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第27章
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親衛隊員は、中央軍本陣に到着する。
剣吾は直ぐに自身の兵舎へと呼び寄せ、彼に報告をさせた。
「若様、奴らを撃退しましょう!」
「この本陣を囮に敵をおびき寄せ、陣の外から火矢を放ち、焼き殺そ!」
「若様、私は賛成でございます!」
「よし、皆の者。早速、準備致せ!」
本陣には兵が休んでいるように見せる為に、兵舎の明かりは付けた儘にした。
待ち伏せしているとも知らない2人の将軍が本陣近くまでやって来る。戦の経験が豊富な彼らであったが、慎重に行動を取るよりも先に手柄を取る考えになっていた。
「このまま一気に本陣を攻め落とすか?」
「俺は賛成だ!」
「全軍、逆賊共を討ち取れ!」
鬨の声を上げながら、3千ばかりの兵は一気に本陣へと攻め寄せる。だが、1人も抵抗する者が出て来なかった。
不審に思った将軍達は、直ぐに撤退の命を下し、すぐさま引き返そうとしたが、四方八方から火矢が飛んで来る。
一気に兵舎を燃え広がり、地面に溢れていた油にも火が付き始め、皇鳳軍の多くが焼き死んでいく。
「あの旗は、剣十郎の旗ではないのか?」
「確かに、そうだ!相当手強い相手だが、奴を仕留めれば報酬は沢山貰えるかも知れないぞ!」
「それも、そうだ.......!皆の者、剣十郎の首を狙え!」
皇鳳軍は、全軍で剣吾の首を狙いに行く。異変にいち早く気付いた韓栄、黄山は協力し、迫り来る兵を次々と撃破していく。
将軍は血路を開いた事により、撤退の道が開く。兵達は必死で無事に城に戻れるように、次々と身代わりになる。
「絶対に逃すな、将軍を捕らえろ」
その頃、都城では王が突如として居なくなった事が知れ渡る。王妃や側室、大臣や将軍は大慌て。
夜に消えたという事もあり、まだ民には知れ渡っていないのが唯一の救いであった。王宮へと臣下が一斉に押し寄せる。
「宦官、王様は何処におられる?」
「それは、私からの口では言えませぬ」
「なんだと!?国の一大事なのだ」
「ですから、私からの口では言えませぬ!」
「辞めろ、宰相。王様の命令であろう」
臣下達は、民に知れ渡らないように策を講じる事に焦り出す。
その頃、戦場では剣吾や賢太郎の指示を無視して、韓栄と黄山は3千の軍勢を率いて、追撃をしていた。
「黄山、今回は俺が手柄を取る」
「いいや、今回も俺が取る!」
「俺が取るから、お前は手出しはするな!これが良い名案というものだ!」
「俺が手柄を取った方が、良い名案だし名案だと言う事だ」
「ならば、討ち取った将軍の首が多い者が勝利だ。それで解決でよかろう!」
「あぁ、そうだな!」
韓栄と黄山は自分の欲の為に、追撃を続けていた。だが、左右を見ると断崖絶壁の峠が広がっている場所へと辿り着く。
敵を追撃するのを辞め、周囲を警戒するように兵達に指示を出す。
「これは、伏兵が居てるかもな」
「あぁ、その可能性は高い!だが、伏兵が居たとしても、敵を殲滅出来れば褒美は絶対に高いぞ」
「それも、そうだな!」
韓栄と黄山は峠を駆け抜け、敵の後方に回る策を取る。
だが、予測した通り敵は兵を伏せていたのであった。次々と殺られる兵士達。
絶対絶命の韓栄と黄山。追撃失敗ともなれば、処罰は免れない。彼らは、剣吾の命令を無視し、追撃していた。
「韓栄、味方が殺られていく。どうするか考えねば」
「この峠を抜ければ勝ちだ!」
「だが、この先に敵が待ち構えていれば、挟み撃ちになってしまう。そうなれば終わりだ」
「その時は、武士らしく戦って死ぬ!俺は死など恐れない!!!」
「フンっ、流石だな!俺も腹を括るしかないな!」
「それでこそ、黄山だ!」
彼らは決死の覚悟で峠を抜いたが、この時付いてきた兵力は、僅か800人余りであった。
