食うために軍人になりました。

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第三章

使用人面接

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 俺は書類仕事をギリギリまでやってから昼食を食べ、今は一息ついているところだ。
 テラーズが用意した昼食は相変わらず美味かった。
 しかし、執事だから何でも出来るって言ってたけど、本当に凄いよなぁ。
 俺には絶対執事は無理だ。

「旦那様」

 そんな事を考えていると当の本人が声をかけてきた。
 いつもと同じで怒っているとも笑っているとも言えない、なんとも微妙な顔をしている。

「玄関ホールに使用人の候補者が集まっておりますので、面接をお願い致します」

「あっ、もう来てるんだ。ところで何人くらい雇うんだ? それと給金とかって大丈夫なの?」

「メイド長が1人にメイドが3人、料理人が1人、従僕が2人と庭師が1人は雇ってください。給金に関しては貴族年金から支給しますので、問題ありません」

 貴族年金って確か階位に応じて支払われる軍人でいう給金だったよな。
 それで賄えるなら問題ないけど、全部で8人も雇うのか。
 結構大変だなぁ。

「では、そろそろ参りましょう」

「ああ、わかった」

 テラーズは俺を促すように礼をすると、俺は先に立って歩いた。
 案内の時ならともかく普段は主人が前を歩くものなんだってさ。
 色々面倒だね、貴族って。

「そういえば候補者は何人くらい集まってるんだ?」

「すでに選定を済ませておりますので8人です。旦那様にはその承認をいただきたく存じます。ただ気に入らなければ却下してください。また別の者を連れて参ります」

 あっ、そういうものなんだ。
 なんだ、俺が全員と面接して決めるのかと思った。
 
「旦那様が一人一人面接していたらそれだけで業務に支障が出ますから、御容赦を」

「別に構わない。おっ、あの者達か? どれどれ、どんな……え?」

 玄関ホールに8人の男女が整列して立っている。
 まるで置物かのように微動だにしないが、置物と違うのはその眼光だ。
 真っ直ぐにこちらを見ている。
 殺気込みで。

「おい、テラーズ」

「何でしょう?」

「本当にあれが使用人候補なのか? 暗殺者じゃなくて?」

「あんな堂々と目の前に立つ暗殺者もいないと思いますよ」

 いや、そうかもしれないけど、どう見ても睨んでるじゃん。
 『ここで働かせてください』って感じが全くしないんですけど。
 
「とにかく参りましょう。こんな階段上から見下ろしているだけではわかりませんよ」

「それもそうだな。もし、襲いかかってきたらぶちのめせばいいんだしな」

 俺は緊張をほぐすつもりで軽い気持ちで言ったんだけど、何故かテラーズが意外そうに軽く笑った。

「おや? それは話が早くて助かりますね。では、始めてください」

「えっ?」

「うぉおおおおおおおおおお!」

 状況が飲み込めない俺に使用人候補者達が一斉に襲いかかってきた。
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