212 / 283
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第299話 魔国の魔王ユイ
しおりを挟む
サウス軍を全滅させて、ノース軍との戦いも終盤を迎えた頃、ノース軍中将のゼットは、ノース城ではなく、セントラル城に潜入していた。
「マイカの言った通りだったな。ノース軍とサウス軍と戦う為にほとんどの戦力が出払ってると。魔王は戦えないから城にいるはずって言っていたが、その通りだったな。」
セントラル城に潜入したゼットの役割は、魔王ユイの暗殺だ。いくら人族と協力すると誓い、人族と友好的に過ごしたセントラルも、元々はユイがそう言ったから従っているだけだ。魔王がいなくなれば、元々が好戦的な種族なので、人族との友好も続かないだろう。
更に、ゼットは魔王ユイを暗殺した上で、それを人族がやった事にしようとしていた。現状セントラルはクリフ達と何度も交流しているので、その内の一人が、魔王を殺したと言えば、信じるだろうとマイカに言われていた。
そうなれば、魔族と人族の全面戦争は免れないだろう。マイカの目的は、今後クリフ達のいる大陸に攻め込む前に戦争を起こさせて戦力を下げるのが狙いだった。それは、邪神の願いであり、マイカは邪神の使いとしてこの大陸の調査に来ていたのだ。
マイカの甘い誘いにのったゼットは何も知らずに自分が魔国の王となる為にセントラル城へと潜入していた。セントラル城の内部は、ノース城やサウス城と全く一緒なので、迷わずに奥の間まで進んで行く。
そして、奥の間に入ると玉座に座る魔王ユイを見つけたのだった。ユイの傍には数名の魔族しかいなかった。ノース中将のゼットに気付いたセントラルの魔族達は、侵入者を排除しようとするが、邪神の力を経たゼットにはとてもじゃないが叶わなかった。
「ゼット・・・どうしてここに?」
「ひっひっひ。ここにいる理由なんて一つしかないだろう。お前を殺しにきたんでよ魔王様。力がない魔王など存在する意味もない。俺が代わりに魔王としてこの国を率いてやる。強いモノこそ正義だ。魔国を治めた後は人族の国だ。お前達は友好を謳ってるようだが、そんなものはまやかしだ。俺が本来の魔国の在り方というのを教えてやるよ。」
「ユイ達はもうむやみに他者を傷つけない。奪わないと決めました。それに賛同できない者はこの国からも排除します。」
「理想を言っているが魔王様にそんな力はないだろ。今だって従者に頼りっきりじゃないか。といってもその従者ももういないみたいだがな。」
「くっ。」
ユイの脳裏に直前にクリフから言われた内容が思い浮かんだ。それは、この決戦前にクリフから託されたあるモノに関する事だった。
☆☆☆
昨日、ユイはクリフに呼び出され二人っきりで話をしていた。
「ユイ。今日は大事な話があるんだ。」
「明日の決戦の事ですか?」
「ああ。邪神が絡んでいる以上、イレギュラーが起こるとも限らないからね。これをユイには渡しておこうと思って。」
「これは!?」
「そう魔王の核だよ。今のユイなら渡してもかまわないと思ったから渡しておくよ。今の魔国はユイを中心にまとまりかけてる。そんな中でユイが死んでしまえば今までの努力は全て水の泡だ。もしもの時はこれを使って力を取り戻してくれ。もし暴走するようなら俺が全力でなんとかする。って言ってもあれからグランと一緒に色々調べたけど、そこまでひどくはならないと思う。きっとユイにとって良い方向になるはずさ。」
「クリフさん・・・ありがとうございます。ユイはクリフさんを信じます。」
☆☆☆
ユイは昨日の事を思い出し、魔王の核を取り出した。そしてその魔王の核をそのまま飲み込んだ。
(クリフさんはユイの事を信じてくれた。ユイはみんなを助けたい。みんなで笑い合って過ごしたい。戦争なんてもう嫌だ。私に力を。滅ぼす力じゃなくてみんなを守る力をください。)
魔王の核を飲み込んだユイをまばゆい光が包み込む。光が収まるとそこには・・・
いつもと変わらぬユイの姿があった。
「なんだこけおどしか。何かを飲んだかと思えば、何もかわってねぇじゃねぇか。」
「お前にはわからないだろうけどユイにはわかる。この力があれば・・・。ユイはこの力を魔国とクリフさん達の国との友好の為に使う。魔国は生まれ変わるんだ。ユイは、ユイは魔王としてその力を示す。」
ユイが魔法を使うとゼットの胸に穴が開いた。
「なっ!?」
「これがユイの、魔王の力だ。これ以上誰も殺させない。魔国はユイの大好きな国だ。誰にも渡さない。」
魔王の力を取り戻したユイの魔法によって、ゼットは一瞬にして死んでしまった。そして、丁度良いタイミングでセントラル城にクリフが現れた。
「ユイ・・・使ったんだね。」
「クリフさん。はい。ユイはこの力を奪う為じゃなくて、守る為に使います。」
「うん。ユイならきっとできるよ。俺も協力する。」
(魔王の核を渡して正解だったみたいだな。ユイなら使っても対立する事はないと思ったよ。それにしてもなぜゼットがセントラル城にいるんだ?あの怪しい女が関係しているのか?ならノース城を少し調べてみるか。)
ユイが魔王の力を取り戻した事で、ノースの中将は死に戦争はセントラルの圧倒的勝利で幕を閉じたのだった。
