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「じゃあ、今日は疲れたからまた明日」
そう言ってなんとか回復したミランダさんを部屋から追い出すと盛大にため息をついた。
正直、今日は色々有り過ぎて心が疲弊している。
メイクを落として流すだけの入浴を済ませると泥沼に落ちるように眠った。
夢さえ見ない位に熟睡したのは何時振りか。
初めての枕でもこれ程まで寝れる自分に驚きもするが、多分肉体的にも精神的にも限界だったのだろう。
あがらう事なく睡魔に身を委ねてしまったのだ。
『ああ、この世に目覚ましがあったなら安心して寝れるのに』
そんな馬鹿な事を考えながらベッドへと沈んでいったのだった。
ーーーーーーー
翌朝、誰かが私の髪や頬を撫でる感触で目が覚めた。
「おはよう。エリス」
目を開けるとそこにはアレンデル殿下がにこやかに笑って声をかけてくれた。
朝故か、とてもラフな服装で私の寝ているベッドに腰を下ろしている。
まぁ、まだ15歳の男の子なのだから成人(18歳)女性の部屋に朝から居たとしても相手は子供なのだから多分問題はないだろう。
まぁ、王家なら16歳から一人前と言われるけど、ほら、まだアレンデル殿下は15歳だし。
頭の中で何度もアレンデル殿下は15歳だから大丈夫と自身に言い聞かせる。
この時にアレンデル殿下が昨夜16歳になっていた事に気付いていたら結果は違っていたのかもしれないが、その時の私は知らなかったのだから仕方がない。
左の手首に付けている時計を確認すると既に8時を回っていた。
「ヤバい。カナリア様との朝食が……」
ガバリと起き上がり焦ったように動き出す。
エドの服を取ると急いで洗面所へ向かい着替えを終わらせる。
変な話、エリスの装いよりエドの方が簡単なのだ。
最初こそはサラシを巻くのに時間がかかっていたが、今はブランデ特製のベストのお陰で最短10分でエドが完成する。
何が一番に時間がかかるかと言うと頭を三つ編みにしてカツラを被る工程だろう。
身支度を整えて部屋へ戻ると侍女達がせわしなく料理を運びこんでいた。
「あれ?もしかしてここで朝食を食べるの?」
てっきり何処かの食堂みたいな所で食べるのだと思っていた。
「まさか、愛しいエドの朝の姿を他の者に見せたくはないよ」
そう言ってアレンデル殿下は私に抱き着いて来た。
一瞬此方を見ていた侍女達はあからさまにテキパキと料理をテーブルに並べて行く。
何をそんなに慌てているのか?
顔まで赤らめて「失礼しました」と去って行く侍女達。
もしかして、アレンデル殿下が私に抱き着いていたからなのだろうか?
でも、今はエドになっているしアレンデル殿下も男の子。
確かに成人している男同士なら問題かもしれないけど、相手は15歳の子供。
つまり兄と慕う弟的ポジだろう。
「ほら、早くご飯を食べよう」
そう言ってアレンデル殿下は椅子に向かう。
勿論給仕の為に侍従と侍女が一人づつ残っており、素早くアレンデル殿下が椅子に近付くとその椅子を引く。
アレンデル殿下は慣れた様子で椅子に座ると私の方を見て「早く座って」と無邪気に声をかけて来る。
けど、
「すみません。カナリア様と朝食の約束をしてしまいまして……」
これはどう見ても二人分の食事。
つまり、私とアレンデル殿下の分しかないのだ。
「あぁ、エドは知らないんだね。王家主催の夜会は大体明け方までやるから午前中は殆ど寝ているよ。だから朝食とは普通に考えると昼食の時間になるんだ」
「そうなんですか」
確かに真夜中過ぎに第二部とか言って滅茶滅茶盛り上がっていた。
あれが一時間やそこらで終わるとは思えない。
つまり、明け方までとは確かに有り得るし、主催者側は大抵最後まで参加しているのがセオリーだ。
流石は王族、普通の貴族の夜会よりハードワークだ。
それで言うと、アレンデル殿下は未成年なのにあれほど遅くまで起きていて今現在ここにいる事になるのでは?
