上 下
277 / 283
第十一章 新大陸ウエストディザイア

第364話 アルファロードへの帰り道

しおりを挟む
イプシロンハイでの依頼を終えて、クリフとララは馬車に乗ってアルファロードへと帰っていた。イプシロンハイに向かう時は他の冒険者との相席だったが、アルファロードへと向かう馬車にはクリフとララ以外に乗っている人はいなかった。

これは都合が良いと、クリフは勇者の事をララに尋ねた。

「なあ、勇者について教えてくれないか?」

「勇者君ですか?いいですよ。そう言えばクリフの所にも勇者がいたんですか?」

「ああ。ただ・・・なんというかソラマメ君とは全然感じが違うがな。」

「ふふ。勇者君はぽっちゃりですからね。昔話に出てくる勇者様とは全然違いよ。」

「昔話っていうのはどんな話なんだ?まあ俺の所じゃ、勇者が魔王を倒してお姫様と結婚する。みたいな話だったが。」

「アタシが知ってる話も同じような話です。」

「なら、どこかに魔王がいるのか?」

「いえ、そんな話は聞いた事ないですね。」

「そうか・・・。」

(魔王がいるなら、俺達の大陸を狙っているっていうのも信ぴょう性があったんだが。)

「勇者君の話でしたね。アタシが以前パーティを組んでてクリフと同じ依頼を受けてイプシロンハイに来た事は話したよね?そこで勇者君と出会ったんだ。と言ってもその時は勇者君がギルドで他の冒険者にバカにされてて、僕が怒って助けただけなんだけどね。」

(他の勇者にバカにされてた?あの体形で冒険者だからか?まあありえるよな。まさかギルドテンプレが起こっていたとは。)

「実際の勇者君は強いから、アタシが助けなくてもなんとでもなったんだろうけど、その時のアタシは、勇者君の事を知らずに助けたからね。それで勇者君に気に入られたって感じかな。」

「勇者ってやっぱり強いのか?」

「あの見た目じゃ想像つかないよね。でも勇者君あれでもSランクなんだよ。」

「まじで!?」

「まじで。一度アタシ達のパーティに入って試練の塔について来た事があったけど、その時は勇者君一人で全ての魔物を倒してたよ。アタシ達なんていてもいなくても一緒じゃんって思ったもん。」

「それなのにあの体形なのか?」

「不思議だよね~。昔はもっと痩せててらしいけどね。勇者君も言ってたように教会は勇者君を何かあった時の為に使いたいみたいで、なかなか自由に行動させてもらえないみたいだよ。勇者君いつもその事愚痴ってたから。」

(勇者を教会が管理するのは良く聞く話だけど、あれだけ堕落させたらいざという時だって役に立つか不安じゃないのか?それとも堕落させるのが目的とか?そう考えると辻褄は会うが・・・。なんか自分の都合の良いように考えすぎてる気もするな。)

「教会か・・・。なあララ。もしかして教会は勇者に活躍してほしくないんじゃないのか?だから、試練の塔にも行かせないし、強くならないようにしてるとか?」

「クリフの考えすぎじゃない?と言いたいところだけど、クリフの話を聞いた後じゃその可能性もあるかもしれないね。勇者君が試練の塔で本気出したら、モンスターウエーブなんて怒らない可能性もあるし。」

(気づかれるかもしれなかったから鑑定しなかったけど、あの時鑑定して能力を見ておくべきだったか。ララと勇者の話を傍で聞いていただけだったから、なんとも言えないけど、勇者は敵対しない感じはする。逆に言えば味方になりそうな気もする。ララに惚れてるし。うまく使えないものか。いやでも俺が言ったら逆効果か。ララと話しながらお前誰だ?ララとどんな関係だ?見たいな目を向けてきてたからな~。まあララは気づいてないだろうけど。)

「だよな~。ララはどう思う?勇者君は俺達の味方になってくれそうだと思うか?」

「味方にはなってくれるとは思うよ。だけど、勇者君やさしいから・・・。教会の敵にもならないんじゃないかな。あからさまに教会が悪い事してるってわかれば別だけど。」

「なるほど。そう言えば、勇者がいるって事は聖女なんかもいたりするのか?」

「聖女様もいるよ。」

「本当に?なら聖女もイプシロンハイの教会にいたのか?」

「いたよ。教会にお祈りに行った時に、やさしそうなおばあちゃんがいたの覚えてる?」

「ああ。俺達が祈ってる時に一番前にいた人だろ?俺達が祈りを終えてもずっと一人で祈ってたし。」

「そう。その人が聖女様だよ。」

「えっ!?そうなの?」

「うん。もしかして聖女様ってキレイで若い子を想像してた?残念でした。てかクリフって奧さんいるって言ってたよね。他の女性を気にしたりしてたら刺されるよ。」

(聖女って、普通に若い女性をイメージしてた。ユーナみたいな・・・。まあでもたしかにそうか。聖女だって年を取るもんな。俺だって英雄って呼ばれてるけど、50年後には、英雄って言ってもジジイじゃんとか言われる可能性あるし。)

「はは。たしかにもっと若い女性を想像はしてたけど、そんな意味じゃないよ。勇者と言えば聖女がいて、パーティ組んで魔王を倒すイメージだったからさ。後は賢者とか剣聖なんかもいれば勇者パーティって感じじゃん。」

「剣聖様も賢者様もいるよ。どっちもどこにいるかまでは知らないけどね。」

「やっぱりいるんだ。」

(ますます俺のいた大陸と同じ感じだな。違いはダンジョンがあるか、試練の塔があるかの違いぐらいか。種族だって同じような感じだし。まあ勇者に関しては徐々に仲良くなっていくのがいいか。今は魔王がいないみたいだけど、勇者いるところに魔王あり。みたいな所はあるもんな。魔王という名の悪魔だった。っていうオチもありえるし。頭の隅に置いておいて、まずはアルファロードの悪魔退治に集中するか。)

その後も、勇者君ネタで色々話したクリフ達は無事にアルファロードへと帰還したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女

かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!? もふもふに妖精に…神まで!? しかも、愛し子‼︎ これは異世界に突然やってきた幼女の話 ゆっくりやってきますー

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。