食うために軍人になりました。

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第二章

平民の元帥

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 ヴァランタイン帝国の階級社会を知れば知るほど平民が出世するのは難しいって事がよくわかる。
 そんな中でウォーレイク閣下は元帥まで登り詰めた。
 帝国軍における最高位。
 一体どれだけの戦果を上げて来たんだろ?

「ウォーレイク閣下って、すごい人なんですね」

「藪から棒に何だ? まぁ、確かにあの方は天才と呼ぶに相応しいがな」

「苦労人でもあると思うけどねぇ。平民ってだけで色々あったみたいだしぃ」

 それそれ。
 それが聞きたかったんですよ。

「どんな戦果を上げられたんですか?」

「そうだな。逸話はたくさんあるが、その中でも私は《ガルメシア作戦》が素晴らしいと思う」

「ああ、アリシアちゃんらしいねぇ。私は《ライフアイゼン子爵令嬢の救出》かなぁ。あれはすごいよぉ」

 2人とも嬉々としてウォーレイク閣下の輝かしい戦果を話してくれた。
 《ガルメシア作戦》は今から3年前、まだ大佐だったウォーレイク閣下が指揮した作戦だ。
 当時、南方からやって来たならず者の獣人達が帝国南部の街や村を荒らし回っていた。
 南方の要であるミュラー辺境伯も討伐軍を編成していたが、南方は森林地帯も多く、獣人達によるゲリラ戦法によって討伐軍は出兵の度に多大な被害を受けたそうだ。
 度重なる失敗に業を煮やしたミュラー辺境伯は平民ながら大佐まで昇進し、南方方面軍に転属して来たばかりのウォーレイク大佐に作戦の立案を任せる事にした。
 大佐はまず近くの農村を回って森に詳しい村人から森林地帯の情報を正確に把握する事から始めた。
 敵が潜んでいそうな場所を確認しては少数の兵を送り、情報を持ち帰らせる。
 それを繰り返し、地形を完全に把握したウォーレイク大佐は包囲網を形成、ならず者達を全て討伐したらしい。

「頭の固い奴等では平民に助力を請うなど考えられんからな。柔軟な発想というのは大事だぞ」

 エリート意識の強い連中であればあるほど、平民に聞くなんて嫌なんだろうなぁ。
 それで自分が死なのは結構だけど、結局は死ぬのは部下なんだからたまったもんじゃないね。
《ライフアイゼン子爵令嬢の救出》は6年前の話らしい。
 まだ閣下が俺と同じ少尉だった頃、子爵家の令嬢が馬車で移動中にオークの集団に襲われていたのをが助けたそうだ。
 話だけなら簡単そうだけど、オークの集団から馬車を守りながら戦うのはかなり困難だ。
 それでも被害を出さずに守り抜いたっていうのがすごい。
 ライフアイゼン子爵は義理堅い人でそれ以降、娘の命の恩人であるウォーレイク少尉の後ろ盾になってくれたらしい。
 他にもウォーレイク閣下には《機密情報奪還》《共和国中隊の撃破》《士官学校汚職事件の解決》《バルヴィーン動乱鎮圧》など色々な戦果があるらしい。
 しかし、汚職事件って……。
 相変わらず汚れてるな、帝国って。
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