上 下
219 / 283
第十章 家族の時間

第306話 セリーヌとの時間 5

しおりを挟む
王都に入ったクリフ達は、まずは新しい冒険者証を発行する為にギルドに向かった。

(そういや~、俺が冒険者ギルドに登録したのもここの王都ギルドだったな。エリーさん元気にしてるかな?)

高等学校に入る時に王都に来たクリフは、その時に王都で初めて冒険者登録をした。その時の受付嬢がエルフのエリーである。クリフは異世界で初めてエルフを見てとても感動していた。

ギルドに入ると、さすが王都のギルドとあって、中は活気に包まれていた。

「なんか新鮮ですね。いつもはすぐに個室に行って話をするし、周りからジロジロみられてたから、あまり周りを見ないようにしてましたが、年齢も種族も性別も、見事にバラバラですね。」

ギルドの中の様子を伺うと、

高そうな装備に身を固めた冒険者やまだまだ駆け出しだとわかる装備の冒険者
酒場で女性をナンパする冒険者や、字の読めない冒険者の代わりに代読する子供
種族も人族、獣人族、エルフ族に魔人族と様々な種族の人で賑わっていた。

「とりあえず登録しに行こうか。」

(受付にエリーさんがいる。相変わらずキレイだな。それに今の俺達って駆け出しもいいとこだし、テンプレイベントが怖い。さすがに2度起きるのは勘弁だぞ。)

クリフとセリーヌは、受付に並び冒険者登録を行った。初めて冒険者登録をしたときと同じように、対応はエルフのエリーにしてもらった。

「ではこれに必要事項の記入をお願いします。」

対応したエリーは、二人を驚きと戸惑いの目で見てきたが、普通に対応してくれた。クリフとセリーヌはそれぞれ必要事項を用紙に記入し、エリーに渡す。

「クリフ・・・セリーヌ・・・やっぱり。すいません。お二人とも2階に来ていただいてよろしいでしょうか?」

(ありゃ。もしかして俺達の事バレたかな・・・名前を変えずにそのまま記入しちゃったからな。それにしてもエリーさん。俺達の変装を見破ったのか?それはそれですごいな。)

困惑しながらも、クリフとセリーヌはエリーに言われ、ギルドの2階へと向かう。向かう先はギルドマスター室だ。

(ギルドマスター室って事はエリーさんはもう俺達の事わかってる感じだな。そういやギルドマスターのヨハンさんに会うのも久しぶりだな。)

ギルドマスター室に入ると、ギルドマスターのヨハンが忙しそうに仕事をしていた。

「どうしたエリー?その二人は?」

「お二人ともここなら周囲にはバレませんので変装を解いても大丈夫ですよ。」

エリーに言われ、クリフとセリーヌは大人しく変装を元に戻した。

「やっぱり!クリフ様とセリーヌ様でしたね。名前を見て確信しましたよ。これはどういう事ですか?」

「久しぶりです。ヨハンさん、エリーさん。実は・・・」

クリフとセリーヌは、王都に来た経緯を説明した。

「そういう事ですか・・・それなら別の冒険者証を持っていた方がいいかもしれませんね。マスター?クリフ様とセリーヌ様に新しい冒険者証を作っても構いませんね。」

「ああ、エリーがそう判断したなら俺はかまわないぞ。それにしてもクリフ様もセリーヌ様も久しぶりですね。エターレインの事は噂で聞いてますよ。」

「そうなんですよ。でもまだまだこれからです。今は次の段階に向けての視察やら準備期間って感じです。」

「なるほど、その為に変装して王都にきたんだな。まあクリフ様とセリーヌ様なら問題ないとは思うが悪用はしないでくれよ。」

「もちろんです。」

クリフとセリーヌは軽く雑談と、王都の状況を聞いて、ギルドを後にした。

「結局ギルドでもバレちゃいましたね。」

「しょうがないよ。名前も変えてなかったしね。」

「それじゃあ王都を見て回りますか?どこか行きたいと事はありますか?」

「そうだね。晩までに時間はあるから軽く何か食べたいな。それと魔導書を見てみたいかな。ここの古本屋でさあ初めて魔法書とスキル書を買ったんだ。冒険者の報酬を握りしめて、たしか1冊金貨20枚だったかな・・・2冊しか買えなかったけど、そこで召喚の魔法書とテイムのスキル書を買ったんだ。それでスイムとグランが仲間になったからここの古本屋は縁があるんだよね。」

「そうなんですね。なら軽く屋台で何か買って古本屋に行ってみましょうか?」

王都の中を歩いても今のクリフとセリーヌに声を掛ける者はいない。久々にのんびりと王都を楽しんだ二人は、変装を元に戻して王城へと向かった。

王城に入るとすでに王様に話は通っていたので、謁見の間で軽く挨拶をした後に王族達と食事になった。

「今日はライトちゃんは一緒じゃないのね。」

「はい。久々にセリーヌと二人で旅行をと思いまして。」

「そうそうギルドマスターからも二人が変装して冒険者登録に来たって聞きましたよ。ふふふ。変装しないと街も自由に歩けないものね。でもまあ大変だったみたいね。」

「もうその事を知ってるんですか?お母さまは情報を得るのが早いですね。又今度ライトを連れてきます。」

「ええ。期待してるわね。」

王族達と楽しく話ながら食事をしたクリフとセリーヌは、宿屋ではなく王城で泊まる事になった。

王城に泊まった翌日は、王都にいる高等学校時代の友人達に会いに行ったり、カフェでママ友会に交じったり、初心に帰って薬草採取の依頼を二人で受けたりと、他の場所に行く事なく、学生時代に過ごした王都を満喫したのだった。

予定通り1週間が過ぎて、クリフ達はエターレインへと戻った。エターレインへと戻ると、セリーヌは、嫁達と嫁会を開きどういった事をしたか、何があったかと報告していた。

クリフが参加していないので、詳細はわからないが、その話は夜遅くまで開催されていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

わたくしへの文句くらい、ご自分で仰ったら?

碧水 遥
恋愛
「アンディさまを縛りつけるのはやめてください!」  いえ、あちらから頼み込まれた婚約ですけど。  文句くらい、ご自分で仰ればいいのに。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

出会ってはいけなかった恋

しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。 毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。 お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。 だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。 彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。 幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

わたくしは悪役だった

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が、二度目は間違えないように生きるお話。 ざまぁなし、大団円…のはず。 元サヤですのでご注意ください。 ご都合主義のハッピーエンドのSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。