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理想と現実
第70話 - 領地アシュヴィン
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クーベルシュタイルに戻り、身体を休めて王都へ報告へ向かった
ゾフィとクレマリーを連れヴァルスト王の謁見の間は足を踏み入れるとヴァルストの大臣が並び、王の玉座までの道を囲うように並んでいた
玉座の前に跪き、頭を垂れる
「狂戦士エーサー、此度はよくぞアシュヴィンの地を解放せしめたな。顔を上げよ」
「お褒めに預かり恐悦至極にございます」
「よい、お前には約束通りアシュヴィンの地を与え領主に命ずる。ヨルク」
宰相ヨルクが書類を持って王の傍らに立つ
「前へ出よ、エーサー」
エーサーが前へ出るとヨルクが降りてきて書状を丸め手渡した
「よくこの短期間で攻略できたな、後ほど成果の詳細を報告せよ」
ヨルクが王の側へ戻っていく
大臣たちが一斉に拍手に見送られ、エーサー達は謁見の間を出ていった
後日王室で開かれるパーティに呼ばれ、エーサーとゾフィ、クレマリーで王都へ向かう
王宮で用意された衣装に着替え、会場に並ぶとゾフィとクレマリーが寄ってくる
二人ともドレスに身を包みいつもとは違った雰囲気に目を奪われた
「二人ともよく似合うな」
クレマリーが恥ずかしそうに腕を隠す
「そんな…こんなに太くなってしまった腕でドレスを着る事になるとは…恥ずかしいです」
ゾフィも同様だった
「クレマリーはまだいいよ、肌白いし…あたしなんて精錬所にいるせいで日焼けが…」
エーサーは微笑み、二人にグラスを渡す
「二人とも誰よりも素敵だよ。自信持て」
赤い顔をした二人が両脇に並ぶと宰相ヨルクが目の前に現れた
「エーサー殿、お久しぶりですな」
こいつはよくもあんな無茶を言っておいて顔を出せたものだ
「お久しぶりです、と言っても数日ぶりですが」
「そうだな、ところで想定よりずっと早い攻略だったがやはり巨人兵は有用か?どれほどの戦力で向かったのだ」
なるほど、興味あるのはそれだけか
「巨人兵は5体です、オークジェネラルくらいまでなら訓練すれば何とか倒せました。キング以外のオークなら高い効果を発揮するでしょう。ただ、ジェネラルが相手となると1体壊してしまいましたね」
「ほぉ、たった5体で1,000体ものオークどもを…してオークキングはどうだった?」
エーサーは首を振る
「我々が戦ったオークキングは丸太を振り回す大きなオークでした、巨人兵はお世辞にも速度に自信があるとは言えません。丸太ほどの巨大な質量を持つ武器を躱すこともできず、一方的にやられてしまいました」
ヨルクは深くかみしめるようにうんうんと頷きながら地面を見る
「なるほどなるほど…ではどのようにオークキングを倒したのだ」
当然気になるだろうな
呪印の事は隠しておこう
広まったところで望んで刻む奴なんていないだろうが
「皆で協力し、私がこの義手にて…目の中から鉄杭を飛ばして仕留めました」
ヨルクは野蛮なものを見るような目で義手を見た
「よい装飾を施してあるが…なんと…それは兵士たちにおいそれと与えられるものではないからな…望んで腕を切るものがどれくらいいるか…」
まぁそうだろうな
「うーむ、巨人兵の制作費用とはどのくらいになるのだろうか?」
それも当然気になるだろう
だが俺も知らない
「ゾフィ、実際どれくらいなんだ?」
ゾフィもあまり意識していなかったようで上を見上げてしばらく考えている
「うーん………金貨50枚くらいはいるかな…あーでも鎧の中のあれこれも含めると60枚はいるかも」
ヨルクは口をあけたまましばらく放心していた
「1体金貨60枚でオークジェネラルに破壊されるものか…うぅむ…兵士に与えるにしてはちと高価すぎる…だがたった5体で1,000体のオーク達を殲滅できるとすれば…いやしかしオークキングには手も足も出んのだ…うぅぅぅむ…」
俺も開いた口が塞がらない
たった5体でオルレンヌを出るまでに俺が貯蓄した金額と同等だ
あれだけ命を賭けて戦ってきたのにたった5体しか作れないのか
