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第一章

閑話 神々の会合

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 うーん、今日もなかなか面白いものが見れた。
 まさか、あんなお人好しの人間がいるなんてね。
 異世界の神も面白い人間を作るもんだ。
 今度、お茶にでも誘ってみようかな?

「おかえりなさいませ、大神様」

 神界に帰って早々、現れた知識神。
 また小言を言いそうな、難しい顔をしているね。
 あんな顔でいつも楽しいのかな?

「やぁ、知識神。ただいま」

「お帰り早々に申し訳ありませんが、まもなく会合が始まります」

「わかった。じゃあ、一緒に行こうか?」

「いえ、私は先に行って準備をしておきます。では、後ほど」

 それだけ言うと、知識神はシュンと消えてしまった。
 つれないなぁ。
 僕達の会合に準備が必要な事なんてないだろうに、照れ屋さんにも困ったもんだ。
 
「さて、じゃあ僕も行こうっと」

 瞬間移動で会合の席に着くと、そこには既に他の六神が揃っていた。
 知識神、戦神、博愛神、大地神、生命神と、いつもと変わらない面々で面白味に欠けるなぁ。

「よぉ、大神様。下界はどうだった?」

「いつも通り楽しかったよ、戦神。君も行きたくなったら行ったらいい。ただし、前みたいに人間の戦争に参加するのは無しだよ」

 豪快な戦神は数百年前に大国といわれた国同士の戦争に参加して、両国を滅ぼしてしまった事がある。
 それ自体は特に問題ないんだけど、その後処理が大変だったんだよね。

「それだけは本当に御免被りたいわね。私の可愛い大地ちゃんがどれだけ傷んだことか!」

「大地神、それについては謝っただろう?  もう昔の事なんだから忘れろよ」

「忘れるわけないでしょ! あれのせいで、どれだけ大地が疲弊したか、お手入れにどれだけ時間と労力がかかったと思ってるのよ! 本当に失礼しちゃうわ!」

 大地神の過保護がまた始まったようだね。
 大地も惰弱じゃないんだから、自然に任せていいと思うんだけどなぁ。
 まぁ、管理上の責任者は彼女だからどうしようと勝手なんだけどね。

「戦神、大地神。今、話し合うべきはそんな話ではないでしょう。今日は話し合うべき事があるんだから、そこまでになさい」

「そうだな。さっさと話を進めようぜ。それで、どうなんだ? 博愛神」

「ど、どうもないですよ。このままいけば、何の進展もなくただ終わるだけです」

 博愛神の言葉に皆の顔が一気に引き締まる。
 うーん、やっぱりこのままってのは良くないね。

「マジかよ。本当にどうしようもないな。おい、知識神。良い策はないのかよ?」

「今のところはない。根本的な解決には、先ずは改革が必要だ」

「ちょっと、マズいじゃない! ねぇ、生命神なら何とかならない?」

「……無理だ。俺は邂逅しない限り、手を出す事はできない」

 むむむっ、頼みの綱の知識神、生命神もお手上げとは困った。
 まさか、ここまで八方塞がりとは思わなかった。
 
「こうなっては致し方ありません。不本意ではありますが、以前に出た策として、誰か一人を尖兵として送り出すのか最良かと」

「知識神の言うとおりだな。俺はそれで良いと思うぜ」

「私も」

「そうしましょう」

「……異議なし」

「じゃあ、誰が適任だと思う?」

 僕の言葉に皆の目つきが変わった。
 やっぱり皆、譲る気はないようだね。

「じゃあ、前と同じで順番に言っていってくれ。ただし、理由と論争は後でね」

「知識神。狼獣人のミュー」

「戦神。エルフのヴァイオレット・ローレル」

「博愛神。狐獣人のリーディア」

「大地神。ダークエルフのシエンナ・アヴァロニア」

「……生命神。巨人族のゼルマ」

 各々が自分が最良と思える者達の名前を挙げたが、やっぱり変わってない。

「テメェら! どこに目をつけてやがる! あのエルフが一番リョウに相応しいに決まってるだろうが!」

「それはアナタの主観でしょ!? 絶対にあのダークエルフの方が、薬屋ってところからして素材採取をしているリョウと生活が合うわよ!」

「待ちなさい。一番長く付き合いがある方が適任。ならば、ほぼ毎日会っている狼獣人が一番良いです」

「い、いいえ……愛があってもお金がなければ生活できないのが下界なんです。なら、経済的に一番安定している方が……」

「……博愛が金を語るか。やはり、生命を育むには生命力が重要。故に巨人族に勝るものは無い」

「サイズ合ってねぇだろ! 愛を育む前にリョウが圧死するぞ!」

「それだったらエルフは人間と寿命が合いませんわ! 取り残される方の身にもなってくださいませ!」

「それならダークエルフも同じでしょう」

「だ、だったらやっぱり獣人の方が寿命も合いますし、人間はケモ耳好きって言いますから」

「……外見などすぐに飽きる」

 はぁ、また始まったよ。
 もういい加減に決めてくれないかなぁ。
 リョウのお嫁さん候補。
 リョウは元いた世界の経験から、どうしても恋愛に奥手というか鈍感になってしまっている。
 そこで、彼の周りで好意を持つ者を選んで、神の加護を与えて猛アタックさせようって思ったんだけど、前の会合の時に誰がいいかと軽い気持ちで聞いたら、今みたいな喧々轟々の言い合いになってしまったんだ。
 まさか、全員の意見が食い違うなんて思わなかったよ。
 絶対、面白がってる。
 
「なぁ、大神様! 貴方はどう思うんだよ!?」

「僕? そうだなぁ。あのカイって子はどう? 結構、積極的で良かったんじゃない?」

「あの者は同性ですわ!」

「大神様、下界の者は異性と付き合う事が多いかと」

「そう? 別に愛があれば性別なんてどうでも良いんじゃない? ねぇ、博愛神」

「うえっ!? わ、わた、私はその……あの……た、大神様の言うとおりかと……」

「……狼狽えるな、愚か者」

 結局、この日も結論は出ないまま会議は持ち越しとなった。
 一体いつになったら嫁候補が決まって、リョウに神の祝福を授ける事が出来るようになるのやら。
 まぁ、いいか。
 まだまだ候補も増えるだろうし、焦らず、ゆっくり決めるとするか。
 さっき彼に与えた【神力】で、彼とは長い付き合いになるからね。
 これからもよろしくね、リョウ。
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