鑑定能力で恩を返す

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第一章

騒げ!

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 歌う花嫁亭にはいつもの喧騒が戻っていた。
 ジョッキを酌み交わす音や気分の上がった者による咆哮などがそこかしこ中から響いていた。
 中でも一番けたたましかったのはサトのテーブルである。
 先の男が店を出て行ってから、サトの元にハンター達が押し寄せていた。

「兄さん! さっきの鑑定は見事だったぜ! 一杯奢らせてくれや!」

「お、俺の剣は本物だよな!? こいつは貯金して最近買ったばかりなんだ! 鑑定料払うから鑑定してくれ!」

「割り込むんじゃねえよ! 兄さん、俺の斧なんだけど、最近何かおかしいんだよ、ちょっと見てくれねぇか?」

 ハンターにとって武器は命を預ける大切な物だ。
 それが紛い物だったとすれば命が幾つあっても足りない。
 先のサトの鑑定を見たハンター達がこぞって自らの武器を見てもらいたくなるのも無理のない事だった。

「……このハルバードちゃんと手入れしてますか? ここに罅が入ってますよ」

 サトは渡されたハルバードの柄舌部分を指差して男に見せた。

「げっ! マジかよ! こんな所に……な、なぁ? これって修理で大丈夫か?」

「柄との接合部分ですよ? 修理しても結局は同じことの繰り返し。買い直しを勧めますけど」

「うっ……やっぱりか。はぁ、こりゃ、また痛い出費だぜ……」

「文句言うな! 戦いの最中に折れるよりマシだろ! それより終わったんなら退け! 次は俺だ!」

 ハルバードの男を強引に退かすと次の男がサトの前に立ち、ロングソードを渡した。

「頼むぜ……こいつは金貨50枚もしたんだからな……」
 
「これは……普通ですね。まぁ、50枚なら妥当ですよ。素材は鋼ですし、造りはしっかりしてます。今のところ目立った傷もないですね」

 祈るように結果を待っていた男は安堵の表情を浮かべた。

「はぁ~、安心したぜ。あんがとよ。ところでよ、さっきの出て行った奴の剣は何でメッキだってわかったんだ? 鞘に入ったままだったろ?」

 周りで呑んでいた者達もそこには興味があるようで、耳を傾けた。

「ああ、あれは剣帯が伸びてたから石の剣でも持ってるのかと思ったけど、石じゃ斬れないからね。何らかのコーティングがしてあると思っただけ。まさか、ミスリルのメッキとは思わなかったけど」

 サトの説明に皆が感嘆の息を漏らした。
 
「いやいや、恐れ入ったよ。気に入ったぜ! お前、ロンメル爺さんの店の者だろ? 今後世話になるからよろしく頼むぜ!」

「俺もだ! これだけの鑑定士はなかなかいないからな」

「俺も!」

 いつの間にかサトの周りにはハンター達が集まり、そこで盛大な酒盛りが行われていた。
 その場をずっと静観していたロンメルは微笑みを浮かべながら酒を呷った。

「こんなに直ぐに馴染むとはのぅ。良かったな、サト」

 宴は閉店まで続き、その頃にはサトは泥酔しており、クロエの父親に担がれて部屋に寝かされたのだった。

 

 

 
 
 

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