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序章.王都の学園に入学する事になった私は…
2.王都に着くまで寝ていました。
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あの後、ハクラの協力で夜にこっそり屋敷を抜け出した。
そして今朝、既に出発していた王都行きの馬車に追いつくことが出来た。
ハクラ達は馬車の準備が出来次第『ランパス』へと出発する予定らしい。勝手に出発した事は、その時に会って謝ることにしよう。
それにしても、まさか馬車に追いつくためにアレに頼らざるを得なくなるとは思わなかった。ここ最近は使わずに生活出来てたんだけどな。
それでも、馬車に追いついた時には出発して数日が経っていた。やっぱり王都は遠いな。
馬車の旅は結構好きだから『ランパス』に着く前の便に乗りたかったけど、遅刻したら元も子もない。これが順当だろう。
何はともあれ、この馬車なら何とか入学式に間に合いそうだ。
「あんちゃん、そろそろ着くぜ。」
だが、この旅にも終わりが訪れた様だ。口惜しいが、降りる準備と行こう。
「王都には観光かい?」
「いえ、留学です。」
「留学?て事はあんちゃん、学生さんかい?」
「えぇ、この春からですがね。」
「そりゃ珍しい。バンデンクラットから進学する学生なんていつぶりかね。」
「そんなに珍しいですか?」
「あぁ、かれこれ10年ばかりは見てねぇなぁ。」
奇妙だな。そんなに少なかったのか?
「それにしても、学生って割には、荷物が少なくないか?」
「えぇ、荷物は宿に先に運んであるらしいので。」
ハクラが宿に荷物を送ってくれたらしく、持ち物はこのアタッシュケースだけだ。
「宿?学生寮じゃないのか?」
「えぇ、知り合いが用意してくれまして。」
「知り合い?王都に親戚が?」
「まぁ、そんなとこです。」
「そいつはまた大層な話じゃないか。」
「いやぁ……あははは。」
「おっと、そろそろか。外を見てみな。」
促され、馬車の外を見ると……
〈ヒュォォォォッ〉
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
「これは……壮観ですね。」
「だろう?この景色が見られるからこの仕事はやめらんねぇんだ。」
王都へ向かう大橋の下には……樹の海が広がっていた。
それも、かなり深い。橋から森までは標高差数百メートルはあるかもしれない。
それだけ離れていても、樹海の底から獣達の声が響いてくる。
ソルランテ王国の王都は、王都を囲う外壁とそれを囲う窪みに生い茂る樹海。そして、その樹海の外周を囲う様に聳える断崖絶壁の3層構造となった正に天然の要塞だ。
個人的には、シフォンケーキの型にも似ている様に思える。
中央にある王都への交通手段は、断崖絶壁の切間と壁の四方に設置された門の間に掛かる4つの大橋のみであり、橋の上から森が見下ろせる様になっていた。
その森はまるで海か泉の様に深く広く、その景観を例えるなら……
「樹海に漂う島城……」
「おっ!中々粋な表現だな!」
「あっ…いえ、その……」
「今度、俺も使ってみるとするかな。」
「あの……出来れば私が言った事は伏せて貰えると……」
「そうか?勿体ねぇなぁ。」
勘弁してほしい。なるべく、目立ちたくないんだよ。
***
そうこうして、王都内に入った。
「本当にここで良いのかい?」
「はい。ここまでありがとうございました。」
学園まで送って貰うとブレルスクの新入生だとバレる。
屋敷に送って貰うとバンデンクラット家の関係者だとバレる。
代金以上のサービス精神は素直に嬉しい。
だが、心意気だけ受け取っておく事にした方が良い。
「帰りも気をつけてください。」
「あぁ、里帰りの時はまたご贔屓に」
えぇ、そうさせていただきますよ。
「さて」
ここからは、都内用の馬車に乗り換えて直接学園へ向かう。
予定では、入学式を今日行う筈だ。
………と、その前に………
「おい、あいつ見ろよ!あの髪!あの目!」
「…すっげぇ。見たことねぇなぁ。翠眼…とかいうやつか?」
「白髪翠眼……もしかして、すっげぇ美女じゃねぇの?」
「俺、ちょっとワンチャン話しかけてみるわ。」
「………」
