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番外編〜アオイの恋〜

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「でもさ、レオノア様ってまだ独身なんでしょ?」

 マリー様との謁見が終わり、私たちは訓練室に向かっていた。

 まだ時間があるので、アオイの訓練に付き合うことになったのだ。

 アオイは自身の力をコントロール出来るようになっていて、聖女の力を発揮出来るようになっていた。

 近いうち、私と一緒に魔物討伐に行くことになる。

「元々、婚約者は立てられていなかったけど、公爵になられてからも独身を貫いているみたいね」

 レオノア様は、責任を取るかのように、生涯独身でいることを誓っている、とアシュリー様から聞いた。

「それって、私のためだよね?」
「……アオイ?」

 その話を聞いて、アオイが声を弾ませた。

 嫌な予感。

「ねえ、私がレオノア様と結婚したらダメなの?」
「アオイーーー?!」

 アオイは軽い気持ちで言ったんだと思う。

 でもでも、それは……!

「だって、本当はレオノア様が私のお相手だったんでしょ? それに、ステラの結婚式でチラッと見たけど、カッコ良かったもん! 流石、アシュリー様のお兄さん!!」

 きゃ、きゃ、と嬉しそうにアオイが盛り上がっている。

「確かに、そうなんだけど……」
「良いわけねーだろ、バカか」

 アオイに説明しようとすると、頭上から声が降ってきた。

「マシュー!」

 振り返ると、私たちの後ろにはマシューが立っていた。

 訓練室と騎士団の訓練場は近い。マシューも騎士団に行く途中なのだろう。騎士服をまとっている。

「バカって何よ、いきなり!」

 あああ……、お互いを紹介をする前に、アオイがマシューに食ってかかってしまった。

「バカだろ? 聖女のお前がレオノア様と結婚してみろ。後継者問題に発展するぞ。やっと皇太子殿下とステラの結婚問題が落ち着いたってのに」

 マシューが一気にまくし立てると、アオイは顔を赤くして、黙ってしまった。

「ちょっと、マシュー……」

 流石に言い過ぎだと、止めようとするも、彼は止まらなかった。

「まだ聖女として仕事もしてないのに、色恋のことばっか言ってんなよ」
「マシュー!!」

 マシューの厳しい言葉に、急いで遮ったけど、その言葉はアオイに届いてしまった。

 アオイは傷ついた表情で、その場から走り去ってしまった。

「アオイ!」

 急いで追いかけようとするも、その前にマシューに一言!!

「マシュー! アオイに酷いこと言わないでよ!」
「ステラ、すっかり聖女と仲良くなってんのな」
「ちょっと……!」

 マシューに抗議するも、彼は何気ない顔で話を逸してしまった。

「だって、本当のことだろ?」
「……アオイだって本気で言っているんじゃないわ」
「何だ、それ?」

 マシューにちゃんと説明したいけど、今はアオイを追いかけないと。

「アオイは自分が愛される存在じゃないと思い込んでる」
「聖女が?」

 マシューは信じられない、といった顔をしていたが、私はアオイが向かった方へ踵を返すと、走り出した。

「アオイ……!」

 訓練室に向かう階下の下で、アオイがうずくまっているのを見つける。

「何よ……色恋ばっか言って何が悪いのよ……。聖女の仕事だってまだ出来てないのわかってるわよ……」
「アオイ……」

 涙声のアオイに、私は後ろから彼女を抱きしめた。

「アオイは聖女として充分やってくれているわ」
「私だって見境なくこんなこと言ってるんじゃないもん…」
「わかってるよ、アオイ」

 アオイは生まれた国でも無いのに、真剣に力の訓練をしてくれている。この国のために。

 アオイの活躍はこれからなんだから。

「アオイだって幸せになって良いんだよ?」
「……ステラぁぁ……」

 振り向いたアオイは涙で顔がグショグショだった。

「もう、可愛い顔が台無し!」

 ハンカチを取り出し、彼女の涙を拭って笑えば、彼女も笑顔になった。

「レオノア様は、やっぱり聖女のアオイだと難しいかな……」
「うん……。悔しいけど、アイツの言ったことは理解出来た」

 落ち着いたアオイと一緒に階段に腰を下ろして、私たちは話した。

「てか、アイツ何なの?!」
「ああ、マシューはね、第一部隊の隊長でね。厳しい所もあるけど、仲間想いの良い人だよ?」
「ああ、アシュリー様がヤキモチ焼いた長身イケメンか」
「ヤキモチ………」
「はい、思い出してニヤニヤしない!」

 すっかりいつものアオイに戻って安心しつつ、気になったことを問いかける。

「マシューのことイケメンだとは思うんだ?」
「まあ、顔はね? 性格は合わなそう」

 私の疑問にアオイがサラッと答える。

 性格は合わないのかあ。

 実は、マシューなんて良いんじゃないかと私は密かに思っていたのだ。

 しかし、出会いが最悪な上に、確かにお互い合わなさそう。

「でも、アオイも第一部隊と一緒に魔物討伐に行くんだよね」

 そう。私が共にする第一部隊の隊長はマシュー。もちろん、アオイもこれから一緒に行動するのだ。

「ええええ? 嘘でしょ?! さいっ、あく!」

 私の言葉に、アオイが顔を歪めた。
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