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2章.授業を荒らして停学処分を受けた私は……
10.冒険者ギルドに向かいます。
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その後、さっきの場所に置いて来た採取物を回収した後、ヴラドの案内に従ってギルドへ向かう。
「ところで、その包帯は外さねぇのか?」
「……傷だらけだから、あまり見せたくないんだよ。」
本当は別に理由があるんだけど、そういう事にしておく。
「気にすんなよ。別に俺らの世界じゃ珍しくないぜ?ほら、俺だって腕にこんな大きな傷があるからな。」
そう言って、腕をまくり、傷を見せてくれた。どんな傷だ………ろ……
「!!(ガシッ)」
「なっ……!?」
ヴラドの腕を掴み、まじまじと診てみる。
「………(ジィィ)」」
「な、なんだ?どうした?」
「…この腕、誰が治療したんだ?」
「えっ?」
「お前のこの腕、一度切り落されるか何かしたんだろ?」
「なっ!?何故知って……」
見間違えだと思ったが、間違いない。この腕、本来なら繋がるはずのない腕だ。
恐らく、一度切断された後に接合されたのだろう。それも、日常生活に異常が出ないレベルまで回復している様だ。
王都はおろか、この世界には明確な外科の概念が無い。技術としてあるのは、精々が瀉血やデブリードマン程度。専用の機材どころか、まともな針や糸すら無い医療環境と、この処置はどう考えても一致しない。
まさに、神の所業とでも言いたくなる。
「教えてくれ!頼む!」
「……わりぃけど、それは出来ねぇ。約束してんだ。誰にも話さないって。」
「っ………」
しまったな。今のは、あまりに不躾だった。
「……出来ればで良い。これだけ答えてくれ。その人の瞳は翡翠色か?」
「いいや、茶色だ。」
「………」
嘘は付いてないみたいだ。てことは、人違いか。
「(ぱっ)そうか。おかしな事を聞いて悪かったな。」
冷静になって自己嫌悪に陥る。向こうの都合をガン無視してしまった。
「別に気にしてない。それより、何でわかったんだ?」
「見ればわかるよ。私にも同じ様に切り離された後に繋がった痕があるからな。全身に。」
「は!?マジかよ?」
「マジだ。皮膚活線に沿って切除と縫合がされればほとんど遜色なく繋がる。こんな治療を出来る人物を、私はあの人以外に知らない。」
「なるほど。じゃあ、あの人がお前を……?」
「かと思ったんだが、どうやら別人だったみたいだ。ただ、一つだけ言える事がある。」
「?」
「その腕を治療した人は間違いなく名医だ。」
「!!そうか!やっぱりそうなのか!!」
嬉しそうにしている。
「そんなすげぇ人に巡り会えたなんて、俺もお前も凄くついてるよな!」
「……あぁ、そうだな。」
全くもってその通りだ。だが、ある意味不幸でもある。
「するってっと、お前はその命の恩人を探してるって事か?」
「……まぁ、そんなとこだな。」
「見つかると良いな!」
「ありがとう。」
「………さて、着いたぜ。ここだ。」
案内された所には、大分年季の入った昇降機があった。
「丁度時間か……んじゃ、さっさと乗り込むぞ。」
「あ……あぁ。」
ヴラドと共に無人のそれに乗った。直後
〈ガコンッ……ヴォォォォン………〉
何かしらの起動する音がする。どうやら上昇を開始したらしい。
特に操作した様子はないから、センサー式なのか、それとも時間が来たら稼働するかのどちらかだろう。
「あぁそれと、たまに事故が起こるから手すりから手を離すなよ?」
「………」
どっちにしても危ないんだな。
「そんな顔すんなよ。今月入ってからはまだ一度も事故ってない。」
先月は事故ったんだ。
「あぁ、それとギルド登録する時は色々手続きあるから軽く説明受けとくか?」
「………あぁ、よろしく頼む。」
現実逃避には丁度良い。出来るだけ現状から目を逸らさないとな。
そうして私は、ヴラドから説明を聞きつつ、昇降機が途中で事故に遭わない事を静かに祈った。
***
〈ガコンッ〉
そうしているうちに無事に上まで到着した。
「また助けられたな。」
「別に良いよ。こっちも肉が増えて良いことづくめだ。」
「にしても、珍しい事もあるもんだな。ワイバーンが突っ込んでくるなんて。」
「……日常茶飯事じゃないのか?」
「あんなん毎度毎度あってたまるかよ。」
「けど、事故って……」
「昇降機自体のな。魔物が突っ込んで来たのなんて初めてだ。」
「………」
やっぱり私、呪われて……いや、今更か。
〈ガカンッ!ガラララララララララララッ!!〉
「っ?!」
さっきまで乗って来た昇降機が、異常な速さで降っていった。
〈ッゴォォォォォンッ!!!〉
「ありゃぁ。今月1回目だな。」
「………」
これ以上、深く考えるのは辞めよう。不毛だ。
「それより、着いたぜ。」
「ここか?」
「あぁ、ここが冒険者ギルドだ。」
