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第三章

ミノタウロスとバードマン①

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「はい。今日の報酬と買取金です」

 ミューさんから銀貨数枚が載ったトレーを受け取る。
 ああ、この何気ない一コマが俺のスローライフが帰ってきたことを実感させてくれる。
 やっぱり俺の日常はこうじゃないとね!
 
「ありがとう。じゃあ、また」

「はい! またお願いします」

 さて、仕事も終わったし、これから何をしようかな?
 そうだ! 市に行こう!
 そろそろ揺刃草が切れそうだし、また何か珍しい海産物もあるかもしれないしね。
 俺はギルドを出た足で市に向かった。
 特に珍しい物は無かったけど、新鮮な海産物や目当ての揺刃草は手に入った。
 少し残念だったけど、毎回毎回珍しい物があるわけ無いので仕方ない。
 そう思って、家路に着くと珍しい二人組が大通りにいた。
 あれはオルテガとハウデルか?
 ギルドマスターと衛兵隊長が揃っているとは、絶対に揉め事だ。
 近寄りたく無い。
 ここは迂回する選択しかない……

「おい。何処へ行く?」

「おわぁ! ハ、ハウデル!? い、いつの間に俺の背後に立ったんだよ! び、びっくりしたぁ」

 視線の先にいたハウデルが背後から声をかけてきたので、俺の心臓は跳ね上がらんばかりに弾けた。
 俺が心臓弱い人だったら死んでるぞ?

「視界に入った途端に踵を返すからだ。仕事上、怪しい動きをする奴は見過ごせん」

「べ、別に怪しくないだろ!? たまたま用事を思い出して……」

「下手な言い訳をする所がますます怪しい。これは詰所に連れて行くべきか?」

 おお、マジな目つきだ。
 ったく、これだから仕事一筋の頑固者は困るんだよ。
 まぁ、衛兵隊長が仕事一筋なのはいい事なんだけどね。

「こらこら。ウチの貴重な採取系冒険者に八つ当たりするんじゃない」

 そう言ってノシノシやって来たのは立派な体格とバトルアックスを持ったオルテガだ。
 相変わらず、なんて威圧感だ。
 こんなのが寄って来たら何もしてなくても逃げる奴いるだろ?
 それにしても気になる事言ってたな。

「八つ当たりって何……」

「お前には関係ない」

 俺の質問に被せるように素っ気なく答えたハウデルが視線を外した。
 まるで知られたくない事でもあるみたいじゃないか。
 これは何かあるぞ。

「いや、あるだろ。俺は八つ当たりを受けた側なんだぞ? 理由くらい聞く権利はあるはずだ」

「別に当たってないし、聞く必要もない。もういいから、さっさと行け」

「待て。ハウデル」

 俺を帰そうとするハウデルをオルテガが止めた。
 な~んかこっちをチラチラと見てるのが嫌な予感しかしない。
 しまった。
 好奇心に負けずにさっさと帰っておけば良かった。

「お互い知らない仲じゃないんだ。ここはこいつも交えて話をしようじゃないか」

「他人に俺の恥を晒せと言うのか? オルテガ」

「俺だって他人だ。それにリョウはちょっと変わった感性を持っている。俺達が思いつかない案が見つかるかもしれないぞ?」

「むっ、しかし……」

 ハウデルが訝しげな視線を俺に送ってくる。
 いや、怪しむんなら解放してくれればいい。
 別に俺はどうしても知りたいわけじゃ……

「女絡みの悩みだ。色んな意見があった方がお前もいいだろ?」

 すんげぇ聴きたくなったわ。
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