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サンティナ・ヴィオーラ

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家に帰るための馬車の中、サンティナとコリンは隣り合い無言でいた。彼らの婚約は継続している。卒業後にはコリンがヴィオーラ伯爵家に婿入りする予定だ。
「何か言うことはある?」
ぽつりとサンティナが問いかけた。
卒業パーティの夜からその後、サンティナはコリンに離れていた間のことを聞かなかった。コリンはそれに対して心苦しくもどこか安堵した思いでいた。
それでも、今言わなくてはコリンがサンティナと一緒にいることはできないだろう。

「君と対等になりたかったんだ」
「対等よ。婚約者でしょう?」
「周囲はそうは見ないよ。僕は政略結婚で金のために君に嫁ぐ格下の貴族だ。堂々と君に愛を伝えられる立場になりたかった。フクシア令嬢に近づくことで結構多めのお金をもらった。功績を立てれば爵位がもらえたかもしれなかった。あとは絶対に君と婚約を続けられる確証。僕は。君と対等に立てるだけの。誰のことも気にしないで同じ立場でティナと一緒にいたかった」
ほんとうはそれだけだったんだ。とコリンはうなだれた。君に好きだと言いたかったんだと小さく呟いた。
サンティナはコリンを見つめる。最初コリンにそっけなくされたとき本当に悲しかった。それでも。
「あなたが私のことを本当に嫌いになったならもっとひどいことが言えると思ったの」
だから私はあなたのことを信じたの。サンティナはそっとコリンの手を取り握りしめる。
「馬鹿ねコリン。私はね、政略結婚でも、あなたが私のことを愛してくれていても。本当はどっちでもいいの。あなたがいいの」
嘘つきで頼りないコリンのことが大好きよ。
微笑むサンティナにコリンはさらにうなだれる。きっとこの先ずっと彼女にはかなわない。
「君のことが本当に好きなんだ。サンティナ」
「ありがとう。私もあなたのこと大好きよ!」
小さな笑い声が重なって馬車の中が幸せで満ちていく。
がたごとと走る馬車はゆっくりと2人の将来の家へと向かっていった。

おしまい

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