上 下
73 / 283
第六章 聖国へ ~ 聖女を助けよ ~

第160話 ユーティリア公爵領に到着!!

しおりを挟む
クリフ達は聖国に向けて、王国を出発した。聖国は王国の北に位置する。
目指すは聖都クリスティンだ。

王都サリマンから聖都クリスティンまではだいたい馬車で1カ月程かかる。途中ユーティリア領を経由して、聖国に入っていく流れになる。

ユーティリア領までは約1週間。その後、聖国に入り聖都までは3週間の馬車旅だ。

クリフ以外は女性ばかりの為、クリフが御者を務めている。馬車の中は対面で6名座れる広さがある。

「クリフ様すいません。御者をやらせてしまって・・・」
「かまわないよ。セリーヌ達はゆっくりしていてよ。僕なら周辺を警戒しながら進めるから魔物とか盗賊が来ても安心だしね。」

ユーティリア領につくまでの1週間は周囲を警戒しながら進んだが、見事に何もなかった。だが、それも当然の話だった。

王国ではクリフは勇者としてかなり有名になっている。更に今回の馬車は王家の馬車を使っているので周りから見ても豪華な使用になっている。

普通、豪華な仕様なら盗賊に目を付けられそうだが、クリフの存在が盗賊を寄せ付けなかった。

「何事もなくユーティリア領まで来れたね。」
「そりゃそうよ。王族の馬車でクリフが乗ってるのよ。王国で手を出す人なんかいないわ。」
「そうなの?」

「ええ。だって手を出したって返り討ちに合うのがわかりきってるじゃない?」
「ジャンヌの言う通りですよ。クリフ君は有名人なんですから。」

(まあたしかに王都ではけっこう目立ってると思うけど・・・)

ユーティリア領都に入ったクリフ達は領主に会う為に領主の屋敷、ジャンヌの家へと向かった。

屋敷に入ると大勢の使用人に出迎えられた。
「「「おかえりなさいませお嬢様!!」」」

「ただいま!みんな!!」
「ジャンヌ?前も思ったけど、ジャンヌの家の使用人って多すぎない?」
「そう?これぐらい普通よ。」

(いやいや・・・正直王城より多い気がするんですけど・・・)

「お嬢様。旦那様がお待ちです。さあ皆さまもどうぞ。」
「わかったわ。」

屋敷に入ったクリフ達はジャンヌの後に続いて、領主の待つ部屋へと向かった。

領主の部屋に入ると、ジャンヌと同じ金髪で無茶苦茶ガタイの良いメラ・ユーティリア、ユーティリア公爵が座って待っていた。

「お父様!ただいまですわ。」
「おおジャンヌ。お帰り。ああセリーヌ王女お久しぶりでございます。」
「ユーティリア公爵様お久しぶりですわ。」

「クリフ君も久しぶりだな。さあさあ座ってくれ。お茶でもいれるから。」
そういってユーティリア公爵は使用人を呼び、全員にお茶を振る舞う。

「さて、さっそくじゃが聖国について話しておこうと思う。」
「!?何か進展があったんですか?」

「ああ。新しい教皇が決まった!」
「!?・・・それで?」

「新しい教皇はグローヌ枢機卿がなる事に決まった。」
「お父様!?それって・・・」
「ああ。聖女様の予想通りだな。」

聖国ではトップに教皇が居て、その次に聖女ユーナがいる。その下に、グローヌ枢機卿、ゼイロン枢機卿、アマリ枢機卿、イマデア枢機卿という4人の枢機卿がいる。

教皇と聖女、イマデア枢機卿は教皇派で、残りの枢機卿は反教皇派だった。
馬車での道中にクリフはジャンヌから聖国の詳しい事を聞いていた。

「やっぱりイマデア枢機卿は教皇になれなかったんですね?」
「ああ。さすがに他の枢機卿が手を組めばイマデア枢機卿がいくらがんばっても難しいだろう。」

「それじゃあユーナは??」
「まあ今の所は大丈夫だと思う。いくらグローヌが教皇になったとしても聖女の人気は高い。教皇が亡くなってすぐに聖女も死ぬような事があれば聖国は大混乱だろう。」

「それで・・・教皇の死については何かわかったんですか?」
「詳しくはまだわからん・・・が公式発表では病死。という事になっておる。」

「病死・・・」
「ああ。クリフ君が心配するように毒殺なんかの可能性もあるかもしれん・・・私は教皇が亡くなる前に会ったが、まだまだ元気そうだった。そんなすぐに死ぬようには思えなかったからな。」

(病死か・・・3人の枢機卿の内の誰かが教皇に毒を盛った?でもなぜ?教皇がじゃまだった?だけど枢機卿の権力があればわざわざ教皇にならなくてもだいたいの事ができる気がするけど・・・)

