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幼なじみと同棲?!

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僕の名前はニィハ。小さな村のパン屋の1人息子である。

そんな僕に突如訪れたのは、思いがけないことだった。



遡ること1日前ーーー。


僕は、いつものように大きめのコック帽をかぶり、パン屋で両親のお手伝いをしていた。ここは村だからか、常連さんばかり。地面には草が生い茂っていて、申し訳程度に道が整備されている、集落みたいな感じ。だけどたまに、旅人が来る。

パンを並べていたら、ドアが「カランカラン」と鳴った。お客さんだ、と思った僕は振り向いて挨拶しようとしたが、訪問者を見た途端、目を見開いた。

なぜなら、大好きな幼なじみと、その家族が勢揃いだったからだ。



いつもはレイ、もとい僕の好きな人しかここに来ないのに。今日は何故か両親もいるじゃないか。美形家族なだけあって、この一帯だけ輝いて見える。他のお客さんも惚けて見ている。
レイの両親は冒険者で、とても忙しい。2人とも一番上のS級なんだ。会う時はいつも甲冑はつけていないのに、外す暇もなかったのかつけていて、かっこよさがいつもの100倍はある。国の端っこの村だけど、有名冒険者だけあってよく王都に駆り出されてしまうから、度々文句を言っていた。

……これで僕が驚いた理由がわかっただろうか。この人たちは多忙なんだ。
そんな人達が集まるなんてことは稀で、不思議に思った。

「突然ごめんね、二ィハちゃん」
「話がしたいんだが今大丈夫だろうか?」

レイのお父さんが聞き、僕のお母さんが答える。
「もちろんいいですよー!是非2階のリビングを使ってくださいな。」
「あら、ありがとね~♡」

その時はあまりの美しさに圧倒されて、何も考えずに聞いていた。僕に話なんて……一体何があるんだろうか?







 




そして、二階にあるニィハ家のリビングで話し合いが行われた。と言っても、そんなに固くはないんだけどね。

ソファは3人家族用だから勿論三人しか座れなくて、譲り合いが起こった。

結果は引き分け。でも何故か僕がレイの膝の上に座ることになった。彼の腕は僕のお腹に回っていて、ドキドキする。

「久しぶりだな、ニィハちゃん」
「もう4ヶ月ぶりかしら?」
「はい……そうですね。ぼくの誕生日会を開いて頂いてから会えてなかったので」
「そうね。4か月前に比べて、ニィハちゃんはまた大人いろっぽくなっちゃって。レイもそう思うでしょ?」
「あっあぁ。もちろん思うけど……俺に振らなくてもいいじゃん」
「あら?パパに振っても良かったのかしら。」
「……いや、俺でいい」

少し間を開けてレイが答える。
僕は仲良し家族の会話を前に困惑していた。こういうことは最近よく増えてきた。
僕のことについて話しているということは分かる。だけど、その内容が意味わからなくていつも固まってしまうのだ。

「ほらほら、ニィハちゃん固まってるぞ?」
「あーん、ごめんねニィハちゃん!本題に入ろっか」

そういったお母さんの言いたかったことをまとめると……。

・両親は家を空けることがほとんどで、レイは家に1人
・少し前に、レイは家事が恐ろしくできないことが判明
・どうかレイと一緒に住んで助けて貰えないか

ーーということだった。


今までレイの両親は、4ヶ月も家を空けることがなく、レイの家事のできなさは把握出来ていなかったのだとか。それまでは家を空けるにしても、多くて1ヶ月ほどで、そのくらいならレイの家事も目をつぶれる程度だったらしい。でも4ヶ月も空くと、流石に危機を覚えたそうだ。ヒビの入ったお皿に、何故か破れている洗濯された洋服たち。それらを見て、すぐさま僕に頼ろうと決めたそうだ。

大切な息子を任せてもらえるなんて信頼してもらえてるんだと思うし、好きなレイといられる時間が増えるのだから、承諾しない選択肢はない。しかも、レイのお母さんたちは家にいないことがほとんどだから、実質レイと2人暮らしということ。そんなの、こっちから願いたいものだ。

「もちろん!いいですよ~」
「本当に?ありがとう~!ニィハちゃんは(レイの)いい奥さんになりそうね」
「ぼく男ですよー?」
「関係ないじゃないの~!周りにいないから分からないのかもしれないけど、この国は男同士でも結婚できrーーー」
「母さん、ニィハ困ってるからそこら辺にしてあげて?」
「んもう。わかったわよ~!久しぶりに癒しに会えたって言うのに……。」
「ニィハちゃん、早速明日からお願いしたいんだけどいいか?また今日の夜出ないといけなくてな……すまんな」

お母さんを制するようにして、お父さんが言う。

「いいですよー!」
「家は俺たちのところな」
「うんっ!レイが素敵な夫になるよう、僕頑張ります!」
「ちょっニィハ!それは語弊が……別に問題はないけど。」
「?」



ーーこの時僕は気づいていなかった。家事の手助けをするだけなら、レイと一緒に暮らさなくてもいいという事に……。
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