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1章.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…

13.退学するまで授業します。

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「だから、明日以降の授業も講師をしてくれよ!!」
「いや…さすがにそれは……教員も居るだろうし。」
「そんなん、さっきみたいに追い出せば良いじゃねぇか。」
「簡単に言ってくれるなよ。事情があるんだから。」
「やっぱり、退学が怖いか?」
「いや、それはない。寧ろ望む所だ。」
「だったら、何でそんなに頑ななんだ?」

 不思議そうに尋ねられる。

「それはやっぱり、苦労して身に付けた知識を公開したくないからか?」
「いや、そういうわけじゃないんだよ。」
「じゃあ何故だ?」
「………資格がないからだよ。」
「…………は?」
「授業をしてる教師達は、どんな理由で何処の誰からかは知らないが、教師として認められた上で授業をしている。一方の私は、学校側から認められたわけじゃない。ましてや、薬学を修め切ったわけでもないんだよ。」
「そうか?俺からしてみりゃ、あの教員よりはお前の方がよっぽど教師らしいけどな。」
「確かに、誰かを教える資格があの教員にあるとは私だって思わない。だからって、私にあるってわけじゃないだろ?」

 私だって、そうしたいのは山々だ。やってて思ったけど、やっぱり私は教えるのが結構好きみたいだ。

 けど、私に教える資格なんて……

「アレク、一つ聞いても良いか?」
「……なんだ?」
「その『教える資格』って、お前が決めちまうもんなのか?」
「…えっ?」
「教える資格の有無を決めるのは、教員教える側じゃなくて、生徒教わる側だろ?」
「……どういう意味だ?」
「この教員から教わりたいって思うから、授業が成り立つ。薬学を教わりたいから、この学園が成り立つ。けど、教壇に立って力説したって、誰も聞いてないなら授業とは呼べない。俺はそう思う。お前だってそう思うだろ?」
「………」
「あの時お前は、生徒教わる立場としてあの教員に『教える資格がない』と言ったんじゃないのか?」
「いや……そう…なるな。一応。」
「お前から教わりたいって奴がいて、お前が教えたいと思ってんなら、それで資格は充分だろ?教えりゃあ良いんじゃねぇか?」
「…………」

 見透かされていたのか。授業をまたやりたいなって思ってたことを。

「どうせならよぉ?とことんやっちまったら良いんじゃねぇのか?遠慮なんて、さっき捨てただろ?」
「………」

 そうだな。もう遠慮する道理もない。好きにさせて貰おう。

「………わかった。せっかくだし、退学にされるまでとことんやってやるよ。」
「じゃ!また明日な!!」

 明日の授業の約束をしてテルマは去っていった。

 また明日……か。図書館へ行くのは、もう暫く後だな。

「あ……あの!」
「ん?……あぁ、カンナさん。」
「ごめんなさいっ!」
「えっ?」
「本当に…どうお詫びすれば良いのか……」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。何故謝るんですか?」
「何故って…私のせいで…アレクさんが退学に……」
「あぁ…それ、お門違いです。」
「……え?」
「あなたの為にしたわけではありません。自分の為にした行動です。だから、あなたに謝られるのはお門違いです。」
「で……でも!!」
「どうかご心配なく。そもそも、私は退学にされたいのですから。」
「えっ?…ぇえっ!?」
「この学園に居ても、私には大した得がありません。あなただってご存知でしょう?故郷で雑草を刈ってる方が幾分か充実していますよ。」
「だっ…だからって……」
「では、話の続きはまた明日という事で。」
「えっ!?」
「では、失礼します。」
「えっ…ちょっ…待ってください!」
「すみません、この後もバイトがあるんです。話の続きは、また明日でも宜しいでしょうか?」
「っ………はい、わかりました。」
「では、また明日。」

 これ以上、会話を続けて彼女に罪悪感を抱かせたくない。今日はここまでにして、明日改めて謝罪する事にしよう。

 そうして強引に話を終わらせた私は、薬慈院へ向かった。
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