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第五章
全身鎧
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っ!?
今の爆発はフェデリーゴの玉砕首飾か!?
アレは副長の証として、俺が使用者が死にかけた時に発動するようにして渡してあったものだ。
それが作動したって事は、あいつはもう生きちゃいないだろう。
東西から聴こえた微かな悲鳴といい、どうやらマズい状況になってるみたいだな。
「おい! アーハト! 今の爆発は!?」
「ビビるんじゃねぇ! だが、ヤバい状況になりつつあるのは違いない。適当にお宝盗ってズラかるぞ」
これ以上時間をかけるのは危険だ。
使用人を全員殺すのも屋敷を破壊するのも今となっては無理。
だからと言って、手ぶらで帰るわけにもいかねぇ。
依頼に失敗した俺達をあいつらが生かしておくわけがないからな。
こうなったら他の奴らを盾にして金目の物を独り占めして、他国に逃げるしかねぇ!
「こうなったら多少派手に動いても構わねぇ! この部屋の中の物を片っ端から盗んで……」
「そうはさせない」
廊下の奥からカチャカチャの音をさせながら歩いてくる人影が見える。
全身鎧だと?
しかも立派な両手斧まで持ってるじゃねぇか。
こんな奴がいるとは聞いてないぞ?
領軍の兵士が残っていたのか?
いや……だが、焦る事はない。
相手はたった一人だ。
ここはハンドサインで部下を下がらせておいて、一つ話し合いと行こうじゃないか。
「おおおっ! なんて事だ! 俺達は運のない男だ。まさか、歴戦の猛者が残っていたとはな」
「……歴戦の猛者?」
「そうさ! そんだけ立派な鎧を着こなしているんだ。さぞや名のある猛者とお見受けしたぜ」
くくくっ、動きが止まった。
やっぱりな。
この手の輩は武具を自慢したがる輩が多いんだよ。
なんせ今は軽装備が主体で、こんな重装備は重すぎて扱えないから大抵は屋敷で飾られるようなもんだ。
それをわざわざフルフェイスの兜まで付けて全身着込んでるって事は、武具の愛好家なんだろう。
愛好家ってのは褒められると喜ぶもんなのさ。
「……我が家に代々仕えている鍛治職人に私専用に作らせた物だ」
ほら、乗ってきたぞ!
へへへっ、このままもうちょっと調子に乗ってもらおうか。
「ほう! そいつは素晴らしい! って事は貴方様は名家の出身なわけですか? いやぁ、そんな御方がこんな所にいるとは……いや、何とも惜しいというか、残念というか……」
「……何が言いたい?」
「いえね、貴方様みたいな立派な御方がこんなところで働かねばならないなんて、軍の奴等も酷い扱いをするもんだと思いましてね」
「…………」
ほーら、考えてる考えてる。
やっぱり今の待遇に不満なんだろうな。
もう少しだ!
「どうですか? 私はさる高貴な方の命令で動いているんですが、よかったら貴方様を紹介しますよ。貴方様はこんなところで終わるような方ではない。たとえ一時と言えど、ここで過ごす時間は無駄ではありませんか?」
「ふむ……」
武器や鎧の豪華さから見ても、おそらくコイツは貴族か大商人の子弟だ。
いくら発展した街とはいえ元平民のガキが治める街の領兵なんかは嫌だろう。
さて、最後のダメ押しだ。
「私の主は軍にも顔が効きます。きっと歴戦の猛者たる貴方様をお認めになり、重用してくださいます! さぁ、こんな成り上がりの小僧の作ったつまらない街を捨てて……」
ドゴォオオオオオオオン!!
轟音と共に一瞬で壁の一部が瓦礫と化した。
フルフェイスの兜の隙間からは蒸気のようなものが荒い呼吸と共に時折噴き出している。
……コイツはやべぇな。
今の爆発はフェデリーゴの玉砕首飾か!?
アレは副長の証として、俺が使用者が死にかけた時に発動するようにして渡してあったものだ。
それが作動したって事は、あいつはもう生きちゃいないだろう。
東西から聴こえた微かな悲鳴といい、どうやらマズい状況になってるみたいだな。
「おい! アーハト! 今の爆発は!?」
「ビビるんじゃねぇ! だが、ヤバい状況になりつつあるのは違いない。適当にお宝盗ってズラかるぞ」
これ以上時間をかけるのは危険だ。
使用人を全員殺すのも屋敷を破壊するのも今となっては無理。
だからと言って、手ぶらで帰るわけにもいかねぇ。
依頼に失敗した俺達をあいつらが生かしておくわけがないからな。
こうなったら他の奴らを盾にして金目の物を独り占めして、他国に逃げるしかねぇ!
「こうなったら多少派手に動いても構わねぇ! この部屋の中の物を片っ端から盗んで……」
「そうはさせない」
廊下の奥からカチャカチャの音をさせながら歩いてくる人影が見える。
全身鎧だと?
しかも立派な両手斧まで持ってるじゃねぇか。
こんな奴がいるとは聞いてないぞ?
領軍の兵士が残っていたのか?
いや……だが、焦る事はない。
相手はたった一人だ。
ここはハンドサインで部下を下がらせておいて、一つ話し合いと行こうじゃないか。
「おおおっ! なんて事だ! 俺達は運のない男だ。まさか、歴戦の猛者が残っていたとはな」
「……歴戦の猛者?」
「そうさ! そんだけ立派な鎧を着こなしているんだ。さぞや名のある猛者とお見受けしたぜ」
くくくっ、動きが止まった。
やっぱりな。
この手の輩は武具を自慢したがる輩が多いんだよ。
なんせ今は軽装備が主体で、こんな重装備は重すぎて扱えないから大抵は屋敷で飾られるようなもんだ。
それをわざわざフルフェイスの兜まで付けて全身着込んでるって事は、武具の愛好家なんだろう。
愛好家ってのは褒められると喜ぶもんなのさ。
「……我が家に代々仕えている鍛治職人に私専用に作らせた物だ」
ほら、乗ってきたぞ!
へへへっ、このままもうちょっと調子に乗ってもらおうか。
「ほう! そいつは素晴らしい! って事は貴方様は名家の出身なわけですか? いやぁ、そんな御方がこんな所にいるとは……いや、何とも惜しいというか、残念というか……」
「……何が言いたい?」
「いえね、貴方様みたいな立派な御方がこんなところで働かねばならないなんて、軍の奴等も酷い扱いをするもんだと思いましてね」
「…………」
ほーら、考えてる考えてる。
やっぱり今の待遇に不満なんだろうな。
もう少しだ!
「どうですか? 私はさる高貴な方の命令で動いているんですが、よかったら貴方様を紹介しますよ。貴方様はこんなところで終わるような方ではない。たとえ一時と言えど、ここで過ごす時間は無駄ではありませんか?」
「ふむ……」
武器や鎧の豪華さから見ても、おそらくコイツは貴族か大商人の子弟だ。
いくら発展した街とはいえ元平民のガキが治める街の領兵なんかは嫌だろう。
さて、最後のダメ押しだ。
「私の主は軍にも顔が効きます。きっと歴戦の猛者たる貴方様をお認めになり、重用してくださいます! さぁ、こんな成り上がりの小僧の作ったつまらない街を捨てて……」
ドゴォオオオオオオオン!!
轟音と共に一瞬で壁の一部が瓦礫と化した。
フルフェイスの兜の隙間からは蒸気のようなものが荒い呼吸と共に時折噴き出している。
……コイツはやべぇな。
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