上 下
32 / 178
第1章 ゼンパンの素質とデイリーガチャスキル

第32話 森で出会ったのは・・・

しおりを挟む
神様からマジックバックと『素質ゼンパンの全て~これ1冊でまるわかり~』の図鑑をもらったラッキーは、魔物討伐の依頼を受けて森に来ていた。

気配察知を使って魔物を探そうとしたとき、森の奧から悲鳴が聞こえた。

「悲鳴!?」

ラッキーは悲鳴の聞こえた方へ駆け出した。悲鳴は森の奧から聞こえてきた。

ラッキーは森の魔物を気にする事も忘れて、全速力で走っていく。

するとそこには・・・

全長2mを超えるオークと、オークの前で座り込んでいる一人の女性の姿が目に入った。

「オークに襲われてる⁉助けなきゃ。」

ラッキーは剣を握りオークに向かって行った。

「お前の相手は俺だ!!!」

ラッキーは大声を出してオークの注意を引く。すると、オークは女性からラッキーの方に目を向けた。

「よし。意識がこっちに向いたぞ。」

ラッキーはアイン達と何度かオークを討伐しており、オークの皮膚が異常に固いのは知っている。そして、アイン達とするオークの討伐は数を重ねる事に洗練されていっていた。

なので、ラッキーはオークのどこを攻めればよいのかをなんとなく掴んでいた。ラッキーはオークの意識を自分に向けると剣を握りオークの横を通りすぎると同時に太ももの部分を切り付ける。

太ももを切り付けられたオークは一瞬体制が崩れるが、そこまでのダメージがなかったのかすぐに体制を整える。そして、剣を振ってきたラッキーの方を向く。

「よし。作戦通りこっちを向いたな。あのオークは棍棒も持ってないし、大きさもいままで会ったオークと比べると大きくない。俺一人でもやれるかもしれない。」

オークは2mを超える身長に200キロを超える大きな魔物だ。そして特徴は強い力にある。個体として棍棒を持っていたりするモノもいるが、ラッキーの目の前にいるオークは棍棒を持っていなかった。

「そこの人!!オークは俺が倒すから今の内に逃げろ!」

ラッキーはオークの後ろで座ってる女性に逃げるように声を掛けた。

「えっ・・・」

女性は戸惑いながらも立ち上がった。

(よし。これでオークに集中できる。オークの攻撃さえ受けなければどうにかなるはず。スピードでは俺の方が上だ。何度も何度も切り付けてやる。)

ラッキーはオークを切り付けては距離を取り、切り付けては距離を取り、慎重に慎重にオークを攻撃していった。

だが、オークの皮膚は固い。ラッキーの攻撃はオークにダメージを与えているように見えた。ラッキーが切りつけた、オークの腕や足からは血が流れていた。しかし、オークの動きは全く衰えなかった。

(くそっ!!全然倒れないぞ。どうする?このままじゃダメか・・・。でも続けていくしか方法が・・・。前みたいに心臓狙って突きを放つべきか・・・。いやそれで死ななかったら危険だ。どうする。どうする。)

剣で切り付けて行けば、オークも徐々に弱っていき、倒せるだろうと思っていたラッキーは思うようにオークが弱っていかないので焦っていた。

(力を抑えて斬りつけるのはやめて全力で振って行かないと無理だな。剣がダメになるかもしれないけど、後の事を考えてたらこっちがやられる。やるしかない。)

