花野井一家の幸せ。

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睡蓮の場合2

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翌日、昼食から提供している食堂は今日も賑わっていた。



「スイレンちゃーん!決まったよー!」


「スズランちゃん!俺焼き肉定食!」


「ヒナギクちゃん、私焼き鮭定食おねがい!」


「「「畏まりましたー!」」」



男女関係なく人でごった返している食堂は、花野井一家が男女関係なく大人気だからだ。
美しさをはなにかけない性格は男性だけでなく、女性からも好感をもたれる…らしい。
お客さんからそう言われた。



「はぁー…今日も天使…。」


「目の保養…。」


「地上に舞い降りた女神…。」



感嘆の声がそこらじゅうから聞こえる。
もはや気にすることなく動き回る私たち。
気にしたら負けだ。
いくら私たちは普通だと言っても聞き入れてもらえないのだから。







「ふぅー…ようやく落ち着いたねー。」



夕食の時間もおわり、人がだいぶまばらになっていた。
すずちゃんが壁にもたれ掛かりなが話す。



「毎日大にぎわいだからねー。」


「それほどここを気に入ってくれてるなら嬉しいことでしょ?」


「まぁねー!」



三姉妹が仲良く話していると、お店の扉が開いた。



「いらっしゃい!こちらへどうぞ。」



すずちゃんがお客さんを席へ誘導する。
フードを被っていて定かではないが、きっと昨日の人だ。
今日は1人で来ているようだ。



「あの…昨日のウエイトレスさんはいますか?」


「え?」



すずちゃんがその言葉に固まった。
もちろん私もひなちゃんもだ。
フードを被っているのだとお客さんなんて他にいないので、きっと2人も昨日の人だとわかっているだろう。
そんな人が言ったのだ…昨日のウエイトレスさんと。
昨日初めて見たばかりの私と他の姉妹たちを見分けているのだ。
偶然当たることもあるが、大体間違えて名前を呼ばれるのに。
その偶然ももう一回聞くと間違えているが。
そんな常連さんも一緒に暮らしてるフランクさんやハンナさんだってまだ見分けがついていないのに、この人…一目でわかったの?
それとも偶然?



「あの、昨日の方ですよね?また来ていただけて嬉しいです。」



すずちゃんはフードの人を探るようにすっとぼけた。
これで普通に話をすれば偶然ということになる。



「はい。えっと、昨日のウエイトレスさんの姉妹ですか?2人いらっしゃった方のどちらかですよね?接客してもらった方はおられますか?」



私は呆然とその男性を見た。
確信を持っているのだ。
私じゃないと。
昨日と違う人間だと。
隅っこで待機していて見えなかったらしい私をまだ見つけてもないのに。
比べて見てもないのに。



「あ、はい。えっと昨日のウエイトレスですね?こちらです…。」



きっとすずちゃんも混乱しているだろう。
横にいるひなちゃんも。
だって初めて見たのだ。
私たちは三姉妹を的確に見分けている人を。
それも並ばずともパッと当てられるような人を。



「あ、こちらにいらっしゃたのですね。昨日ぶりです。お言葉に甘えてまた伺いました。」



嬉しそうな声で話しかけてくる男性。
横にいるひなちゃんは見てない。
完全に私の目を見て話している。



「あ、昨日はありがとうございます。今日も来ていただけて嬉しいです。」



混乱しながらも言葉を振り絞る。
それに嬉しそうに笑って応えている雰囲気が伝わる。



「今日は1人で来てしまいました。今日はあなたのおすすめをいただけますか?」



はい、と条件反射のように返事をした。
まだ頭は混乱している。







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