周囲からの好奇な視線を感じる。
包帯で傷跡を隠しているとはいえ、王都でこの容姿は目立つな。
とりあえず、注目を浴びすぎるのは宜しくない。何とかしないと。
そして今朝、既に出発していた王都行きの馬車に追いつくことが出来た。
ハクラ達は馬車の準備が出来次第『ランパス』へと出発する予定らしい。勝手に出発した事は、その時に会って謝ることにしよう。
それにしても、まさか馬車に追いつくためにアレに頼らざるを得なくなるとは思わなかった。ここ最近は使わずに生活出来てたんだけどな。
それでも、馬車に追いついた時には出発して数日が経っていた。やっぱり王都は遠いな。
馬車の旅は結構好きだから『ランパス』に着く前の便に乗りたかったけど、遅刻したら元も子もない。これが順当だろう。
何はともあれ、この馬車なら何とか入学式に間に合いそうだ。
「あんちゃん、そろそろ着くぜ。」
だが、この旅にも終わりが訪れた様だ。口惜しいが、降りる準備と行こう。
「王都には観光かい?」
「いえ、留学です。」
「留学?て事はあんちゃん、学生さんかい?」
「えぇ、この春からですがね。」
「そりゃ珍しい。バンデンクラットから進学する学生なんていつぶりかね。」
「そんなに珍しいですか?」
「あぁ、かれこれ10年ばかりは見てねぇなぁ。」
奇妙だな。そんなに少なかったのか?
「それにしても、学生って割には、荷物が少なくないか?」
「えぇ、荷物は宿に先に運んであるらしいので。」
ハクラが宿に荷物を送ってくれたらしく、持ち物はこのアタッシュケースだけだ。
「宿?学生寮じゃないのか?」
「えぇ、知り合いが用意してくれまして。」
「知り合い?王都に親戚が?」
「まぁ、そんなとこです。」
「そいつはまた大層な話じゃないか。」
「いやぁ……あははは。」
「おっと、そろそろか。外を見てみな。」
促され、馬車の外を見ると……
〈ヒュォォォォッ〉
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
「これは……壮観ですね。」
「だろう?この景色が見られるからこの仕事はやめらんねぇんだ。」
王都へ向かう大橋の下には……樹の海が広がっていた。
それも、かなり深い。橋から森までは標高差数百メートルはあるかもしれない。
それだけ離れていても、樹海の底から獣達の声が響いてくる。
ソルランテ王国の王都は、王都を囲う外壁とそれを囲う窪みに生い茂る樹海。そして、その樹海の外周を囲う様に聳える断崖絶壁の3層構造となった正に天然の要塞だ。
個人的には、シフォンケーキの型にも似ている様に思える。
中央にある王都への交通手段は、断崖絶壁の切間と壁の四方に設置された門の間に掛かる4つの大橋のみであり、橋の上から森が見下ろせる様になっていた。
その森はまるで海か泉の様に深く広く、その景観を例えるなら……
「樹海に漂う島城……」
「おっ!中々粋な表現だな!」
「あっ…いえ、その……」
「今度、俺も使ってみるとするかな。」
「あの……出来れば私が言った事は伏せて貰えると……」
「そうか?勿体ねぇなぁ。」
勘弁してほしい。なるべく、目立ちたくないんだよ。
***
そうこうして、王都内に入った。
「本当にここで良いのかい?」
「はい。ここまでありがとうございました。」
学園まで送って貰うとブレルスクの新入生だとバレる。
屋敷に送って貰うとバンデンクラット家の関係者だとバレる。
代金以上のサービス精神は素直に嬉しい。
だが、心意気だけ受け取っておく事にした方が良い。
「帰りも気をつけてください。」
「あぁ、里帰りの時はまたご贔屓に」
えぇ、そうさせていただきますよ。
「さて」
ここからは、都内用の馬車に乗り換えて直接学園へ向かう。
予定では、入学式を今日行う筈だ。
………と、その前に………
「おい、あいつ見ろよ!あの髪!あの目!」
「…すっげぇ。見たことねぇなぁ。翠眼…とかいうやつか?」
「白髪翠眼……もしかして、すっげぇ美女じゃねぇの?」
「俺、ちょっとワンチャン話しかけてみるわ。」
「………」
周囲からの好奇な視線を感じる。
包帯で傷跡を隠しているとはいえ、王都でこの容姿は目立つな。
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