「アレンデル殿下、昨夜は遅かったのですから少しは休んで下さい」
勿論純粋に成長期の少年の身体を気遣っての言葉だった。
「大丈夫。私は若いから多少の無理はききますよ」
「しかし、あれほど激しくダンスされたのですから……」
そう言ってアレンデル殿下の手を取った。
すると、アレンデル殿下は侍従と侍女の方を向くと紳士的なスマイルを張り付ける。
「申し訳ないけど二人でゆっくりと食事をしたいから呼ぶまで下がっててくれる?」
紳士的なアレンデル殿下の言葉に侍従と侍女は二人して挙動不審な態度を示したのだった。
そう言ってなんとか回復したミランダさんを部屋から追い出すと盛大にため息をついた。
正直、今日は色々有り過ぎて心が疲弊している。
メイクを落として流すだけの入浴を済ませると泥沼に落ちるように眠った。
夢さえ見ない位に熟睡したのは何時振りか。
初めての枕でもこれ程まで寝れる自分に驚きもするが、多分肉体的にも精神的にも限界だったのだろう。
あがらう事なく睡魔に身を委ねてしまったのだ。
『ああ、この世に目覚ましがあったなら安心して寝れるのに』
そんな馬鹿な事を考えながらベッドへと沈んでいったのだった。
ーーーーーーー
翌朝、誰かが私の髪や頬を撫でる感触で目が覚めた。
「おはよう。エリス」
目を開けるとそこにはアレンデル殿下がにこやかに笑って声をかけてくれた。
朝故か、とてもラフな服装で私の寝ているベッドに腰を下ろしている。
まぁ、まだ15歳の男の子なのだから成人(18歳)女性の部屋に朝から居たとしても相手は子供なのだから多分問題はないだろう。
まぁ、王家なら16歳から一人前と言われるけど、ほら、まだアレンデル殿下は15歳だし。
頭の中で何度もアレンデル殿下は15歳だから大丈夫と自身に言い聞かせる。
この時にアレンデル殿下が昨夜16歳になっていた事に気付いていたら結果は違っていたのかもしれないが、その時の私は知らなかったのだから仕方がない。
左の手首に付けている時計を確認すると既に8時を回っていた。
「ヤバい。カナリア様との朝食が……」
ガバリと起き上がり焦ったように動き出す。
エドの服を取ると急いで洗面所へ向かい着替えを終わらせる。
変な話、エリスの装いよりエドの方が簡単なのだ。
最初こそはサラシを巻くのに時間がかかっていたが、今はブランデ特製のベストのお陰で最短10分でエドが完成する。
何が一番に時間がかかるかと言うと頭を三つ編みにしてカツラを被る工程だろう。
身支度を整えて部屋へ戻ると侍女達がせわしなく料理を運びこんでいた。
「あれ?もしかしてここで朝食を食べるの?」
てっきり何処かの食堂みたいな所で食べるのだと思っていた。
「まさか、愛しいエドの朝の姿を他の者に見せたくはないよ」
そう言ってアレンデル殿下は私に抱き着いて来た。
一瞬此方を見ていた侍女達はあからさまにテキパキと料理をテーブルに並べて行く。
何をそんなに慌てているのか?
顔まで赤らめて「失礼しました」と去って行く侍女達。
もしかして、アレンデル殿下が私に抱き着いていたからなのだろうか?
でも、今はエドになっているしアレンデル殿下も男の子。
確かに成人している男同士なら問題かもしれないけど、相手は15歳の子供。
つまり兄と慕う弟的ポジだろう。
「ほら、早くご飯を食べよう」
そう言ってアレンデル殿下は椅子に向かう。
勿論給仕の為に侍従と侍女が一人づつ残っており、素早くアレンデル殿下が椅子に近付くとその椅子を引く。
アレンデル殿下は慣れた様子で椅子に座ると私の方を見て「早く座って」と無邪気に声をかけて来る。
けど、
「すみません。カナリア様と朝食の約束をしてしまいまして……」
これはどう見ても二人分の食事。
つまり、私とアレンデル殿下の分しかないのだ。
「あぁ、エドは知らないんだね。王家主催の夜会は大体明け方までやるから午前中は殆ど寝ているよ。だから朝食とは普通に考えると昼食の時間になるんだ」
「そうなんですか」
確かに真夜中過ぎに第二部とか言って滅茶滅茶盛り上がっていた。
あれが一時間やそこらで終わるとは思えない。
つまり、明け方までとは確かに有り得るし、主催者側は大抵最後まで参加しているのがセオリーだ。
流石は王族、普通の貴族の夜会よりハードワークだ。
それで言うと、アレンデル殿下は未成年なのにあれほど遅くまで起きていて今現在ここにいる事になるのでは?
「アレンデル殿下、昨夜は遅かったのですから少しは休んで下さい」
勿論純粋に成長期の少年の身体を気遣っての言葉だった。
「大丈夫。私は若いから多少の無理はききますよ」
「しかし、あれほど激しくダンスされたのですから……」
そう言ってアレンデル殿下の手を取った。
すると、アレンデル殿下は侍従と侍女の方を向くと紳士的なスマイルを張り付ける。
「申し訳ないけど二人でゆっくりと食事をしたいから呼ぶまで下がっててくれる?」
紳士的なアレンデル殿下の言葉に侍従と侍女は二人して挙動不審な態度を示したのだった。
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