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第一章

万年青銅級の男⑤

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 地面に降り立った俺に全員の視線が集まる。
 そんなに見つめられたら照れちゃうじゃないか。

「君は昨日の……」

「万年青銅級ブロンズ野郎じゃねえか! 何でこんな所にいるんだよ!?」

 ハイドとゴードンの二人は驚きを隠せないみたいだな。
 アメリアに至っては状況を理解できないのかポカンとしている。
 気の抜けた顔をした美人ってのもいいもんだ。
 
「な、何でお前が此処にいやがるんだよ!?」

「やぁ、ゴードンくん。昨日はどうも。君達の事で気になる事があってね。跡をつけたらこれだもん。びっくりしちゃったよ」

「君が気になるような事をしたかな? 後学の為に教えてくれたら嬉しいんだけど」

 変わらず動揺しているゴードンと違ってハイドは冷静さを取り戻していた。
 こいつはただの雇われ冒険者じゃないな。

「君達が受けた依頼だよ」

「受けた依頼?」

「そう。君達の受けた依頼は護衛に偏り過ぎていたのさ」

「それが何? 私達は護衛が得意なだけよ。私の索敵魔法があれば護衛くらい簡単に……」

「アメリアちゃん、護衛ってそんな簡単なもんじゃないんだよ? 徹夜の見張りもあるし、昼夜を問わず警戒していないといけないんだ。体力的にもキツいし、三人組トリオじゃ、交代で休む事もままならないんだよ? それなのに君達の殆ど間を空けずに護衛依頼ばかりやっている。怪しまない方がおかしいよ」

 アメリアちゃんの言葉からして、どうやら護衛の大変さがわかっていないようだ。
 つまり、これまでの依頼で辛い思いをした事がないって事だ。
 メンバー以外の誰かが手伝っていたってところだろう。
 まぁ、こっちの黒ローブの男達だろうけどね。

「護衛依頼を受け続けたのは実績を上げてベリエール子爵から御令嬢の護衛を指名される為だったんじゃない?」

「……それは話が飛びすぎじゃないかな? 僕達は銅級カッパーだよ? 貴族の指名依頼なんて、そんな簡単に……」

「普通ならね。でも、そうなるように仕向けたんでしょ? 先月、マリン嬢は隣領のハウデンハイム伯爵の御子息に縁談を持ちかけられている。ベリエール子爵が今までは何とか顔合わせの日を引き延ばしていたけど、相手は自分より階位が上の伯爵だ。いつまでも引き延ばす訳にもいかない。だから、マリン嬢は領地に戻らなければならなかった。そのタイミングで、銀級シルバー以上で護衛の実績がある冒険者をそっちの黒い人達が別の依頼で王都から遠ざける。そうすれば子爵は君達に依頼するしかないってわけさ」

 ハイドは俺の話を真顔のまま何も言わずに聞いていた。
 この状況でも冷静でいられるとは大したもんだ。

「君の言う事が正しいとして、なぜ伯爵は権力を使わなかったのかな? 鉱山経営権が欲しいなら、力ずくで奪えばよかったんじゃない?」

「政敵に隙を作らない為さ。強引に奪ったなんて、貴族にあるまじき浅ましい行為だと言われるだろうからね。だから、こんな回りくどいやり方をしたんだろう。あの人のやりそうな事だ。ハウデンハイム伯爵の派閥の長であるエウレ……」

「そこまでにしてもらおう」

 俺の言葉を遮って、剣を向けてきたのは黒ローブのリーダーらしき男だ。
 謎解きは最後までさせてほしいんだけど、奴等からすればその名前が出るだけでも困るからね。

「失態だな。ハイド。かくなる上はここにいる全員に死体となってもらい闇に葬るのみだ」

「あらら、お嬢さんも殺す気かい?」

「そうだ。遺体を氷漬けにしておけば経営権を戴いた後で殺されたという事にも出来る。何の問題もない」

 外道まっしぐら!?
 無抵抗のお嬢さんまで手にかけようなんて、こいつら駄目だ。
 やはり放置してはおけない。

「せめて苦しまぬように一思いに喉を斬り裂いてやる」

「……っ!?」

 剣を向けられて、流石のお嬢さんも顔を青ざめさせている。
 やらせはせん、やらせはせんぞぉおお!
 男の剣がお嬢様に届くより先に俺のベレッタM9が火を噴くぜ!
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