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二章 ウィダー王国編
賠償金
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「これこれ、お嬢もそっちの小娘も急くでない。この者はスパイではない。おそらくじゃが、捨てられたクチじゃろ?」
「えっ? な、なんでそれを?」
「転生者は初めてでは無いからのぅ。ある程度の情報はわかっおる。差し詰め、あの愚豚王がお主の特殊能力を理解できんで放逐された。そんなところじゃろ?」
こ、このばあさん、一体どこまで見えてるんだ? もはや雰囲気も相まって、魔女にしか見えん。
「その反応はズバリだったみたいだねぇ。お嬢もいい加減に剣を納めたらどうじゃ? この男は敵ではないぞ」
「ば、ばあやがそう言うのであれば……しかし、事は国に関わる事だ。セイゴ、詳しく話してもらうぞ」
「……わかりました」
辺境伯の冷たい視線とばあさんの怪しい視線とリューネの悲哀な視線が俺の元で交錯する。これは誤魔化しようがない。俺は事の顛末を最初から話す事にした。
全員神妙な面持ちをしていたけど、話が進むにつれて段々と呆れ顔になっていった。まさに茫然自失と言ったところだ。
「やれやれ、愚かだとは思っておったが、ここまで愚かとはのぅ……いや、愚豚王の名に恥じぬ所業と言った方がいいのか?」
「ただの馬鹿だ。王である資格もない。こんな馬鹿が治める国と戦わねばならんとは……」
「セイゴ……お前、苦労したんだな」
今度はみんなが哀れんだ眼で俺を見る。やめて、余計に悲しくなっちゃうから。
「しかし、セイゴが放逐されたのは不幸中の幸いじゃな。セイゴの特殊能力は話を聞く限りではかなり応用が効きそうじゃからのぅ。敵に回すと厄介じゃ」
「どういう意味ですか?」
「四字熟語、と言ったか? お主の国の独特な言葉の表現のようじゃが、お主の特殊能力は、お主の推察通りその言葉の意味を体現できるものと考えられる。つまり、使い方次第ではどんな効力であっても使える力というわけじゃ」
俺もそれは何となくわかっている。実際、【一騎当千】は一人で千人に相当する強者って意味だから、おそらく筋力上昇効果で、【電光石火】は行動が非常に速いって意味で敏捷性上昇になっているはずだ。でも、弱点もある。
「そこまで便利でもないんです。実は重ねて使用すると身体にかかる負担が大きくて、リューネと戦った時は4つも使ったからか2日間もぶっ倒れたんですから」
「強大な力にはそれ相応の負担があるもんじゃよ。それに気力は生命力を根源とする力じゃ。気力が足りねば生命力で補う事になる。下手をすれば死に至る事もあるじゃろう。その時のお主のレベルでは4つは危険だったという事じゃな」
「レベル? レベルが関係するんですか?」
「そうじゃ。お主がぶっ倒れたのは気力が足りないのに無理に特殊能力を発動させたから、その足りない分を生命力で補ったからじゃよ。じゃが、レベルが上がれば生命力も上がり、それに伴って気力も上がる。レベルが上がっていけば同時に使える数も増えていくじゃろう」
そういう事か。前は2つ使っただけでも辛かったのに今日大丈夫だったのは、前よりレベルが上がっていたからか。そういや、俺って今はどれくらいなんだろ? 【鑑定】してみるか。
セイゴ・シノアザ 30歳 男 人間種
レベル10
HP (体力) 120
MP (魔力) 75
STR(筋力) 100
AGI (敏捷) 90
DEX(器用) 110
TEC(技量) 75
INT(知力) 100
RINT(抵抗力) 90
LUC(幸運) 80
特殊能力 四字熟語
能力 鑑定
おおおっ! レベル10まで上がってるぞ! なるほど、これのおかげで3つ使っても負担が少なかったのか!
