食うために軍人になりました。

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第二章

真刀

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「今の腐った社会体制を変えるにはドラスティックな改革が必要だ。そのためにウォーレイクには力をつけてもらわねば困るのだよ」

 陛下も帝国の体制を憂いているんだなぁ。
 でも、それなら陛下が命じればいいんじゃないのか?

「あの、帝国は陛下の御心一つではありませんか? 是正を命じられては如何でしょうか?」
 
「それは出来ん。皇帝とは貴族の長でもある。私が強権を発動しても、それは結局のところ貴族の専横と変わらん。それは改革とはなり得ない」

 貴族が権力を振りかざしているのを、陛下が権力を振りかざして止めろと言うのは意味がないって事か。
 その場だけは収まっても、いずれ元に戻ってしまう。
 やれやれ、帝国は長い歴史の中で色々と悪い方向に進んでしまったようだ。

「卿にはまだまだ力をつけてもらいたいのだよ。今回の褒美は馬の鼻先の人参という訳だ。遠慮なく受け取るがいい」

 もうちょっと言い方はないもんかな?
 まぁ、いいや。
 これ以上断るのも無粋だしね。

「ありがとうございます」

「それで何がいいかと考えたのだが、卿は《真刀》を使うようだな?」

「《真刀しんとう》? かたなの事でしょうか?」

「卿はそう呼ぶのか。まぁ、どちらでも良いが、此度はそれをくれてやる事にした」

 陛下の合図でメイドが布に包まれた棒状の物を持ってくる。
 陛下がそれを受け取って布をとると一本の刀が出てきた。
 柄を見れば間違いなく刀だ。

「これは帝室の宝物庫にあった真刀だ。これを卿にやろう」

 俺は跪いて恭しく刀を受け取る。
 軽い。
 俺の刀より軽いぞ。
 それに不思議なほどに手に馴染む。
 これほどしっくり来るとは思わなかった。
 
「抜いてみても構わん。ただし、刃を向けるなよ。向ければ私はともかく近衛騎士達が叛逆の意思ありと見做してお前を殺してしまうからな」

 ああ、やっぱりいるんだ。
 道理で壁の向こうや天井から気配がすると思った。
 まぁ、元々敵対する人以外に刀を向ける事はしないけどね。
 おっ、スッと抜ける。
 それに宝物庫にあった割には手入れがされているのか新品同様だな。

「宝物庫には状態保存の魔法がかかっているのだよ。絵画にしても武器にしても劣化は怖いからな」

 なるほど、そういうものなのか。
 しかし、凄い刀だな。
 曇りなく輝く刀身に浮かぶこの波紋、かなりの物だ。
 俺の刀より数段良い物なのは間違いない。
 こんな良い物貰っても良いんだろうか?

「本当にこれ程の物を頂いてもよろしいのですか?」

「構わん。それに虎龍タイガードラゴンの討伐にはそれくらいは必要だろ?」

 ……今、何と?
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