昇降機を降りた真正面に聳え立つ建物を指してヴラドが言う。
「まずは登録からだな。案内するから着いて来てくれ。」
「あぁ。」
何はともあれ冒険者ギルドには着いた。さっさと冒険者登録を済ませて帰ろう。
「ところで、その包帯は外さねぇのか?」
「……傷だらけだから、あまり見せたくないんだよ。」
本当は別に理由があるんだけど、そういう事にしておく。
「気にすんなよ。別に俺らの世界じゃ珍しくないぜ?ほら、俺だって腕にこんな大きな傷があるからな。」
そう言って、腕をまくり、傷を見せてくれた。どんな傷だ………ろ……
「!!(ガシッ)」
「なっ……!?」
ヴラドの腕を掴み、まじまじと診てみる。
「………(ジィィ)」」
「な、なんだ?どうした?」
「…この腕、誰が治療したんだ?」
「えっ?」
「お前のこの腕、一度切り落されるか何かしたんだろ?」
「なっ!?何故知って……」
見間違えだと思ったが、間違いない。この腕、本来なら繋がるはずのない腕だ。
恐らく、一度切断された後に接合されたのだろう。それも、日常生活に異常が出ないレベルまで回復している様だ。
王都はおろか、この世界には明確な外科の概念が無い。技術としてあるのは、精々が瀉血やデブリードマン程度。専用の機材どころか、まともな針や糸すら無い医療環境と、この処置はどう考えても一致しない。
まさに、神の所業とでも言いたくなる。
「教えてくれ!頼む!」
「……わりぃけど、それは出来ねぇ。約束してんだ。誰にも話さないって。」
「っ………」
しまったな。今のは、あまりに不躾だった。
「……出来ればで良い。これだけ答えてくれ。その人の瞳は翡翠色か?」
「いいや、茶色だ。」
「………」
嘘は付いてないみたいだ。てことは、人違いか。
「(ぱっ)そうか。おかしな事を聞いて悪かったな。」
冷静になって自己嫌悪に陥る。向こうの都合をガン無視してしまった。
「別に気にしてない。それより、何でわかったんだ?」
「見ればわかるよ。私にも同じ様に切り離された後に繋がった痕があるからな。全身に。」
「は!?マジかよ?」
「マジだ。皮膚活線に沿って切除と縫合がされればほとんど遜色なく繋がる。こんな治療を出来る人物を、私はあの人以外に知らない。」
「なるほど。じゃあ、あの人がお前を……?」
「かと思ったんだが、どうやら別人だったみたいだ。ただ、一つだけ言える事がある。」
「?」
「その腕を治療した人は間違いなく名医だ。」
「!!そうか!やっぱりそうなのか!!」
嬉しそうにしている。
「そんなすげぇ人に巡り会えたなんて、俺もお前も凄くついてるよな!」
「……あぁ、そうだな。」
全くもってその通りだ。だが、ある意味不幸でもある。
「するってっと、お前はその命の恩人を探してるって事か?」
「……まぁ、そんなとこだな。」
「見つかると良いな!」
「ありがとう。」
「………さて、着いたぜ。ここだ。」
案内された所には、大分年季の入った昇降機があった。
「丁度時間か……んじゃ、さっさと乗り込むぞ。」
「あ……あぁ。」
ヴラドと共に無人のそれに乗った。直後
〈ガコンッ……ヴォォォォン………〉
何かしらの起動する音がする。どうやら上昇を開始したらしい。
特に操作した様子はないから、センサー式なのか、それとも時間が来たら稼働するかのどちらかだろう。
「あぁそれと、たまに事故が起こるから手すりから手を離すなよ?」
「………」
どっちにしても危ないんだな。
「そんな顔すんなよ。今月入ってからはまだ一度も事故ってない。」
先月は事故ったんだ。
「あぁ、それとギルド登録する時は色々手続きあるから軽く説明受けとくか?」
「………あぁ、よろしく頼む。」
現実逃避には丁度良い。出来るだけ現状から目を逸らさないとな。
そうして私は、ヴラドから説明を聞きつつ、昇降機が途中で事故に遭わない事を静かに祈った。
***
〈ガコンッ〉
そうしているうちに無事に上まで到着した。
「また助けられたな。」
「別に良いよ。こっちも肉が増えて良いことづくめだ。」
「にしても、珍しい事もあるもんだな。ワイバーンが突っ込んでくるなんて。」
「……日常茶飯事じゃないのか?」
「あんなん毎度毎度あってたまるかよ。」
「けど、事故って……」
「昇降機自体のな。魔物が突っ込んで来たのなんて初めてだ。」
「………」
やっぱり私、呪われて……いや、今更か。
〈ガカンッ!ガラララララララララララッ!!〉
「っ?!」
さっきまで乗って来た昇降機が、異常な速さで降っていった。
〈ッゴォォォォォンッ!!!〉
「ありゃぁ。今月1回目だな。」
「………」
これ以上、深く考えるのは辞めよう。不毛だ。
「それより、着いたぜ。」
「ここか?」
「あぁ、ここが冒険者ギルドだ。」
昇降機を降りた真正面に聳え立つ建物を指してヴラドが言う。
「まずは登録からだな。案内するから着いて来てくれ。」
「あぁ。」
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