ラッキーが全力で剣を振るおうと、剣を握った時、オークの背中に何かが当たった。

それは・・・

「援護するわ。私が魔法で攻撃するからあなたはオークを倒して!」

先ほど助けた女性だった。その女性がオークの背後から魔法を使ったのだ。

ラッキーはオークの意識が女性に向いた隙に、オークに向かって行き、無防備になった背中に全力で剣を振り下ろした。

剣術の講習で教わった基本の型の袈裟斬りだ。ラッキーは毎日毎日剣術の訓練を欠かさなかった。袈裟斬りは一番振った基本の型だ。

ラッキーの剣はオークの肩から胸にかけて、オークを斬りつけた。

「やった!オークの皮膚を斬りつけれたぞ。」

ラッキーは苦しむオークに再度接近し、心臓部分に当たりを付けて突きを放つ。

先ほどまで苦戦していたのがウソのように、ラッキーの放った突きはオークの心臓を捉えてオークを倒した。

『Eランクの魔物一体討伐を確認しました。モンスターガチャスキルの使用まであと9体です。』

「よかった~。倒せたよ。」

アナウンスが流れた事でオークが死んだ事を確認したラッキーは構えを解いて剣をしまう。そして、魔法で援護してくれた女性に声を掛けた。

「大丈夫ですか?魔法での援護ありがとうございます。あれのお陰で無事にオークを倒す事が出来ました。」

「すごいわね。一人でオークを倒すなんて・・・。いえ、それよりも私のほうこそ助けてくれてありがとう。」

「いえ。森で探索してたら悲鳴が聞こえてきたので。でも無事でよかった。」

「私の名前はシルフィードよ。あなたに命を救われたわ。一人で森に来てみたけどまさかオークに会うとは思わなかったわ。それに、オークといえど私の魔法があれば倒せると思ってたから魔法が全然効かなくてどうしようもなかったのよ。」

「俺はラッキー。冒険者をしてるよ。それにしても運がよかったね。俺が駆けつけなかった危なかったよ。」

「本当にそうね。あなたに御礼がしたいわ。私の家に来てくれないかしら?」

「別にかまわないよ。困った時はお互い様だよ。」

「そういう訳には行かないわ。受けた恩はちゃんと返さないと後で何言われるかわからないわ。」

(なんか話し方とか服装、受けた恩はちゃんと返さないとって言う所を見ると、もしかしてこの人って貴族かな・・・。なんかそんな雰囲気があるぞ。)

「そこまで気にしなくていいんだけど・・・。シルフィードが援護してくれたからオークを倒せた訳だし。」

その後、シルフィードが引かなかったので、ラッキーはオークを持ち帰れる分だけマジックバックに詰めて、シルフィードとともにリスボンの街へと戻るのだった。

マジックバックに詰めても重さが変わらない事に、いつものラッキーなら声を大にして喜ぶ所だが、一緒に街に向かうシルフィードの事が気になりそれどころではなかった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

婚約破棄? ではここで本領発揮させていただきます!

昼から山猫
ファンタジー
王子との婚約を当然のように受け入れ、幼い頃から厳格な礼法や淑女教育を叩き込まれてきた公爵令嬢セリーナ。しかし、王子が他の令嬢に心を移し、「君とは合わない」と言い放ったその瞬間、すべてが崩れ去った。嘆き悲しむ間もなく、セリーナの周りでは「大人しすぎ」「派手さがない」と陰口が飛び交い、一夜にして王都での居場所を失ってしまう。 ところが、塞ぎ込んだセリーナはふと思い出す。長年の教育で身につけた「管理能力」や「記録魔法」が、周りには地味に見えても、実はとてつもない汎用性を秘めているのでは――。落胆している場合じゃない。彼女は深呼吸をして、こっそりと王宮の図書館にこもり始める。学問の記録や政治資料を整理し、さらに独自に新たな魔法式を編み出す作業をスタートしたのだ。 この行動はやがて、とんでもない成果を生む。王宮の混乱した政治体制や不正を資料から暴き、魔物対策や食糧不足対策までも「地味スキル」で立て直せると証明する。誰もが見向きもしなかった“婚約破棄令嬢”が、実は国の根幹を救う可能性を持つ人材だと知られたとき、王子は愕然として「戻ってきてほしい」と懇願するが、セリーナは果たして……。 ------------------------------------

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...