鑑定能力で恩を返す

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第一章

妙案

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 使用人の恋愛禁止。
 雇用主が使用人達にそう言いつけるのも珍しいことではなかった。
 恋愛に集中するあまり仕事を蔑ろにしたり、相手の男の口車に乗って犯罪まがいの事をする可能性があるからである。
 そして使用人の不始末は雇用主の不始末であり、身分によっては社会的な地位を揺るがす致命傷にもなりかねない。
 よって雇用主達はメイド達使用人が恋愛する事を好ましく思っていないことが多く、恋愛について色々と介入してくる事が多々あった。

「だ、大丈夫にゃ! 御、御主人様は許してくれる……よね?」

「むぅ……」

 ミネルバァは難しい顔をしながら腕を組み、考え込んだ。

「サトの言う通り、簡単にはいかんだろうな」

「そ、そんにゃ! 何でですかっ!?」

「お前は私のなんだ?」

「にゃ? 私は御主人様のメイドにゃ?」

「そうだ。しかし、ただのメイドではない。私の護衛を兼ねた戦闘メイドだ。実際、お前の力に幾度か命を救われた事もある」

「それが、何か問題なのかにゃ?」

 アメリアはミネルバァの言わんとしている事がわからず、人差し指を顎に当てて首を傾げた。

「これだから駄猫は。いいですか? 貴女はアルヴォード女伯爵家の護衛を兼ねた戦闘メイドなんですよ? 仮とは言え、貴女が婚約したなんて噂が流れたらどうなります?」

 しばらく首を傾げたままだったアメリアの表情が徐々に険しいものへと変わっていった。

「チッ! そういうことか……」

「わかったようですね。サト様が狙わられる危険があるんですよ。仮とはいえ貴女の婚約者であるサト様を拉致なり、監禁なりして貴女を脅し、ミネルバァ様、引いてはアルヴォード伯爵家の弱みを掴めば伯爵家を意のままに操れますからね」

「当主が代替わりしたばかりで不安定の我が家は瑣末な噂が一つでも崩壊の危険がある。その危険がある以上、この作戦は不可だ」

 エレンとミネルバァの説得にアメリアは表情を歪ませたが、やがて諦めたように息を吐いた。

「……はぁ! 仕方ないにゃ。旦那様を危険に晒すわけにはいかなにゃいしね。
折角、この機会にそのまま既成事実まで作っちゃおうと思ったのになぁ……」

「駄猫の浅知恵ですね。それより、どうしますか? このままではサト様とオリーヴィア様の結婚が……」

 顔を青褪めさせるエレンとアメリア、そこにこれまで発言しなかったサトが口を開いた。

「あの……つまり、俺に婚約者がいればいいってことなの?」

「ああ。ただし、身元が不確かな者や、出会って間もない者は駄目だ。婚約自体が嘘だとわかれば、マイヤーハイム家に対する侮辱ととられるからな」

「ですが、そんな相手は急には見つかりませんよ」

「困ったにゃ……やっぱり私がメイドを辞めて……」

「なら大丈夫。アテがあります」

「「「えっ!?」」」

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