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第三章
門出
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「ありがとうございました」
サトは店を出て行くハンターを出口まで見送った。
ロンメル商店から独立して約1ヵ月が経ち、ようやく店に新規の客がやって来るようになっていた。
ブロディア王国の公都ハメルンの目抜き通り沿い、大店の商店が立ち並ぶ中にサトは小さな店を構えた。
隣は3階建ての公都で一、二を争う大商会であり、商売が成り立たないと誰にも使われなかった小さな店をサトは購入してのである。
理由は治安だ。
大商会の反対側は衛士隊の詰所となっており、常時衛士が詰めているので、これ以上ないくらいに防犯面が優れているのだ。
それに異世界人である《迷い人》のサトは目立つ事を避ける必要もあり、大きな商いは必要なく、日々の生活ができる程度の細々とした商売が出来ればそれで良かった。
店を開いた当初は大商会の陰に埋もれて誰も来なかったが、ロンメル商店からの馴染み客がたまに来てくれており、それを見た客が隣に来たついでに寄る程度には客が入っていた。
しかし、大半は暇な一日を過ごす事になり、結果として来た客を出口まで見送るくらいの余裕があるのである。
「まぁ、こんなもんだろ。最初から客なんて来るもんじゃないしな。さて、さっき買い取った品を改めて見直すか」
サトはカウンターに置かれた先の客から買い取った剣を見た。
すると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
鋼のロングソード(中古)
良質な鋼で出来たロングソード。
相場 15000ルーク。
《鑑定能力》
異世界転移した際にサトが得た能力で、一国の王に召し抱えられる事も出来る程の希少な能力。
それ故に権力闘争に巻き込まれる可能性もあるので、サトはその能力を知られないように隠していた。
「鋼のロングソードか。初心者には扱いが難しいけど、中堅くらいのハンターなら代替え武器として買ってくれるだろう。買取は9000で、相場が15000だから売値は……14000にしとくか。中古品みたいだしね」
そう言いながら値札を付けてロングソードを武具の置いてある棚に並べた。
ちなみにサトの店には他の店と変わった商品は特に置いていない。
剣や槍などの武器や鎧や兜などの防具、それに回復薬や毒消し薬などの薬関係が置いてあり、あとはハンターから買い取った物で売れそうな物を売っているだけだった。
どこかに商品を発注したり、取引で仕入れたりはせずに、ハンター達からの仕入れがメインで、時々市が開かれればそこで仕入れる程度だ。
それには理由があった。
サトは店を出て行くハンターを出口まで見送った。
ロンメル商店から独立して約1ヵ月が経ち、ようやく店に新規の客がやって来るようになっていた。
ブロディア王国の公都ハメルンの目抜き通り沿い、大店の商店が立ち並ぶ中にサトは小さな店を構えた。
隣は3階建ての公都で一、二を争う大商会であり、商売が成り立たないと誰にも使われなかった小さな店をサトは購入してのである。
理由は治安だ。
大商会の反対側は衛士隊の詰所となっており、常時衛士が詰めているので、これ以上ないくらいに防犯面が優れているのだ。
それに異世界人である《迷い人》のサトは目立つ事を避ける必要もあり、大きな商いは必要なく、日々の生活ができる程度の細々とした商売が出来ればそれで良かった。
店を開いた当初は大商会の陰に埋もれて誰も来なかったが、ロンメル商店からの馴染み客がたまに来てくれており、それを見た客が隣に来たついでに寄る程度には客が入っていた。
しかし、大半は暇な一日を過ごす事になり、結果として来た客を出口まで見送るくらいの余裕があるのである。
「まぁ、こんなもんだろ。最初から客なんて来るもんじゃないしな。さて、さっき買い取った品を改めて見直すか」
サトはカウンターに置かれた先の客から買い取った剣を見た。
すると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
鋼のロングソード(中古)
良質な鋼で出来たロングソード。
相場 15000ルーク。
《鑑定能力》
異世界転移した際にサトが得た能力で、一国の王に召し抱えられる事も出来る程の希少な能力。
それ故に権力闘争に巻き込まれる可能性もあるので、サトはその能力を知られないように隠していた。
「鋼のロングソードか。初心者には扱いが難しいけど、中堅くらいのハンターなら代替え武器として買ってくれるだろう。買取は9000で、相場が15000だから売値は……14000にしとくか。中古品みたいだしね」
そう言いながら値札を付けてロングソードを武具の置いてある棚に並べた。
ちなみにサトの店には他の店と変わった商品は特に置いていない。
剣や槍などの武器や鎧や兜などの防具、それに回復薬や毒消し薬などの薬関係が置いてあり、あとはハンターから買い取った物で売れそうな物を売っているだけだった。
どこかに商品を発注したり、取引で仕入れたりはせずに、ハンター達からの仕入れがメインで、時々市が開かれればそこで仕入れる程度だ。
それには理由があった。
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