「どうやら仰る通りみたいですね」
「ちなみにお主は能力と特殊能力の違いは知っておるか?」
「うっ……知らないです」
「やれやれ……お嬢は知っておるか?」
「当たり前だ! 能力とは研鑽を積む事によって得られる力で、特殊能力は生まれながらにして持っている力だ。こんな事、子どもでも知っているぞ!」
ぐはっ! 浅学菲才、自分の無知が恥ずかしい。
「まぁ、お主はこの世界に来たばかりじゃし、これから学べばよい。そうじゃ、特別に儂が教えてやってよいぞ? ただし、代わりにお主の身体の研究を……」
「やめろ! ばあや! これ以上、我が家の恥を晒すな!」
「セイゴに近づくな!」
マリエール辺境伯とリューネが間に入って、必死になってばあちゃんを止めてくれたけど、あんなの冗談なんだからそこまで本気にならなくてもいいのに。
「ふぇふぇふぇふぇ。どうやら、お主はよくモテるようじゃのぅ。ああ、そうじゃ。さっきの副長の事は勘弁してやってくれ。あれは勝負ではなく、稽古じゃからのぅ」
勘弁? ああ、そういやウィダーの女は男に負けたらその男に尽くすって掟があったっけ。俺としてもあの人がずっと側にいるのは困惑するから勘弁してほしい。
「そういう事にしておきましょう」
「すまんのぅ。しかし、掟がある以上、何も無しでは済まされん。故に奴には賠償金を支払わせるでな。じゃが、流石にあやつが一括で払うのは無理じゃから、とりあえずは主人であるお嬢が肩代わりして払うからのぅ」
賠償金か。自分が払う立場の時は嫌な言葉だけど、貰う立場ならそれ程嫌な言葉でもないな。
「本来であればそれなりの額を用意せねばならんのだが、彼奴は元は平民での。あまりの金額となると、それだけで人生が終わってしまう。その辺りは考慮してやってほしい」
「そうなんですか? じゃあ別に無くても構いませんよ?」
「それは駄目じゃ。尽くさず金も払わずではウィダーの女の名折れ。そうじゃな……やつの給金の一年分、ウィダー金貨十枚でどうじゃ?」
ウィダー金貨? そうだった。ここはベロリンじゃないから通貨が変わるんだ。ウィダー金貨一枚って、ベロリン通貨で言えばどれくらいの価値になるんだろ?
「セイゴ、ウィダー金貨の価値はベロリン金貨と同じだ」
ありがとう、リューネ……って!
ベロリン金貨一枚は約十万円だから……それが十枚で……ひゃ、百万円!?
「えっ? な、なんでそれを?」
「転生者は初めてでは無いからのぅ。ある程度の情報はわかっおる。差し詰め、あの愚豚王がお主の特殊能力を理解できんで放逐された。そんなところじゃろ?」
こ、このばあさん、一体どこまで見えてるんだ? もはや雰囲気も相まって、魔女にしか見えん。
「その反応はズバリだったみたいだねぇ。お嬢もいい加減に剣を納めたらどうじゃ? この男は敵ではないぞ」
「ば、ばあやがそう言うのであれば……しかし、事は国に関わる事だ。セイゴ、詳しく話してもらうぞ」
「……わかりました」
辺境伯の冷たい視線とばあさんの怪しい視線とリューネの悲哀な視線が俺の元で交錯する。これは誤魔化しようがない。俺は事の顛末を最初から話す事にした。
全員神妙な面持ちをしていたけど、話が進むにつれて段々と呆れ顔になっていった。まさに茫然自失と言ったところだ。
「やれやれ、愚かだとは思っておったが、ここまで愚かとはのぅ……いや、愚豚王の名に恥じぬ所業と言った方がいいのか?」
「ただの馬鹿だ。王である資格もない。こんな馬鹿が治める国と戦わねばならんとは……」
「セイゴ……お前、苦労したんだな」
今度はみんなが哀れんだ眼で俺を見る。やめて、余計に悲しくなっちゃうから。
「しかし、セイゴが放逐されたのは不幸中の幸いじゃな。セイゴの特殊能力は話を聞く限りではかなり応用が効きそうじゃからのぅ。敵に回すと厄介じゃ」
「どういう意味ですか?」
「四字熟語、と言ったか? お主の国の独特な言葉の表現のようじゃが、お主の特殊能力は、お主の推察通りその言葉の意味を体現できるものと考えられる。つまり、使い方次第ではどんな効力であっても使える力というわけじゃ」
