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ロング帝国 ルーク

4話

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「あ、」
「どうかしたか?」
「あ、いえ…。」

防音室を出た後、急にハルが声をあげた。

「なにかやり忘れたことでも思い出したか?」
「はい、」
「なんだ?」
「あの、魔獣の買い取りとかって、出来ますよね?」
「あぁ、出来るな。」
「お願いしたかったんですよね。」
「ちなみに、森で狩ったやつか?」
「はい。他にもありますけど。」
「………、悪いが、部屋に戻ってもいいか?」
「へ?」
「あまり知られない方が良いかなと思ったんだが。」
「そうですね。お願いします。」

ハルとハドソンは、防音室に戻って行った。

〔ハル、大丈夫なの?〕
〔なにが?〕
〔あの部屋、隠れてるの居るでしょ?〕
〔もう、居ないよ。〕
〔え、ウソ?〕
〔ホント。上に報告するのに出てったっぽいから引き返そうと思ったの。〕
〔へー。〕
〔アキちゃんが気付かないとか珍しいね。〕
〔ずっとハルに抱っこされて、撫でられてたから、周りに気を張るのを一切止めてた。
ハルがしてたし、私は、ハルのなでなでに全力で挑もうと思ってね。〕
〔なるほど。それで、ぼくのなでなではどうでしたか?〕
〔今までで1番気持ちよかった!〕
〔なら、良かった…。〕

コンコン

防音室に戻ってきた2人は、ハドソンがドアをノックして、中に入っていった。

「ローガン、もうひとつ仕事だ。」
「ハドソン…?なんだ?」
「ハルが買い取りをお願いしたいって。」
「買い取り?」
「はい。魔獣の買い取りなんですけど。」
「じゃあ、クエスト消費も一緒にして処理するか…。」
「いいんですか?クエスト受けてないですけど…。」
「あぁ。クエストやってる時に、違う魔獣を倒したり、薬草などを集めたりした場合、クエストがあればクエストしたことにして処理する事が出来るからそれと同じ感じでやるよ。」
「ありがとうございます。」
「で、どのくらいある?」
「そうですね、ゴブリンの耳とオーク、ブラックベアですかね。」
「「はぁ?」」
「ん?」
「いやいやいや、ちょっと、まて、」
「なんでしょうか?」
「ゴブリンの耳は分かるよ。その辺にうじゃうじゃ居るからな。でも、オーク、特にブラックベアは、魔の森じゃないと居ないぞ。」
「そうですね。」
「そうですね。じゃない!なんで!?」
「なんで?魔の森で倒したからです。」
「なんで、魔の森に居たんだ?」
「親に、出稼ぎに行ってこいって言われて入れられた森が皆さんが言う魔の森って所だったからですね。」
「………。」
「ローガン、早く処理してやれ。宿とれなくなっちまう。」
「……。分かった。こっちに来てくれ。」

ローガンは、放心状態のまま、防音室を出て、1階に降りて、解体場にハルとハドソンを連れてきた。

解体作業場は、かなり広いスペースの部屋だった。
小型魔獣を解体するための台が水道付きで6台置いてあり、中型魔獣を解体するための台も水道付きで4台ある。
大型魔獣は、床にシートを敷いて解体をするために、だだっ広い空間がある。近くに水道もある。

「ローガン?どうした?」

解体作業場の責任者であるライオットが未だ呆然としているローガンを気にかけて声を掛けてきた。

「ライオットさん、お久しぶりです。」
「おぉ、ハドソンか。どうした?」
「はい、この子、今日ギルドに登録したんですけど、この町に来る前に通った森で魔獣を倒したそうなので、買い取りをお願いされたので、此処に来たんです。」
「そうか。よろしくな、俺はライオット。」
「はじめまして、ハルと言います。この子はアキちゃんです。」

ハルは、ハドソンの後ろに隠れるようにして居たが、ライオットに挨拶をされたため、1歩前に出て、アキを抱っこして、挨拶をした。

「で、倒した魔獣は?」
「はい、今出します。大きいので、あっちの広い所で良いですか?」
「あぁ…。」

ライオットは、言われた通りに大型魔獣を解体する場所にハルを連れて来た。

「今、シート敷くから待ってろ。」

清潔なシートを敷いて、準備が出来た。

「いいぞ。」
「はい。」

ハルは、ゴブリンの耳を全てとオーク2体、ハイオーク1体、ブラックベアの大人1体、子供3体を出した。

「お願いします。血抜きだけはしてあります。」

「「「…………」」」

目の前でハルのマジックバックから出てくる魔獣を見て、ハドソンもローガンもライオットも口をあんぐりと開け、呆然と見ていた。
何事かと仕事の手を止めて見ていた他の職員も目を点にして口をあんぐりと開けている。

「あのー……。」

「「「………」」」

「すぅー、あのっ!!」

ビクッ

3人は、ハルの大声にびっくりして、ようやく現実に戻ってきた。

「血抜きはしてあるのでお願いします。」
「あ、あぁ…、分かった…。」
「ハル、こんだけあるとなると、料金は後日でも良いか?」
「後日ですか?」
「あぁ。この札を渡しとくから明日には用意出来ると思うから、また明日来てくれ。」
「分かりました。お願いします。」

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