食うために軍人になりました。

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第八章

みんなで朝食

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 大広間の前に着くと、中から騒がしい声が聞こえて来る。
 やれやれ、ここは相変わらずだな。
 もう諦めたよ。
 ため息混じりに扉を開けると、大柄な男同士が口論しているのが目に入って来る。

「だからよ! 先方は俺に任せろって!」

「そうはいかない。我々が先に出る」

 互いに譲る気のない不毛な口論をしているのは、フェンドラの将軍ガルヴァンと、帝国の英雄コクトー様だ。
 この二人は相性が悪いのか、顔を合わせるといつも口論をしている。

「敵の戦力が不明な時は最大戦力で向かうのが定石だろう! だから俺が出るって言ってるんだよ!」

「誰が最大戦力だ? 卿の実力を疑うわけではないが誇張と慢心は控えた方がいい。それに此処は我々の領土だ。地の利がある我々が出る方が良い」

「半年もいて今更だろ! それと誇張も慢心もしてねぇよ!」

 はぁ、いい加減にしてほしいけど、止めるのも面倒だ。
 他の人達も相手にせずに朝食を摂ってるし、俺もそれに倣うとしよう。

「旦那様。こちらへ」

「ヒルダか。すまないな」

 鉄仮面を被った大柄なメイドが、俺を席に案内してくれる。
 こいつもクラリス同様に働いているのか。

「ヒルダ。適度に休めよ」

「問題ありません。我々の本来の役目は使用人ですので。もちろん、いざとなれば命を賭けて戦います」

「だから、そのために休めと言っているのに。お前達も頑固だな」

「失礼ながら旦那様に似たのかと」

 鉄仮面越しでもニヤッと笑うのがわかった。
 随分と言ってくれるようになったじゃないか。
 まぁ、その方が俺としては良いんだけどね。

「ねぇ、早く朝食にしない? 私、お腹空いてるんだけど」

「失礼しました。ルーストレーム様。すぐにお持ち致します」

 ヒルダが一礼をして退室すると、入れ替わりでクロードが料理を持って入って来た。
 こいつも働いとるな。

「お待たせしました。本日はマフィンと数種類のハム、キドニーのソテー、それにオムレツとほうれん草のキッシュをご用意させていただきました。紅茶はフェンドラの良い茶葉が手に入りましたので、そちらを」

 目の前に食事が運ばれてくる。
 こういう朝食にも慣れたもんだ。
 数年前までは硬いパンと塩だけのスープで、それでも食べられるだけ有難いと思っていたのに。

「うーん、美味しい! クロードは本当に料理が上手いわね! 戦争が終わっても私に食事を作ってほしいわ!」

「お褒めに預かり光栄ですが、私は旦那様以外にお仕えする気はございませんので」

「あら? そんな問題は私がその旦那様の奥方様になればいいだけじゃない?」

 ……朝から恐ろしい事を言うはやめてくれ。
 せっかくの朝食の味がわからなくなる。
 
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