「わかりました。情報ありがとうございます。後は直接聖国に行って確かめたいと思います。」
「ああ。だが気を付けてくれ。反教皇派だったモノが今は政権をにぎっている。何があるかわからんからな。それとまだ情報を集めてる最中だ。今日と明日はここでゆっくるしていってくれ。」

ユーティリア公爵に言われ、クリフ達は2日程、ユーティリア公爵領でゆっくりする事にした。

そんな中、元気よく振る舞っているように見えるが、セリーヌに元気がない事に気付いていたジャンヌはクリフにセリーヌをデートに誘うように提案した。

「クリフ。セリーヌがやっぱり聖女様の事を気にして元気がないの?セリーヌをさそって元気づけてくれない?公爵領を2人で歩いて気分転換すればちょっとは元気になると思うの?」
「ジャンヌ・・・。そうだね。僕もセリーヌに元気がないのは気づいていたよ。どうにかできないかな?とは思っていたんだ。」

「クリフにしかできない事よ。お願い!!でもセリーヌと二人っきりでデートしたら私とも今度二人っきりでデートしてよね。」
「!?もちろんだよ。」

「あっ!!クリフ君。2人だけずるいよ。もちろん私とも二人っきりでデートだからね。」
「うん。わかったよ。」

「マスターは相変わらずモテモテじゃな。」
「まあ婚約者だからね。」

クリフはセリーヌと出かける為に、庭のベンチに座って景色を眺めているセリーヌの元に向かうのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。 そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。 そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。 それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。 ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。 散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。 そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き… 【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…? このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど… 魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え… 剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ… 研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て… 元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ… 更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い… 母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。 努力の先に掴んだチート能力… リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ! リュカの活躍を乞うご期待! HOTランキングで1位になりました! 更に【ファンタジー・SF】でも1位です! 皆様の応援のお陰です! 本当にありがとうございます! HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。 しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

異世界から来た聖女サマが何故かモブおっさん兵士の俺にご執心なんだが

谷地雪@悪役令嬢アンソロ発売中
恋愛
国を守るために、異世界から聖女が召喚された。 彼女は大層美しかった。どんな男でもよりどりみどりの容姿だろうに、何故か彼女はモブおっさん兵士でしかない自分のことが好きだという。 大人しくイケメン王子に恋しときなさいよ。なんで俺なんだよ。

新 或る実験の記録

フロイライン
恋愛
人々を震撼させた国ぐるみの犯罪から十年 高校生の菅原乃亜は、期せずして闇深い事件に巻き込まれていく。

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。 だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと── 公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、 幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。 二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。 しかし、リリーベル十歳の誕生日。 嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、 リリーベルを取り巻く環境は一変する。 リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。 そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。 唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。 そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう…… そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は─── ※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』 こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。 めちゃくちゃチートを発揮しています……

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

ひとまず一回ヤりましょう、公爵様4

木野 キノ子
ファンタジー
21世紀日本で、ヘドネという源氏名で娼婦業を営み、46歳で昇天…したと思ったら!! なんと中世風異世界の、借金だらけ名ばかり貴族の貴族令嬢に転生した!! 第二の人生、フィリーという名を付けられた、実年齢16歳、精神年齢還暦越えのおばはん元娼婦は、せっかくなので異世界無双…なんて面倒くさいことはいたしません。 小金持ちのイイ男捕まえて、エッチスローライフを満喫するぞ~…と思っていたら!! なぜか「救国の英雄」と呼ばれる公爵様に見初められ、求婚される…。 ハッキリ言って、イ・ヤ・だ!! なんでかって? だって嫉妬に狂った女どもが、わんさか湧いてくるんだもん!! そんな女の相手なんざ、前世だけで十分だっての。 とは言え、この公爵様…顔と体が私・フィリーの好みとドンピシャ!! 一体どうしたら、いいの~。 一人で勝手にどうでもいい悩みを抱えながらも、とりあえずヤると決意したフィリー。 独りよがりな妬み嫉みで、フィリーに噛みつこうとする人間達を、前世の経験と還暦越え故、身につけた図太さで乗り切りつつ、取り巻く人々の問題を解決していく。 しかし、解決すればまた別の問題が浮上するのが人生といふもの。 嫉妬に狂った女だけでもメンドくせぇのに、次から次へと、公爵家にまつわる珍事件?及びしがらみに巻き込まれることとなる…。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

私が貴方の花嫁? お断りします!

わらびもち
恋愛
浮気相手を侍らせてデートの待ち合わせ場所に現れた婚約者。 ショックで気を失いかけるカロラインが、その帰りに会ったのは見目麗しい青年だった。 「我が花嫁」と甘く蕩けるような笑みを向けられ陶酔するカロライン。 己を神だというその青年は彼女を花嫁に迎えたいと願う。 まるで恋愛物語のような展開にうっとりとするカロラインだが、ふと彼に違和感を覚える────。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。