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28.冬の始まりです
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「おはよう、エルダー」
「おはようございます」
いつもの朝食。私は身だしなみを整え、ダイニングにやって来た。
朝から書類を片付けて来たオリヴァー様は、ダイニングの席に着いて、私を笑顔で迎えてくれた。
……さっきまで、同じベッドで寝ていたので、少し照れくさい。
あれから。私たちは、仕事でどんなに遅くなろうが、お互い同じベッドで眠るようになった。
『今日は行っても良いかな』
あの日、私たちは初めて名実共に夫婦となった。
『これからはどんな日でも必ず一緒のベッドで眠ろう』
オリヴァー様からの言葉に、ようやく私たちは夫婦になれたのだと、くすぐったい気持ちになった。
オリヴァー様の仕事が遅くなり、私が先に寝ていたとしても、目を覚ませば、オリヴァー様に抱きしめられている。毎日迎える朝は、幸せで胸がいっぱいだった。
私、本当にロズイエに来て良かった。
「どうした? エルダー」
幸せを噛み締めていると、座っていたオリヴァー様が、いつの間にか私の目の前に立っていた。
「な、何でもありません」
慌ててオリヴァー様にそう言えば、彼は心配そうに私の手を取って、口付けた。
「体調が悪いなら言って? エルダーに何かあったら耐えられない」
あ、甘い!!
私の旦那様が甘すぎます!!
エレイン様が仰っていた通り、ロズイエの男性は本当に情熱的だ。
ぶっきらぼうで言葉足らずだったオリヴァー様は、今や毎日甘い愛を囁いてくれる。
虐げられてきた私の心を埋めるように、満たすように。オリヴァー様の愛で、私は幸せなのだ。
「エルダー?」
何も言わない私に、増々不安な顔を見せるオリヴァー様に、私は慌てて言葉を吐き出す。
「あの、幸せだなあ、って浸っておりました」
私の言葉に安堵したオリヴァー様は、私を抱き寄せ、キスをした。
「オ、オリヴァー様?!」
給仕のためのメイドはいつの間にかダイニングからいなくなっていた。オリヴァー様が人払いしたようだった。いつのまに……。
「君が可愛いことを言うから悪いんだよ」
「ええ?」
「朝食の前に君を味わいたい」
幸せだと感謝を述べただけなのに、オリヴァー様は私を捕らえて、熱い眼差しを向ける。そして、そのまま彼に唇を貪られてしまった。
ロズイエの男性は本当に情熱的だ。
オリヴァー様にされるがまま、私はぼんやりとその愛しさに身を委ねた。
本当に幸せだった。そんな幸せの中、突如として隣国からのニュースが舞い込んで来たのは、冬の始まりの日だった。
「エルダー様、急いで執務室へ!」
調合室でいつものようにハーブを調合していると、ロジャーが急いでやって来た。
ロジャーに呼び出されて向かえば、呼び出されたのはオリヴァー様の執務室ではなく、国王陛下の執務室だと知り、驚愕する。
何があったのかしら……?
不安に思いながら、ロジャーに促されて部屋に入ると、そこにはすでにお義母様、ライアン様、エレイン様、オリヴァー様がいた。
ロズイエ王家勢揃いに、ただごとでは無いのだと悟り、ゴクリと喉を鳴らす。
「ああ、エルダー、仕事中に呼び出してすまない」
「いえ。何かあったのですか……?」
穏やかに笑ってこちらを見た陛下にホッとしつつも、私は何かあったのか聞いた。
穏やかに笑う陛下以外、皆深刻な顔をしていた。
「エルダー、オスタシスに疫病が蔓延して周辺の国はオスタシスとの交易を全て閉鎖した。もちろん、このロズイエも」
「え……」
オリヴァー様が私の前に歩み出て、説明してくれたけど、突然の話に、私の頭は真っ白になった。
オスタシスが……?
「ロズイエはエルダーちゃんのハーブティーのおかげで、発症者も軽くて済んでるのよ」
「隔離し、私とお義母様の癒やしで蔓延を完全に防げているわ」
お義母様とエレイン様が続けて説明をする。
「それで、オスタシスから各国に救援要請が出ている。……受ける国はいないがな」
「ティナ……聖女は?!」
陛下の言葉に、オスタシスの国の現状がどうなっているのか、不安になって伺う。
「聖女は教会に籠って表に出てこないらしい」
「そんな……!」
「エルダーちゃん、妹さんにもしかしてハーブティー飲ませてたりした?」
「はい……幼い頃に……」
ティナがどういう状況なのか。陛下の言葉に増々心配になっていると、お義母様から突然そんなことを聞かれた。
仲が良かった頃。そして、家を追い出される前まで、ティナは私の調合したハーブティーをよく口にしていた。
でも、それが何の関係があるんだろう?そう思っていると、お義母様から、また知らない事実を聞かされた。
「腕の良い調合師のハーブはね、癒しの聖女の力を増幅させるのよ」
「ええ?!」
「妹さんの場合、力に目覚めるのが遅かったことを考えると、エルダーちゃんによって潜在能力が呼び起こされたと考えて良いわね。エルダーちゃんのハーブが無ければ、目覚めていなかったかも」
「事実、聖女の力が弱まっていると、確かな筋から聞いた」
お義母様の説明の後、ライアン様から信じられない言葉が出た。
……私のせい?
私のハーブがティナの力を引き出してしまったから、あの子にあんな重い役目を負わせて、今こんなことになっているの……?