前方には約5千余りの兵力が塞いでいる。この大軍を率いるのは、皇鳳国の国王自らである。敵の大将を知った韓栄と黄山は、最後の戦と心に決め、全軍で突撃を仕掛ける。
「全軍我に続け!必ずや敵将の首を討ち取り、勝利へ導くのだ」
一気に軍の士気が高まり、次々と敵兵を倒していく。韓栄と黄山も斬り伏せて行き、敵将の待つ本陣を目指す。
だが、いくら士気が高まっているとはいえ多勢に無勢。味方も殺られていく。
「お前ら、ここで我々が多くの敵兵を倒せば、殿が天下を取りやすくなる!我らの死は、無駄死にではないぞ!」
韓栄の言葉に、味方の士気は数段と高まり、勢いも増す。
敵の戦略により、後方を攻められてしまう。逃げ場を失った韓栄達ではあったが、隊列は乱さず敵将の首だけを狙う。
「敵ながら、あっぱれだ!あの敵将2人を狙い撃て!」
皇鳳国の国王の命により、弓部隊は一斉射撃を開始。数100本の矢が、中央軍に襲い掛かり、ほぼ全滅になる。
兵士は30名近くまで減っており、既に皇鳳軍に包囲されていた。
「お主2人には才能がある。高3鳳軍に降伏すれば、副将軍に任命するぞ!どうだ?悪くない話だと思うが」
「俺は若様に付いて行くと、心に決めていた。決して若様を裏切らん」
「そうか、ならば死んで貰う」
皇鳳軍の最後の突撃に、立ち向かった30名の兵士と韓栄と黄山は死した。
その直後に、国王の元に伝令兵が到着。
「申し上げます!こちらに中央軍の本隊と別働隊が進軍して参ります」
「よし、一旦本陣に戻り体勢を整える」
熊山将軍が率いる本隊、剣吾が率いる別働隊は、1時間遅く到着。
着いた頃には、既に勝敗が決した後であった。
「敵の死傷者を数え、我に報告せよ」
「はっ、承知致しました」
剣吾の命を受けた兵は、早速敵の死傷者を数え始める。
「若様、こちらへ来て下さい!」
賢太郎の場所へと剣吾は向かう。
そこには、韓栄と黄山が倒れていた。若を含む賢太郎、左衛門、首領、副将軍は、その場で泣き崩れる。
剣吾は直ぐに自身の兵舎へと呼び寄せ、彼に報告をさせた。
「若様、奴らを撃退しましょう!」
「この本陣を囮に敵をおびき寄せ、陣の外から火矢を放ち、焼き殺そ!」
「若様、私は賛成でございます!」
「よし、皆の者。早速、準備致せ!」
本陣には兵が休んでいるように見せる為に、兵舎の明かりは付けた儘にした。
待ち伏せしているとも知らない2人の将軍が本陣近くまでやって来る。戦の経験が豊富な彼らであったが、慎重に行動を取るよりも先に手柄を取る考えになっていた。
「このまま一気に本陣を攻め落とすか?」
「俺は賛成だ!」
「全軍、逆賊共を討ち取れ!」
鬨の声を上げながら、3千ばかりの兵は一気に本陣へと攻め寄せる。だが、1人も抵抗する者が出て来なかった。
不審に思った将軍達は、直ぐに撤退の命を下し、すぐさま引き返そうとしたが、四方八方から火矢が飛んで来る。
一気に兵舎を燃え広がり、地面に溢れていた油にも火が付き始め、皇鳳軍の多くが焼き死んでいく。
「あの旗は、剣十郎の旗ではないのか?」
「確かに、そうだ!相当手強い相手だが、奴を仕留めれば報酬は沢山貰えるかも知れないぞ!」
「それも、そうだ.......!皆の者、剣十郎の首を狙え!」
皇鳳軍は、全軍で剣吾の首を狙いに行く。異変にいち早く気付いた韓栄、黄山は協力し、迫り来る兵を次々と撃破していく。
将軍は血路を開いた事により、撤退の道が開く。兵達は必死で無事に城に戻れるように、次々と身代わりになる。
「絶対に逃すな、将軍を捕らえろ」
その頃、都城では王が突如として居なくなった事が知れ渡る。王妃や側室、大臣や将軍は大慌て。
夜に消えたという事もあり、まだ民には知れ渡っていないのが唯一の救いであった。王宮へと臣下が一斉に押し寄せる。
「宦官、王様は何処におられる?」
「それは、私からの口では言えませぬ」