クーベルシュタイルが玉鋼を作れる街でなければとても作れなかったな
「あれそんなにするのか…」
「う…うん…でも技術料は計算してなくて材料代だけだから…あたしが作るなら1体金貨100枚くらいかも…人が乗り込む都合上調整がどうしても必要でさ。相手に合わせて作らなきゃいけないんだ」
俺とヨルクは頭を抱えた
「わ、わかった。重要な情報だった、ありがとう…さすがに一兵士に与えられるものではないな…だが有効であることはよく伝わった。いずれ発注させてもらうかもしれん。その時は安くしてくれよ」
「善処します…」
想像を遥かに超える金額に拡散は意図せず抑えられそうだ
だが逆に1体発注を受けるだけで…いやそういう事ではないな
だいたい量産できるほど技師がいない
今のところゾフィしか作れないんだ
◆ ◆ ◆
クーベルシュタイルへ戻り朝食を済ませると新しい領地についてどうするかという話をすることになった
たまたま来ていたデブレオも呼び、ゾフィ、クレマリーと食卓を囲む
「アシュヴィンにも新しい街を作るんで?」
デブレオが商売の匂いに釣られて意気揚々と話し出す
「そうだな、全員移り住むとしたらクーベルシュタイルはどうするか」
「私に任せて頂けたら施設の面倒も含めて見やすよ。アントガ領に戻っちまうと思うんで精錬所関連は全て破棄して取引用の街にします。鉱山の所有権はアントガ領外なので旦那が引き継げるでしょう。旦那の街も遠くなっちまうんで中継地点としてちょうどいい」
なるほどな、資材や食料、諸々一時的に置いておく場所としてデブレオに運用させるのがいいかもしれないな
「よし、それでいい。新しい街は領土の名前そのままでアシュヴィンとするでいいか?」
3人とも異論は無いようだ
「街はオークの街があったところを再利用しよう。全て焼き払ったし森と山に囲まれたいい立地だ」
「決まりですね、早速資材を買い集めて来ます」
今までの道のりを考えると感慨深い
「ようやく俺の領地を手に入れる事ができた」
「「「おめでとうございます」」」
◆ ◆ ◆
その後一年も経たないうちにエーサーの領地は独立し
長い戦いを経て国として長く繁栄する
ゾフィとクレマリーを連れヴァルスト王の謁見の間は足を踏み入れるとヴァルストの大臣が並び、王の玉座までの道を囲うように並んでいた
玉座の前に跪き、頭を垂れる
「狂戦士エーサー、此度はよくぞアシュヴィンの地を解放せしめたな。顔を上げよ」
「お褒めに預かり恐悦至極にございます」
「よい、お前には約束通りアシュヴィンの地を与え領主に命ずる。ヨルク」
宰相ヨルクが書類を持って王の傍らに立つ
「前へ出よ、エーサー」
エーサーが前へ出るとヨルクが降りてきて書状を丸め手渡した
「よくこの短期間で攻略できたな、後ほど成果の詳細を報告せよ」
ヨルクが王の側へ戻っていく
大臣たちが一斉に拍手に見送られ、エーサー達は謁見の間を出ていった
後日王室で開かれるパーティに呼ばれ、エーサーとゾフィ、クレマリーで王都へ向かう
王宮で用意された衣装に着替え、会場に並ぶとゾフィとクレマリーが寄ってくる
二人ともドレスに身を包みいつもとは違った雰囲気に目を奪われた
「二人ともよく似合うな」
クレマリーが恥ずかしそうに腕を隠す
「そんな…こんなに太くなってしまった腕でドレスを着る事になるとは…恥ずかしいです」
ゾフィも同様だった
「クレマリーはまだいいよ、肌白いし…あたしなんて精錬所にいるせいで日焼けが…」
エーサーは微笑み、二人にグラスを渡す
「二人とも誰よりも素敵だよ。自信持て」
赤い顔をした二人が両脇に並ぶと宰相ヨルクが目の前に現れた
「エーサー殿、お久しぶりですな」
こいつはよくもあんな無茶を言っておいて顔を出せたものだ
「お久しぶりです、と言っても数日ぶりですが」
「そうだな、ところで想定よりずっと早い攻略だったがやはり巨人兵は有用か?どれほどの戦力で向かったのだ」
なるほど、興味あるのはそれだけか
「巨人兵は5体です、オークジェネラルくらいまでなら訓練すれば何とか倒せました。キング以外のオークなら高い効果を発揮するでしょう。ただ、ジェネラルが相手となると1体壊してしまいましたね」