俺もそれは何となくわかっている。実際、【一騎当千】は一人で千人に相当する強者って意味だから、おそらく筋力上昇効果で、【電光石火】は行動が非常に速いって意味で敏捷性上昇になっているはずだ。でも、弱点もある。
「そこまで便利でもないんです。実は重ねて使用すると身体にかかる負担が大きくて、リューネと戦った時は4つも使ったからか2日間もぶっ倒れたんですから」
「強大な力にはそれ相応の負担があるもんじゃよ。それに気力は生命力を根源とする力じゃ。気力が足りねば生命力で補う事になる。下手をすれば死に至る事もあるじゃろう。その時のお主のレベルでは4つは危険だったという事じゃな」
「レベル? レベルが関係するんですか?」
「そうじゃ。お主がぶっ倒れたのは気力が足りないのに無理に特殊能力を発動させたから、その足りない分を生命力で補ったからじゃよ。じゃが、レベルが上がれば生命力も上がり、それに伴って気力も上がる。レベルが上がっていけば同時に使える数も増えていくじゃろう」
そういう事か。前は2つ使っただけでも辛かったのに今日大丈夫だったのは、前よりレベルが上がっていたからか。そういや、俺って今はどれくらいなんだろ? 【鑑定】してみるか。
セイゴ・シノアザ 30歳 男 人間種
レベル10
HP (体力) 120
MP (魔力) 75
STR(筋力) 100
AGI (敏捷) 90
DEX(器用) 110
TEC(技量) 75
INT(知力) 100
RINT(抵抗力) 90
LUC(幸運) 80
特殊能力 四字熟語
能力 鑑定
おおおっ! レベル10まで上がってるぞ! なるほど、これのおかげで3つ使っても負担が少なかったのか!
「どうやら仰る通りみたいですね」
「ちなみにお主は能力と特殊能力の違いは知っておるか?」
「うっ……知らないです」
「やれやれ……お嬢は知っておるか?」
「当たり前だ! 能力とは研鑽を積む事によって得られる力で、特殊能力は生まれながらにして持っている力だ。こんな事、子どもでも知っているぞ!」
ぐはっ! 浅学菲才、自分の無知が恥ずかしい。
「まぁ、お主はこの世界に来たばかりじゃし、これから学べばよい。そうじゃ、特別に儂が教えてやってよいぞ? ただし、代わりにお主の身体の研究を……」
「やめろ! ばあや! これ以上、我が家の恥を晒すな!」
「セイゴに近づくな!」
マリエール辺境伯とリューネが間に入って、必死になってばあちゃんを止めてくれたけど、あんなの冗談なんだからそこまで本気にならなくてもいいのに。
「ふぇふぇふぇふぇ。どうやら、お主はよくモテるようじゃのぅ。ああ、そうじゃ。さっきの副長の事は勘弁してやってくれ。あれは勝負ではなく、稽古じゃからのぅ」
勘弁? ああ、そういやウィダーの女は男に負けたらその男に尽くすって掟があったっけ。俺としてもあの人がずっと側にいるのは困惑するから勘弁してほしい。
「そういう事にしておきましょう」
「すまんのぅ。しかし、掟がある以上、何も無しでは済まされん。故に奴には賠償金を支払わせるでな。じゃが、流石にあやつが一括で払うのは無理じゃから、とりあえずは主人であるお嬢が肩代わりして払うからのぅ」
賠償金か。自分が払う立場の時は嫌な言葉だけど、貰う立場ならそれ程嫌な言葉でもないな。
「本来であればそれなりの額を用意せねばならんのだが、彼奴は元は平民での。あまりの金額となると、それだけで人生が終わってしまう。その辺りは考慮してやってほしい」
「そうなんですか? じゃあ別に無くても構いませんよ?」
「それは駄目じゃ。尽くさず金も払わずではウィダーの女の名折れ。そうじゃな……やつの給金の一年分、ウィダー金貨十枚でどうじゃ?」
ウィダー金貨? そうだった。ここはベロリンじゃないから通貨が変わるんだ。ウィダー金貨一枚って、ベロリン通貨で言えばどれくらいの価値になるんだろ?
「セイゴ、ウィダー金貨の価値はベロリン金貨と同じだ」
ありがとう、リューネ……って!
ベロリン金貨一枚は約十万円だから……それが十枚で……ひゃ、百万円!?
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