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呆然
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「…エルヴェ。そういえば、結婚おめでとう」
「…は?」
「そこにいる者、ミリー男爵令嬢と結婚するのだろう。婚約者として同伴しているのだからな。書類はすでに受理の手続きをしておいた。アレオン公爵のサインもある。結婚おめでとう。
…私はアレオン公爵家とは末長く仲良くしたいと思っている。お前はいらない。男爵家で頑張ってくれ。…あぁ、そういえば、ミリー嬢は次女じゃなかったか?おや、エルヴェ、君は男爵にもなれないのか。可哀想に」
感情たっぷりに楽しげに、カトリナ様は笑う。
瞳の奥には怒りが燃えているのが私にはわかる。
「…シルヴェーヌと、私を、あれだけ軽んじておいて、まともに生活を続ける事ができると思っているのが大間違いだ。私がこの国を治める限りお前を、お前達を幸福になどしてやらない。…下がってもいいぞ?」
喉の奥で唸るように言うカトリナ様の言葉を聞きながらエルヴェ様は徐々に俯いていった。傍のミリーさんがそろそろと離れようとしてエルヴェ様にぎりぎりと腕を掴まれ顔を顰めている。
「…ね、ねぇ、エルヴェ、痛いよ、離して?ちょっとエルヴェのお父さん達に話聞きに行こうよ、絶対おかしいもん、きっとシルヴェーヌさんが何か…」
「…シルヴェーヌ」
エルヴェ様が突然顔を上げた。カタリカタリと音が鳴りそうな首の動きで私の方を見つめた。
「そ、そうだ…お前が……」
そう呟くと再びエルヴェ様は俯き口の中でぶつぶつと何かを言っている。
何を言っているのか気になってほんの少しだけ身を乗り出した瞬間。
「お前だ!全部お前が悪いんだ!」
顔を上げて絶叫したエルヴェ様がミリーさんを突き飛ばし、地面を蹴って私の方に飛びかかってきた。
一瞬のフラッシュバック。冷静でいようとしてもどうしても怖い。それでも。
「…ちょっとだけ、僕にもかっこつけさせてよ」
私の耳元で、優しいベルトランの声がした。
「…は?」
「そこにいる者、ミリー男爵令嬢と結婚するのだろう。婚約者として同伴しているのだからな。書類はすでに受理の手続きをしておいた。アレオン公爵のサインもある。結婚おめでとう。
…私はアレオン公爵家とは末長く仲良くしたいと思っている。お前はいらない。男爵家で頑張ってくれ。…あぁ、そういえば、ミリー嬢は次女じゃなかったか?おや、エルヴェ、君は男爵にもなれないのか。可哀想に」
感情たっぷりに楽しげに、カトリナ様は笑う。
瞳の奥には怒りが燃えているのが私にはわかる。
「…シルヴェーヌと、私を、あれだけ軽んじておいて、まともに生活を続ける事ができると思っているのが大間違いだ。私がこの国を治める限りお前を、お前達を幸福になどしてやらない。…下がってもいいぞ?」
喉の奥で唸るように言うカトリナ様の言葉を聞きながらエルヴェ様は徐々に俯いていった。傍のミリーさんがそろそろと離れようとしてエルヴェ様にぎりぎりと腕を掴まれ顔を顰めている。
「…ね、ねぇ、エルヴェ、痛いよ、離して?ちょっとエルヴェのお父さん達に話聞きに行こうよ、絶対おかしいもん、きっとシルヴェーヌさんが何か…」
「…シルヴェーヌ」
エルヴェ様が突然顔を上げた。カタリカタリと音が鳴りそうな首の動きで私の方を見つめた。
「そ、そうだ…お前が……」
そう呟くと再びエルヴェ様は俯き口の中でぶつぶつと何かを言っている。
何を言っているのか気になってほんの少しだけ身を乗り出した瞬間。
「お前だ!全部お前が悪いんだ!」
顔を上げて絶叫したエルヴェ様がミリーさんを突き飛ばし、地面を蹴って私の方に飛びかかってきた。
一瞬のフラッシュバック。冷静でいようとしてもどうしても怖い。それでも。
「…ちょっとだけ、僕にもかっこつけさせてよ」
私の耳元で、優しいベルトランの声がした。
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