「おはようございます」
いつもの朝食。私は身だしなみを整え、ダイニングにやって来た。
朝から書類を片付けて来たオリヴァー様は、ダイニングの席に着いて、私を笑顔で迎えてくれた。
……さっきまで、同じベッドで寝ていたので、少し照れくさい。
あれから。私たちは、仕事でどんなに遅くなろうが、お互い同じベッドで眠るようになった。
『今日は行っても良いかな』
あの日、私たちは初めて名実共に夫婦となった。
『これからはどんな日でも必ず一緒のベッドで眠ろう』
オリヴァー様からの言葉に、ようやく私たちは夫婦になれたのだと、くすぐったい気持ちになった。
オリヴァー様の仕事が遅くなり、私が先に寝ていたとしても、目を覚ませば、オリヴァー様に抱きしめられている。毎日迎える朝は、幸せで胸がいっぱいだった。
私、本当にロズイエに来て良かった。
「どうした? エルダー」
幸せを噛み締めていると、座っていたオリヴァー様が、いつの間にか私の目の前に立っていた。
「な、何でもありません」
慌ててオリヴァー様にそう言えば、彼は心配そうに私の手を取って、口付けた。
「体調が悪いなら言って? エルダーに何かあったら耐えられない」
あ、甘い!!
私の旦那様が甘すぎます!!
エレイン様が仰っていた通り、ロズイエの男性は本当に情熱的だ。
ぶっきらぼうで言葉足らずだったオリヴァー様は、今や毎日甘い愛を囁いてくれる。
虐げられてきた私の心を埋めるように、満たすように。オリヴァー様の愛で、私は幸せなのだ。
「エルダー?」
何も言わない私に、増々不安な顔を見せるオリヴァー様に、私は慌てて言葉を吐き出す。
「あの、幸せだなあ、って浸っておりました」
私の言葉に安堵したオリヴァー様は、私を抱き寄せ、キスをした。
「オ、オリヴァー様?!」
給仕のためのメイドはいつの間にかダイニングからいなくなっていた。オリヴァー様が人払いしたようだった。いつのまに……。
「君が可愛いことを言うから悪いんだよ」
「ええ?」
「朝食の前に君を味わいたい」
幸せだと感謝を述べただけなのに、オリヴァー様は私を捕らえて、熱い眼差しを向ける。そして、そのまま彼に唇を貪られてしまった。
ロズイエの男性は本当に情熱的だ。
オリヴァー様にされるがまま、私はぼんやりとその愛しさに身を委ねた。
本当に幸せだった。そんな幸せの中、突如として隣国からのニュースが舞い込んで来たのは、冬の始まりの日だった。
「エルダー様、急いで執務室へ!」
調合室でいつものようにハーブを調合していると、ロジャーが急いでやって来た。
ロジャーに呼び出されて向かえば、呼び出されたのはオリヴァー様の執務室ではなく、国王陛下の執務室だと知り、驚愕する。
何があったのかしら……?
不安に思いながら、ロジャーに促されて部屋に入ると、そこにはすでにお義母様、ライアン様、エレイン様、オリヴァー様がいた。
ロズイエ王家勢揃いに、ただごとでは無いのだと悟り、ゴクリと喉を鳴らす。
「ああ、エルダー、仕事中に呼び出してすまない」
「いえ。何かあったのですか……?」
穏やかに笑ってこちらを見た陛下にホッとしつつも、私は何かあったのか聞いた。
穏やかに笑う陛下以外、皆深刻な顔をしていた。
「エルダー、オスタシスに疫病が蔓延して周辺の国はオスタシスとの交易を全て閉鎖した。もちろん、このロズイエも」
「え……」
オリヴァー様が私の前に歩み出て、説明してくれたけど、突然の話に、私の頭は真っ白になった。
オスタシスが……?
「ロズイエはエルダーちゃんのハーブティーのおかげで、発症者も軽くて済んでるのよ」
「隔離し、私とお義母様の癒やしで蔓延を完全に防げているわ」
お義母様とエレイン様が続けて説明をする。
「それで、オスタシスから各国に救援要請が出ている。……受ける国はいないがな」
「ティナ……聖女は?!」
陛下の言葉に、オスタシスの国の現状がどうなっているのか、不安になって伺う。
「聖女は教会に籠って表に出てこないらしい」
「そんな……!」
「エルダーちゃん、妹さんにもしかしてハーブティー飲ませてたりした?」
「はい……幼い頃に……」
ティナがどういう状況なのか。陛下の言葉に増々心配になっていると、お義母様から突然そんなことを聞かれた。
仲が良かった頃。そして、家を追い出される前まで、ティナは私の調合したハーブティーをよく口にしていた。
でも、それが何の関係があるんだろう?そう思っていると、お義母様から、また知らない事実を聞かされた。
「腕の良い調合師のハーブはね、癒しの聖女の力を増幅させるのよ」
「ええ?!」
「妹さんの場合、力に目覚めるのが遅かったことを考えると、エルダーちゃんによって潜在能力が呼び起こされたと考えて良いわね。エルダーちゃんのハーブが無ければ、目覚めていなかったかも」
「事実、聖女の力が弱まっていると、確かな筋から聞いた」
お義母様の説明の後、ライアン様から信じられない言葉が出た。
……私のせい?
私のハーブがティナの力を引き出してしまったから、あの子にあんな重い役目を負わせて、今こんなことになっているの……?
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