上 下
9 / 19

エメライン・ブラウン

しおりを挟む
「俺が平民に・・・だと?追いつめられたからと言って戯言を」
にやにやと笑うベルンハルトにエメラインは一枚の紙を差し出す。
それはベルンハルトとエメラインの婚約契約書だった。
「これがなんだというんだ」
「よくお読みください。隅々まで。それが嫌だというのなら項目の7番目を見てください」
ベルンハルトは言われたとおりに7番目の項目に目をやる。そこにはこう書いてあった。
『ベルンハルト・スリーズからエメライン・ブラウンに婚約を解消、もしくは破棄を申請した場合、ベルンハルトはエメラインに慰謝料を支払い、廃嫡され平民になるものとする』
ベルンハルトが文章を読み顔をあげるとエメラインがすらすらと読み上げる。周囲にどういうことなのか伝えるために少々大きな声で。
「そういうことです。ベルンハルト様。あなたは私に婚約破棄を宣言しましたね。この契約書の通り、あなたには平民になってもらいます。」
エメラインは顔を上気させ、喜びが抑えられないように微笑みを浮かべていた。
「こんなもの認められるか!俺はこんな文知らないぞ!お前が捏造したんだろう!」
ベルンハルトがエメラインに詰め寄る。契約書を破らんばかりの勢いだった。
「写しですから問題はないですが、紙を破らないように気を付けてください。一応ブラウン伯爵家の所有物ということになりますから」
眉を顰めるエメラインにベルンハルトは歯ぎしりする。ローザがほんの少し後ろに下がったことには気づかなかった。
「この項目は私たちが学園に入学した3年前には記載されていました。あなたは3度この書類にサインしたんですよ」
ベルンハルトはつい先日サインした契約書を思い出す。エメラインと顔を合わせていたくなくて碌に読みもせずにサインをした気がする。だからと言ってこんな横暴が認められるわけがない。
「こんな書類うちが認めるわけがないだろう!俺を廃嫡するための項目など!」
「いいえ、毎年スリーズ侯爵様には読んでもらって署名をいただいていますし、父にも署名をもらっています。両家の当主のサインが入ったものですから。認められないということはないでしょう。
それに。
「今年はそれに加えてスリーズ侯爵家の次期当主様。あなたのお兄様にも署名をいただきました。『どのような事態が起こったとしてもスリーズ侯爵家次期当主の名において
婚約契約書は有効なものとする』という書類に」
父が、兄が自分を廃嫡する種類に署名をしていた。しかも兄はまるで念を押すような書類に。やはり兄とエメラインは結託していたのだ。ベルンハルトをつぶすために共謀していたのだ。
もしかしたらエメラインは自分から兄に乗り換えるつもりなのかもしれない。
何も言わないベルンハルトにエメラインは満面の笑みを向けた。
「私はあなたがずっと大嫌いでした。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もう1話、6日の05:00にUPします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王太子から婚約破棄……さぁ始まりました! 制限時間は1時間 皆様……今までの恨みを晴らす時です!

Ryo-k
恋愛
王太子が婚約破棄したので、1時間限定でボコボコにできるわ♪ ……今までの鬱憤、晴らして差し上げましょう!!

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

もう無理だ…婚約を解消して欲しい

山葵
恋愛
「アリアナ、すまない。私にはもう無理だ…。婚約を解消して欲しい」 突然のランセル様の呼び出しに、急いで訪ねてみれば、謝りの言葉からの婚約解消!?

婚約破棄を突き付けられた方の事情 わかってます?

酒田愛子(元・坂田藍子)
恋愛
学園の卒業パーティーで婚約破棄を高らかに発表する公爵子息。 された側の事情わかってますか?

【完結】今更そんな事を言われましても…

山葵
恋愛
「お願いだよ。婚約解消は無かった事にしてくれ!」 そんな事を言われましても、もう手続きは終わっていますし、私は貴方に未練など有りません。 寧ろ清々しておりますので、婚約解消の撤回は認められませんわ。

婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。

十条沙良
恋愛
いくら謝っても無理です。

そんな事も分からないから婚約破棄になるんです。仕方無いですよね?

ノ木瀬 優
恋愛
事あるごとに人前で私を追及するリチャード殿下。 「私は何もしておりません! 信じてください!」 婚約者を信じられなかった者の末路は……

処理中です...