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一章 ベロリン王国編

リューネ

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 再起不能のボコボコにされるのも嫌だけど、更にアレをチョンされるのも勘弁してくれ! 想像しただけでも縮こまるわ!

「リューネは20歳で銀級冒険者になった実力者でね。はっきり言って並の冒険者じゃ相手にならないよ。それでもやるのかい?」

 うっ……どうする? でも、このままこの国に留まるのは危険なのは間違いない。捕まったら俺は戦場送りにされ、知らない奴を殺し、知らない奴に殺されるかも知れないんだ。それだけは嫌だ。俺はここに来る前は、ただ生きるだけの毎日を繰り返していて、それが嫌で嫌で仕方なかった。
 もう何かに縛られる人生は嫌だ! だから死に物狂いでもがいてやる!

「やります! どこまでやれるかわからないけど、やってみます!」

「あんた、そうは言うけど……」

「いい覚悟だ!」

 突然、すぐ背後から声をかけられて俺は飛び上がらんばかりに驚いた。い、一体いつからいたんだ?

「リューネ。珍しいね、こんな時間に」

「ちょっとね。それより、私と1対1タイマンはろうなんていい度胸じゃないか」

 値踏みをするように俺の全身を隈なく見るリューネと呼ばれた女性。想像していたより、めっちゃ可愛い! 赤髪のセミロングに大きな瞳、がっちりしていながらも女性らしい身体のラインはとても綺麗で、スタイルもグラビアアイドル級に良い! 仲間にしたくて色んな人が挑戦するのもわかるな。

「あんた、やっぱりやめときな。けしかけといて何だけど、入ったばかりの新人ルーキーが勝てる相手じゃないよ」

「安心しなよ。ドーナさん。私だって可愛い後輩を潰したりしないよ。ただ、ちょん切るけどね。安心して。切ったモノはちゃんと返してあげるから」

 安心できるか! 負けたら……考えるな! 最初から負けをイメージしてたら勝てるものも勝てなくなるぞ!

「迷ってるようだけど、これが最終確認だ。やるのかい? やらないのかい?」

 リューネの大きな瞳でジロリと睨まれる。ちょん切られるのは嫌だけど、ウィダー王国に行かずに、この国にいたら戦場送りにされるだけだ。俺が自由に生きるにはウィダー王国に行く必要がある。
 勝てば切らずに行ける。負けたら切って行ける。それだけの事だ! もう腹を括ったぞ!

「やるさ! どうせ俺には他に道がないんだ。だったら、やるしかない!」

「ちょいと、あんた。別にリューネを……」

「ドーナさんは黙ってて。こいつがやるって言ったんだ。あとはこっちの話だよ」

 ドーナと呼ばれたおばちゃんを制して、リューネは俺の正面に立つ。身長は俺より少し低いが態度の大きさか実力の差か、俺より遥かに大きく見える。
 相碁井目あいごせいもく
 相手は銀級冒険者だ。実力差があって当然、だからこそやれる事は全てやらせてもらうぞ。先ずは情報をとる! 【鑑定】!

 リューネ 20歳 女 人間種
 レベル31 銀級冒険者

 レベル31。実力差はあると思ってたけど、こんなに差があるのか。まともにやったらレベル5の俺が勝てる相手じゃない。
 なら、まともにやらなければいいだけの話だ。

「よし、そうと決まれば裏の空き地でやるよ。心配しなくていい。気絶している間に終わらせてあげるよ」

「そいつは有難い。痛いのは嫌いなんでね」

 挑発をサラッと躱わすと、リューネは少しだけ笑みを浮かべた。挑発に乗ってる場合じゃないんだよ。空き地に行くまでにもっとよく見るんだ。森狼の時にわかったけど、【鑑定】は長く見れば見るほど詳細な情報が出てくる。ならば、しっかり見るのみ!

 リューネ 20歳 女 人間種
 レベル31 銀級冒険者
 HP   (体力)  225 
 MP  (魔力)  180
 STR(筋力)  200
 AGI  (敏捷)  180
 DEX(器用)  90
 TEC(技量)        180
 INT(知力)         120
 RINT(抵抗力)   180
 LUC(幸運)        150
 
 能力スキル 魔法剣 火魔法

 ステータスが出た! 数値的にはまともにやっても絶対に勝てない相手だ。それに能力スキル魔法剣ってのは、ゲームだと魔法を剣に付与出来るってやつだよな? これは気をつけないとヤバいぞ。

「さぁ、ここだ。始める前に確認しておくよ。私が勝ったらあんたのアレをちょん切る。私が負けたらあんたの仲間になって、あんたの面倒をみる。それでいいな?」

 面倒をみる? ああ、そうか。監視したり、生活の世話をするんだからそういう事になるか。

「ああ、それでいい」

「よし。なら、覚悟はいいか? さぁ、新人ルーキー! どっからでもかかって来な!」

 リューネが腰から長剣ロングソードを抜いて、正眼に構える。ぶっつけ本番だ! 何とかなってくれよ!
 
「いくぜ! 【一騎当千いっきとうせんん】!」
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