 地面から30㎝くらい上がった時だろうか。
 アンナリーナはこの後どう動けば良いか悩みながらも足を一歩踏み出してみたのだが。

「きゃあ!」

 ドスンと音がして蹲るアンナリーナは自分が落ちた事に気づいて、強かに打ちつけた膝を見た。

「う~ やっぱり難しい。
 こんなんじゃ、そのうち大怪我するよ」

 そこではたと思い出した。

「そっか【防御】」

 身体全体に薄皮が一枚張ったような感覚がしてアンナリーナは自身の手で太腿などを叩いてみた。
 いささか鈍く感じられるがちゃんと感覚はあるのだが。

「よし、練習するよ【飛行】」


 思いの外、難度の高かった【飛行】魔法は、実は一部の高レベルの魔術師だけに許された上位魔法で、使いこなすことは簡単ではない。
 だがアンナリーナは潤沢な魔力値でゴリ押しした。

 初めは何度も落ちたが【防御】のおかげで痛みも怪我もなく、昼頃には空中に留まることを覚え、独特の重心移動も会得した。
 自由に飛べることが出来るようになれば、これほど楽しいものはない。
 森の中を木々を避けながら空中移動して、食事を忘れるほど熱中した。
 そして、思わぬ副産物がひとつ。

 アンナリーナが高度を上げて、地面から2~3m上を見ながら飛んでいると蜂の巣を見つけたのだ。
 これは魔物の蜂ではなく普通の蜂だったので、アンナリーナは迷いなくあっさり頂いてしまった。
 怒った蜂が襲ってきても【防御】でバリアを纏っているので痛くも痒くもない。
 アンナリーナはこの後、夕暮れまで蜂の巣強襲を繰り返したのだが、自分がどれほど常識に当てはまっていないか理解していない。

 魔法の重ねがけは高度な技と多量な魔力を必要として、大体二つが限度。
 それをアンナリーナはまず【飛行】そして【防御】【鑑定】それに蜂の巣を取るときは【隠形】や【ウォーターカッター】まで使っていた。
 もはや無自覚なモンスターである。



 4/1 魔力値 1 魔力倍増取得
 同日夜 (推定)魔力値 2
 4/2 (推定)魔力値 4
 4/3 鑑定取得
 4/4 魔力値 8
 4/5 ① 魔力値16 魔力倍増・継続取得(魔力倍増は併合
 4/6 ② 魔力値32 探索取得
 4/7 ③ 魔力値64 水魔法取得
 4/8 ④ 魔力値128 生活魔法取得
 4/9 ⑤ 魔力値256 隠形取得
 4/10 ① 魔力値512 防御取得
 4/11 ② 魔力値1024 飛行取得
 4/12 ③ 魔力値2048 加温取得
 
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