鑑定能力で恩を返す

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第一章

再鑑定

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 前に立ちはだかったロンメルをミネルバァとアメリアが睨む。
 
「ロンメル。どういうつもりだ? 私達は先を急ぐのだ」

「邪魔は許さないにゃ。1日に2人も老人を殺めるのは気が咎めるから退いてほしいにゃあ?」

「そのような死の気配を纏われたままでは御通しするとこは出来ません。何卒、お鎮まりくださいませ」

 殺気立つ2人を前にしても、ロンメルはいつもと変わらぬ様子だった。
 対峙する両者を前に、サトは慌ててロンメルに声をかけた。
 
「ロ、ロンメルさん。な、何をしてるんですか!? そんな事をしたら……」

「サト、この2人は殺気を放っておる。そして、それがわからぬカミル様ではない。このまま屋敷に戻って、お会いになれば屋敷内の私兵達と殺し合いになりかねんのじゃ。カミル様は道理に合わぬことを決して許さんからな」

「なんだ? お前は義祖父様おじいさまを知っているのか? 確かに義祖父様おじいさまは清廉潔白、信賞必罰が信条の高潔な方だ。だが、お前も聞いておっただろう? サトの鑑定を」

「まったくにゃ! 清廉潔白が聞いて呆れるにゃ! この上は信賞必罰の通りにあの爺いに罰を与えてやるにゃ!」

「しかし、あの方に限ってそのような卑劣な真似をなさるとは、儂には到底思えません! それに『真価を見せよ』と言った言葉をお忘れか? 判断を誤ってはなりません!」

 ロンメルの言葉にミネルバァは閉眼し、アメリアは激しく吠えた。

「しつこいにゃ! そんなに好きなら先にあの世に行って、前伯爵が来るのを待ってればいいにゃ!」

「メイドさんや、そのように熱くなった頭では、この老いぼれにすら足元を掬われかねませんぞ?」

「面白いにゃ。なら、試してみるにゃ!」

 両者の言い分がぶつかり合い、アメリアが我慢の限界を迎えようとした時だった。
 ミネルバァはカウンターの前の椅子に座り直し、先の水晶玉を再びカウンターに置いた。
 アメリアも苦虫を噛み潰したような顔で、ミネルバァの背後に戻った。

「サト。お前の主人は随分と強情なようだ。本来なら不敬罪で処罰してもよいのだが、先の無礼もある。だが、このままでは私の腹の虫が収まらない。そこで、お前に判断を委ねようと思う」

「お、俺に……ですか?」

「ああ、お前の判断であればロンメルも納得するだろう。お前はどう考える? 義祖父様おじいさまは私を害しようとしたと思うか?」

「サト、カミル様……前伯爵様は清廉潔白な方じゃ。こんな卑劣な真似は絶対にせん。きっと何か意図があるはずじゃ」

「そんなものないにゃ! きっと、ボケて性格が一転しちゃったんにゃ! この上はやられたらやり返すだけにゃ!」

「……えっ?」

 2人の会話を聞いて、サトは違和感を感じた。
 そして、改めて水晶玉をじっくり見る。
 すると、サトの脳裏に言葉が浮かんできた。
 
「……そうか。そういう事かっ!」
 
 
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