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昔の話

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…ボク、もう高校3年なのに。
あんなに泣いてしまうなんて…!!


両手で顔を覆って、ボクは朝から絶賛反省中です。


もうね。
おんなじ布団で後ろからカナに抱き抱えられてるとかもね、朝から絶叫モノなんだけど。
ボク布団2つ、敷いたよね?んん?1つだった?1つかも??そうか、1つなら仕方ないよね。うん。なんて。いや2つだわ。2つ敷いたわ!
正面からじゃないだけマシかな、とか。なんか包まれて安心するな、とか思うくらいには頭の回転も遅過ぎておかしいんだけど。



何より昨晩の自分がおかしすぎだよね!!!



羞恥でぷるぷるふるえる。
え?なんであんなに泣いたの自分。
もう幼稚園の頃の話だから、ここ最近涙なんて流してなかったよね?体育祭はとにかく嫌々言っちゃうけど。当日は無駄にお線香焚いて、おりんちりちりん鳴らしちゃうけど。泣くことはなかったよねぇ!!



…逃げたい。とりあえず家の周り走り回りたいほど恥ずかしすぎる。なのに後ろから回された腕はボクの身体をがっちり抱えてるし、片足もボクの足に絡まったりしていてなんかもういろいろ無理。
ボクの頭の上に、カナのあごが乗っててもう、全身でボク包まれてる無理。
しかもすごい、安心感と居た堪れなさとか全身から伝わってくる温もりとか頭の上の息遣いとか無理。
無理。なんだかもういろいろ無理。


(よし、寝よう)



無理すぎて、ボクは一旦放棄することにしまた目を閉じた。






「…だよ。」
(ん…声?)


二度寝後の目覚めは、ボクにひっついていたカナがむくりと起きた、その気配に引っ張られたから、だった。

背中から、息遣いと小さな囁きが聞こえた。

ボクの意識がふっと浮上。
閉じた瞼の裏に、明るい日差しを感じる。
カナはボクに巻きつけていた腕と足をそろそろと動かして、ゆっくり離れて行こうとする。
徐々に、背中から熱がなくなっていくのを感じた。
(寒い…)
思わず薄目を開ける。
熱を名残り惜しんだボクは、そのまま振り返って行ってしまうのを拒もうとした、けれど。
動くより前に、髪にそっと触れてきたものがあった。
手だ。カナの手。
それに気づいたボクの身体は、動き出せずにそのまま固まった。
(…?カナ?)
触れてきた手が、そのままそうっと、そうっと撫でてくる。
「…ごめんね。しんどいこと、話させちゃって。」
頭の上から襟足まで。長くゆっくりと、掌全体で、撫でてくる。
(ごめんね、なんて。そんな謝る必要ないのに。)
そんな、冷静なボクと。
(待って、なんでこんな優しく撫でてくんの?ふぇ?なんでまた謝ってんの?なんで??)
焦るボクとで、目が回りそうだよ!!
身体はぴきりと固まったままなのに、心と目だけはぐるぐる忙しなく動き回る。
さっきまでがっつり抱きつかれていたのもそうだけど、この優しい頭撫で撫でもほんとなんでぇ??
(一周回って涙出そうだよ!!)


そんなボクにちっとも気づかないまま。
カナは何度かそうやってボクを撫でたあと、そっと手を離した。


「…だけど。話してくれて嬉しかった。」
小さな声で、カナが囁くようにボクに言う。昨日と同じ、優しい声で。
「ありがとう。」






…昨日の泣いたボクはとんでもなくおかしかった。でも今朝のボクだってやっぱりおかしいんだ。
顔が熱い。
かーって、なんだか熱がでたみたいに熱くて。
ほっぺた触ったら本当に熱い。
カナが静かに部屋を出て行った後も、ボクは目をぐるぐるしたまま動けずにいた。
なんで?
なんでボクこんな、顔が熱いんだよー!!!


お腹すいたーって、カナが駆け込んでくるまで、ボクは寝転がったままでした。
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