「マイカの言った通りだったな。ノース軍とサウス軍と戦う為にほとんどの戦力が出払ってると。魔王は戦えないから城にいるはずって言っていたが、その通りだったな。」
セントラル城に潜入したゼットの役割は、魔王ユイの暗殺だ。いくら人族と協力すると誓い、人族と友好的に過ごしたセントラルも、元々はユイがそう言ったから従っているだけだ。魔王がいなくなれば、元々が好戦的な種族なので、人族との友好も続かないだろう。
更に、ゼットは魔王ユイを暗殺した上で、それを人族がやった事にしようとしていた。現状セントラルはクリフ達と何度も交流しているので、その内の一人が、魔王を殺したと言えば、信じるだろうとマイカに言われていた。
そうなれば、魔族と人族の全面戦争は免れないだろう。マイカの目的は、今後クリフ達のいる大陸に攻め込む前に戦争を起こさせて戦力を下げるのが狙いだった。それは、邪神の願いであり、マイカは邪神の使いとしてこの大陸の調査に来ていたのだ。
マイカの甘い誘いにのったゼットは何も知らずに自分が魔国の王となる為にセントラル城へと潜入していた。セントラル城の内部は、ノース城やサウス城と全く一緒なので、迷わずに奥の間まで進んで行く。
そして、奥の間に入ると玉座に座る魔王ユイを見つけたのだった。ユイの傍には数名の魔族しかいなかった。ノース中将のゼットに気付いたセントラルの魔族達は、侵入者を排除しようとするが、邪神の力を経たゼットにはとてもじゃないが叶わなかった。
「ゼット・・・どうしてここに?」
「ひっひっひ。ここにいる理由なんて一つしかないだろう。お前を殺しにきたんでよ魔王様。力がない魔王など存在する意味もない。俺が代わりに魔王としてこの国を率いてやる。強いモノこそ正義だ。魔国を治めた後は人族の国だ。お前達は友好を謳ってるようだが、そんなものはまやかしだ。俺が本来の魔国の在り方というのを教えてやるよ。」
「ユイ達はもうむやみに他者を傷つけない。奪わないと決めました。それに賛同できない者はこの国からも排除します。」
「理想を言っているが魔王様にそんな力はないだろ。今だって従者に頼りっきりじゃないか。といってもその従者ももういないみたいだがな。」
「くっ。」
ユイの脳裏に直前にクリフから言われた内容が思い浮かんだ。それは、この決戦前にクリフから託されたあるモノに関する事だった。
☆☆☆
昨日、ユイはクリフに呼び出され二人っきりで話をしていた。
「ユイ。今日は大事な話があるんだ。」
「明日の決戦の事ですか?」
「ああ。邪神が絡んでいる以上、イレギュラーが起こるとも限らないからね。これをユイには渡しておこうと思って。」
「これは!?」
「そう魔王の核だよ。今のユイなら渡してもかまわないと思ったから渡しておくよ。今の魔国はユイを中心にまとまりかけてる。そんな中でユイが死んでしまえば今までの努力は全て水の泡だ。もしもの時はこれを使って力を取り戻してくれ。もし暴走するようなら俺が全力でなんとかする。って言ってもあれからグランと一緒に色々調べたけど、そこまでひどくはならないと思う。きっとユイにとって良い方向になるはずさ。」
「クリフさん・・・ありがとうございます。ユイはクリフさんを信じます。」
☆☆☆
ユイは昨日の事を思い出し、魔王の核を取り出した。そしてその魔王の核をそのまま飲み込んだ。
(クリフさんはユイの事を信じてくれた。ユイはみんなを助けたい。みんなで笑い合って過ごしたい。戦争なんてもう嫌だ。私に力を。滅ぼす力じゃなくてみんなを守る力をください。)
魔王の核を飲み込んだユイをまばゆい光が包み込む。光が収まるとそこには・・・
いつもと変わらぬユイの姿があった。
「なんだこけおどしか。何かを飲んだかと思えば、何もかわってねぇじゃねぇか。」
「お前にはわからないだろうけどユイにはわかる。この力があれば・・・。ユイはこの力を魔国とクリフさん達の国との友好の為に使う。魔国は生まれ変わるんだ。ユイは、ユイは魔王としてその力を示す。」
ユイが魔法を使うとゼットの胸に穴が開いた。
「なっ!?」
「これがユイの、魔王の力だ。これ以上誰も殺させない。魔国はユイの大好きな国だ。誰にも渡さない。」
魔王の力を取り戻したユイの魔法によって、ゼットは一瞬にして死んでしまった。そして、丁度良いタイミングでセントラル城にクリフが現れた。
「ユイ・・・使ったんだね。」
「クリフさん。はい。ユイはこの力を奪う為じゃなくて、守る為に使います。」
「うん。ユイならきっとできるよ。俺も協力する。」
(魔王の核を渡して正解だったみたいだな。ユイなら使っても対立する事はないと思ったよ。それにしてもなぜゼットがセントラル城にいるんだ?あの怪しい女が関係しているのか?ならノース城を少し調べてみるか。)
ユイが魔王の力を取り戻した事で、ノースの中将は死に戦争はセントラルの圧倒的勝利で幕を閉じたのだった。
55
お気に入りに追加
4,427
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
【5/22 書籍1巻発売中!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。