「なんだと!?国の一大事なのだ」
「ですから、私からの口では言えませぬ!」
「辞めろ、宰相。王様の命令であろう」
臣下達は、民に知れ渡らないように策を講じる事に焦り出す。
その頃、戦場では剣吾や賢太郎の指示を無視して、韓栄と黄山は3千の軍勢を率いて、追撃をしていた。
「黄山、今回は俺が手柄を取る」
「いいや、今回も俺が取る!」
「俺が取るから、お前は手出しはするな!これが良い名案というものだ!」
「俺が手柄を取った方が、良い名案だし名案だと言う事だ」
「ならば、討ち取った将軍の首が多い者が勝利だ。それで解決でよかろう!」
「あぁ、そうだな!」
韓栄と黄山は自分の欲の為に、追撃を続けていた。だが、左右を見ると断崖絶壁の峠が広がっている場所へと辿り着く。
敵を追撃するのを辞め、周囲を警戒するように兵達に指示を出す。
「これは、伏兵が居てるかもな」
「あぁ、その可能性は高い!だが、伏兵が居たとしても、敵を殲滅出来れば褒美は絶対に高いぞ」
「それも、そうだな!」
韓栄と黄山は峠を駆け抜け、敵の後方に回る策を取る。
だが、予測した通り敵は兵を伏せていたのであった。次々と殺られる兵士達。
絶対絶命の韓栄と黄山。追撃失敗ともなれば、処罰は免れない。彼らは、剣吾の命令を無視し、追撃していた。
「韓栄、味方が殺られていく。どうするか考えねば」
「この峠を抜ければ勝ちだ!」
「だが、この先に敵が待ち構えていれば、挟み撃ちになってしまう。そうなれば終わりだ」
「その時は、武士らしく戦って死ぬ!俺は死など恐れない!!!」
「フンっ、流石だな!俺も腹を括るしかないな!」
「それでこそ、黄山だ!」
彼らは決死の覚悟で峠を抜いたが、この時付いてきた兵力は、僅か800人余りであった。
前方には約5千余りの兵力が塞いでいる。この大軍を率いるのは、皇鳳国の国王自らである。敵の大将を知った韓栄と黄山は、最後の戦と心に決め、全軍で突撃を仕掛ける。
「全軍我に続け!必ずや敵将の首を討ち取り、勝利へ導くのだ」
一気に軍の士気が高まり、次々と敵兵を倒していく。韓栄と黄山も斬り伏せて行き、敵将の待つ本陣を目指す。
だが、いくら士気が高まっているとはいえ多勢に無勢。味方も殺られていく。
「お前ら、ここで我々が多くの敵兵を倒せば、殿が天下を取りやすくなる!我らの死は、無駄死にではないぞ!」
韓栄の言葉に、味方の士気は数段と高まり、勢いも増す。
敵の戦略により、後方を攻められてしまう。逃げ場を失った韓栄達ではあったが、隊列は乱さず敵将の首だけを狙う。
「敵ながら、あっぱれだ!あの敵将2人を狙い撃て!」
皇鳳国の国王の命により、弓部隊は一斉射撃を開始。数100本の矢が、中央軍に襲い掛かり、ほぼ全滅になる。
兵士は30名近くまで減っており、既に皇鳳軍に包囲されていた。
「お主2人には才能がある。高3鳳軍に降伏すれば、副将軍に任命するぞ!どうだ?悪くない話だと思うが」
「俺は若様に付いて行くと、心に決めていた。決して若様を裏切らん」
「そうか、ならば死んで貰う」
皇鳳軍の最後の突撃に、立ち向かった30名の兵士と韓栄と黄山は死した。
その直後に、国王の元に伝令兵が到着。
「申し上げます!こちらに中央軍の本隊と別働隊が進軍して参ります」
「よし、一旦本陣に戻り体勢を整える」
熊山将軍が率いる本隊、剣吾が率いる別働隊は、1時間遅く到着。
着いた頃には、既に勝敗が決した後であった。
「敵の死傷者を数え、我に報告せよ」
「はっ、承知致しました」
剣吾の命を受けた兵は、早速敵の死傷者を数え始める。
「若様、こちらへ来て下さい!」
賢太郎の場所へと剣吾は向かう。
そこには、韓栄と黄山が倒れていた。若を含む賢太郎、左衛門、首領、副将軍は、その場で泣き崩れる。
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