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第二話

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「鍋子、私これからどうすればいい?」
『なべこ……安易ですがまあいいでしょう。マスターここは結構平坦なスペースみたいです。とりあえずこの場所を拠点にして周囲を探索しませんか?』

 鍋、命名『鍋子』の提案に従い、私は周囲を探索することにした。今いる場所は四角いなかなかに広いスペースで、石はごろごろしているが平坦な部屋だ。壁は岩でできているので洞窟の中にでもいるのだろうか。
 あのイケメンは私をいったいどこへ飛ばしたんだろう。
 部屋の外へ出ようと一歩足を踏み出した途端。
 ぐぅ~と私の腹から情けない叫びがあがった。そういえば、あのときは放課後でちょうどお腹が空く時間帯だったな。お菓子を食べそびれたことを思い出し、空腹感が一気に増す。

「鍋子ー、お腹すいた」
『しょうがありませんねー。部屋に戻って何かないか探してみてください』

 部屋は石やら岩やらがごろごろしているが、植物も生えており葡萄みたいな形をしたものが蔓に繋がって沢山ぶら下がっていた。
 もぎもぎフルーツ。

「食べられるかなー?」
『とか言いながら、口に入れようとしないで下さいアホマスター。わたしは解析も可能ですのでそれをわたしの中に入れてください』

 またアホ呼ばわりされてムッとしながらも葡萄もどきを鍋子の中に放り込み、蓋を閉める。

『解析中。解析中…………チーン、解析終了。物質名『ブドウモドキ』毒性なし』

 そのまんまの名前だった。分かりやすくていいね。

「これ食べられるんだね?」
『そうですね、ですが待って――』
「いっただっきまーす―――――かたっ!!」

 歯がごりぃっと言った。コンクリート齧ったみたいな強烈な硬さに涙目になる。

『だから待てと言ったでしょう。待てできないとか駄犬ですかマスター』
「うるさいなぁ、お腹ぺこぺこなんだってばー!」

 バタバタ暴れれば、鍋子が深く溜息を吐く。

『それをもう一度わたしの中に入れてください。食べられるようにクラフトしますから』
「あ、料理もできるんだ?」
『クラフトです』

 あくまでクラフトという機能らしい。そう言い張って、鍋子はクラフトモードになり、数秒後、電子レンジみたいにチーンと音を鳴らした。

『クラフト終了、『ブドウ』を手に入れました』
「…………普通の葡萄でてきた」

 果実をつまんで、皮をはぎ、口にいれる。…………うん、葡萄だ。慣れ親しんだ葡萄さんだ。異世界なのになんて驚きのない素朴な味なんだ。

『なんですか、不満でもあるんですか』
「いえ……不満はありません」

 ちょっと、残念だっただけで。
 鍋の蓋が閉められればいくらでもいれてOKだというのでブドウモドキをいくつか鍋子の中に入れてクラフトした。
 葡萄は美味しい。瑞々しくて、すっぱすぎない絶妙な甘さだ。いくらでも食べられるわーと思って齧っていたが、やはり五房目にもなると飽きがきた。

「肉……肉が食べたい」
『でしたら肉のある魔物を捕まえてください。クラフトします』
「それって多分獣系だよね。……入るの?」
『入ると思います?』

 鍋子を持ち上げてくるりと一週させて眺める。小動物は入りそうだが、それ以外は無理そうだ。

『その場合は、素材の一部でも入れていただければクラフト可能です』
「そうするとその素材になるものは私が倒さなきゃダメってことだよね?」
『そうなりますね』
「私の装備、鍋子だけなんだけど」
『がんばってください』

 投げやりー。
 運動神経はそれなりにある方だと思うけど、文化部(漫研)だったし、反射神経には自信あるけど腕力にはそんなに……。こんなことになるなら脳筋部に入ってムキムキを目指すべきだったか。
 自分の細い腕を眺めて溜息をついていると、鍋子がぶるぶる震えた。