「ほぉ、たった5体で1,000体ものオークどもを…してオークキングはどうだった?」
エーサーは首を振る
「我々が戦ったオークキングは丸太を振り回す大きなオークでした、巨人兵はお世辞にも速度に自信があるとは言えません。丸太ほどの巨大な質量を持つ武器を躱すこともできず、一方的にやられてしまいました」
ヨルクは深くかみしめるようにうんうんと頷きながら地面を見る
「なるほどなるほど…ではどのようにオークキングを倒したのだ」
当然気になるだろうな
呪印の事は隠しておこう
広まったところで望んで刻む奴なんていないだろうが
「皆で協力し、私がこの義手にて…目の中から鉄杭を飛ばして仕留めました」
ヨルクは野蛮なものを見るような目で義手を見た
「よい装飾を施してあるが…なんと…それは兵士たちにおいそれと与えられるものではないからな…望んで腕を切るものがどれくらいいるか…」
まぁそうだろうな
「うーむ、巨人兵の制作費用とはどのくらいになるのだろうか?」
それも当然気になるだろう
だが俺も知らない
「ゾフィ、実際どれくらいなんだ?」
ゾフィもあまり意識していなかったようで上を見上げてしばらく考えている
「うーん………金貨50枚くらいはいるかな…あーでも鎧の中のあれこれも含めると60枚はいるかも」
ヨルクは口をあけたまましばらく放心していた
「1体金貨60枚でオークジェネラルに破壊されるものか…うぅむ…兵士に与えるにしてはちと高価すぎる…だがたった5体で1,000体のオーク達を殲滅できるとすれば…いやしかしオークキングには手も足も出んのだ…うぅぅぅむ…」
俺も開いた口が塞がらない
たった5体でオルレンヌを出るまでに俺が貯蓄した金額と同等だ
あれだけ命を賭けて戦ってきたのにたった5体しか作れないのか
クーベルシュタイルが玉鋼を作れる街でなければとても作れなかったな
「あれそんなにするのか…」
「う…うん…でも技術料は計算してなくて材料代だけだから…あたしが作るなら1体金貨100枚くらいかも…人が乗り込む都合上調整がどうしても必要でさ。相手に合わせて作らなきゃいけないんだ」
俺とヨルクは頭を抱えた
「わ、わかった。重要な情報だった、ありがとう…さすがに一兵士に与えられるものではないな…だが有効であることはよく伝わった。いずれ発注させてもらうかもしれん。その時は安くしてくれよ」
「善処します…」
想像を遥かに超える金額に拡散は意図せず抑えられそうだ
だが逆に1体発注を受けるだけで…いやそういう事ではないな
だいたい量産できるほど技師がいない
今のところゾフィしか作れないんだ
◆ ◆ ◆
クーベルシュタイルへ戻り朝食を済ませると新しい領地についてどうするかという話をすることになった
たまたま来ていたデブレオも呼び、ゾフィ、クレマリーと食卓を囲む
「アシュヴィンにも新しい街を作るんで?」
デブレオが商売の匂いに釣られて意気揚々と話し出す
「そうだな、全員移り住むとしたらクーベルシュタイルはどうするか」
「私に任せて頂けたら施設の面倒も含めて見やすよ。アントガ領に戻っちまうと思うんで精錬所関連は全て破棄して取引用の街にします。鉱山の所有権はアントガ領外なので旦那が引き継げるでしょう。旦那の街も遠くなっちまうんで中継地点としてちょうどいい」
なるほどな、資材や食料、諸々一時的に置いておく場所としてデブレオに運用させるのがいいかもしれないな
「よし、それでいい。新しい街は領土の名前そのままでアシュヴィンとするでいいか?」
3人とも異論は無いようだ
「街はオークの街があったところを再利用しよう。全て焼き払ったし森と山に囲まれたいい立地だ」
「決まりですね、早速資材を買い集めて来ます」
今までの道のりを考えると感慨深い
「ようやく俺の領地を手に入れる事ができた」
「「「おめでとうございます」」」
◆ ◆ ◆
その後一年も経たないうちにエーサーの領地は独立し
長い戦いを経て国として長く繁栄する
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