食うために軍人になりました。

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第六章

それぞれの道へ

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「ほ、本当に1年の猶予があるのかっ!?」

 思わず祠に迫ってしまった。
 それも仕方あるまい!
 一年あれば、話も変わってくる!
 
「向こうは猶予を与えてるわけじゃないよ。あくまで自分達の祭りのためなんだから。それに、あいつらは帝国なんていつでも陥せるって思ってるんだよ。君達はナメられてるのさ」

「ナメられている事は腹立たしいが、今はそれでも構わない! 最後まで立っていた者が勝者なのだからな」

「そういう考え方もあるか。でも、一年でなんか変わるの?」

 確かに一年足らずで戦力を大きく増強出来るかはわからない。
 今のままでは、処刑が一年延びただけだからな。

「なぁ、フォルネア。中将達の魔殻を破ることはできないのか?」

「魔殻? リクト、それは何だ!? 何か手があるのか!?」

 藁をも掴む勢いだった。
 もう、今は何でもいい。
 とにかく打つ手が欲しいんだ!

「魔殻っていうのは、強すぎる魔力で身体が傷つかないように、人間が本来持っている魔力を抑える、文字通りの殻ですよ。俺もそれを破ったから、それなりの魔力を得たんです」

「そ、そんなものが……ならば、それを軍人全員が破ればアマナ王国にも……」

「無理だよ。リクトも言ってたけど、傷つかないように抑えるためのものなんだよ? 並の兵士じゃ、自分自身の魔力に潰されるだけさ。君達は……まぁ、何とか耐えられるくらいじゃない? 確証はもてないけど」

 軍人全てが無理でも、私達レベルであれば何とかなるのであれば、勝機はまだある!
 
「フォルネア殿! どうか魔殻の破り方を教えて欲しい!」

「別にいいよ。ちょっと待って……ほい! 今、祠の前に丸薬がんやくを送ったから、それを飲めば魔殻は破れるよ」

 急に丸薬が現れた!? これは転送魔法かっ!?
 こんな高度な魔法が存在するなんて……い、いや、今はそれどころではない。
 この丸薬で私達は……

「ちょっと待って! 此処で飲んだら駄目だよ! 暴走する魔力で何が起こるかわからないからね。やるんなら家でやって! それと、死んでも知らないよ」

「軍人である以上、生命の危機など厭わない。それに、今のままなら敵に殺されるだけだ。なら、少しでも活路のある道を歩みたい!」

「そう……せいぜい気持ちを強く持って、死ななように頑張りな」

 フォルネア殿の声に少し温かいものを感じた。
 激励してくれたのだろう。
 丸薬といい、彼女はそれほど悪い人物ではない……

「ちょっと待て。魔殻を破るには、その薬を飲めばいいのか? だったら、俺の時のアレは何だったんだ?」

 リクトが静かにそう言った。
 なんだ? 他の方法もあったのか?

「ば、ばかっ! お前はまた、余計なことを!」

「いや、だっておかしいだろ? 魔力を流さないといけないとか言って抱きついて、それで俺はお前とキ……」

「わぁあああああああ! と、とにかくお前達はさっさと帰って丸薬を飲め! アマナ王国の侵攻は1年後! それまでに準備を整えておくように! じゃあな!」

 吐き捨てるようにそう言うと、それから2人の声は聞こえなくなった。
 私達に静かな怒りだけを残して……
 いずれ相対した時に確認せねばならんだろう。
 あの『キ……』の続きをなっ!
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