『と言ってもどうしようもないと思いますので、その辺に転がっている適当な石をわたしの中に入れてください』
「え? これでいいの?」

 ころんと脇にあった石を鍋子の中に放り込み石を入れ、蓋を閉めると鍋子はクラフトモードになり、ガタガタ揺れ始めた。

『クラフト中。クラフト中。素材分岐に入ります。武器素材、工作素材どちらに進みますか?』
「え……どっち?」
『今回は武器素材に進みます。……ちーん、『石の剣』を手に入れました』

 スモークと共に現れたのは石でできた剣だった。手触りはつるすべで感触は冷たい。斬るというよりは殴る系のような気もする。

『入れる素材によっては素材分岐し、色々な素材に変化させることが可能です。今回は武器素材に分岐させましたが、工作素材たとえば石のツルハシなども作成が可能です』
「おお、石一つでそんなものが! とりあえずこれで武器確保と。攻撃力は?」
『ピピッ、石の剣の攻撃力、五ポイントです』
「あ、あんまり高くない……ね」
『所詮石ですから。もっと価値の高い素材を入れていただければ攻撃力の高い武器の作成ももちろん可能ですよ』

 と言うので、鉱石堀と言ったらツルハシだよね。ということで石をもう一度入れて、石のツルハシをクラフトしてもらった。
 石の斧、石の槍、石の盾も作れたのでどんどんクラフト。
 していると。

『ぴかーん! 鍋子がレベルアップしました。ただ今のレベル二です。ランク二までの素材をクラフトできるようになりました』

 おお、鍋子がレベルアップした。

「強くなったの!?」
『強度は上がりません。できることが増えただけですバマスター』
「馬鹿って言ったな!? 今、馬鹿って言ったでしょ!」
『~~♪ ~~♪』

 鍋子の性格が分かってきたような気がする。コノアマ。
 鍋子の性能が上がったところで、私はようやく部屋から一歩前へ踏み出した。左手に石の盾、右手に石の剣、背中に鍋子を背負っていざ、出陣!

 と思ったけどさ。

「剣とか持ってても使えない気が……」
「ピピッ、七北楓のステータスを表示します。

 戦闘レベル1
 HP:10p
 MP:5p

 攻撃:5p
 防御:3p
 俊敏:7p
 魔力:0p

 剣熟練度:1p
 斧熟練度:0p
 槍熟練度:0p
 弓熟練度:1p

 採掘熟練度:0p
 採取熟練度:1p
 釣り熟練度:1p

 クラフト(鍋子)レベル2

 剣の熟練度が1pあるので使えることは使えるみたいですよ』

 目の前にステータス画面が現れた。鍋子、なんでもありだな。まるでゲームみたいだが鍋子にレベルがある時点でゲームでした。
 私にもレベルや色々なステータスがあるらしく、ずらーっと並んでいるがなにがなにやら。とりあえず剣熟練度が1pあるので剣の使用は可能らしい。剣も魔法も使えないと思っていたけど剣はなんとか扱えるようだ。魔力が0pだから魔法はやっぱり使えないか。いつか使えるようになりたいなぁ。
 剣熟練度が1pあるのは、あれかな友達と時々チャンバラごっこしてたからかな。弓は中学ん時、弓道部だったからだと思う。

 部屋を出て、広い通路に足を踏み入れる。洞窟の中のようだが、周囲の目が効くくらいあたりは薄明るい。岩自体がぼんやりと輝いているのと、時々足元に生えている花みたいなのが光っているから視界が真っ暗闇に閉ざされることはなさそうだ。
 一応、光る花が気になって鍋子に解析してもらうと。

『ちーん、解析終了。物質名『ホタル草』毒性なし、仄かに光輝く夜の花』

 クラフトしてみると『光る粉』が出来上がり、撒くと光の道ができた。これで小鳥さんに食われることなく道しるべにすることができる。ここはどうやらダンジョンの真っただ中みたいだし、拠点が分からなくなると危険だから道しるべは大事だ。
 私は道中、ホタル草を摘んでクラフトし、粉を撒きながら洞窟内を進んで行った。


『ステータス上昇を確認しました。

 採取熟練度:2p』




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みんなの感想(1件)

あお
2018.10.18 あお

面白かったです! 続きを見てみたいです!

解除

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