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理想と現実
第63話 - 呪鎧の脅威
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クレマリーたちが来た翌日、ヘルゼが訪れてきた
バタバタとゾフィが駆けまわっている
「やばいやばい…呪鎧を隠さないと…」
ヘルゼは待つこともなく家に上がると大きな鎧を抱えるゾフィを見つけた
「ゾフィ、なんだそれ」
「あはは…親父…これは…鎧だ…」
「ほーん、お前は親父に隠し事をするような娘だったか?エーサーのところへやってからずいぶんとひねくれたようだな」
「いや…嘘は言ってないだろ…」
食堂で朝食を取る俺を見てヘルゼが食卓に座る
「エーサー、娘がグレちまった。お前からも言ってくれ」
「まぁ、もう隠すのは無理だろうな。ゾフィ、説明してやれ」
「はぁい」
ゾフィは呪印の効力とその扱い方について説明し
呪鎧を着用してその威力を見せつけた
ヘルゼは一通り見ると俺のところへやってくる
「おい、あれはダメだろ…なんで止めなかったんだ」
ヘルゼが一番に喜んで買い付けるかと思っていた
意外な反応だ
「俺が見た時には既に完成してたんだよ。それにヘルゼは喜んで買うかと思ってた」
ヘルゼは呪鎧に目をやるとため息をついた
「さすがにあれがどれだけヤバいかくらいはわかる。あんなのが量産されたら人同士の戦争が起こるぞ。今は魔物たちが天敵だからまとまってるんだ、魔物が敵で無くなれは人は人と争ってしまう。だからこの世はこんなにも魔物が溢れたんだ」
へえ、そんなに長生きしてたのか?
「昔は人の方が強かったのか?」
「そうだ、魔法が今より発展していたからな。今や使えるのは聖騎士たちだけだ。俺が直接見たわけじゃないが火を吹いたり吹雪を呼んだりする魔導士たちが戦争に利用され絶滅したってよ」
ふぅむ…だがあれが無ければ女しかいないこの街を守る力はない
「まぁ呪鎧がどれだけ危険なのかは理解している。だが女しかいないこの街を守るのはあれがいるんだ」
「まぁ…そうだな。それはデカい課題だ…」
だがいずれ呪鎧の存在は世に広まるだろう
そもそもオーク語を喋れるのが俺一人ではない
研究が進めばあれに行き着く人はいずれ現れる
「あれはオーク語が読めるものが呪印の書を読めばいずれ発見される。どうすればいいと思う?」
ヘルゼは顎に手を当てうんうんと唸り出す
「うーん…まぁそうだなぁ…ゾフィが思いつくんだから既に実験されていてもおかしくはないな…ちと王都で調べてみよう」
そう言うとヘルゼは帰って行った
おそるおそる呪鎧を脱いだゾフィが近寄ってくる
「どうなったの?」
「さぁ、王都に行くって」
「ふぅん…エーサー、呪鎧って今あたしの含めて4体だろ」
「そうだな」
「クレマリーたちの分も作っていいか?」
戦闘技術のあるクレマリーたちがアレに乗るだろうか?
危機感の育っている戦士からすれば身体の重い呪鎧は回避が難しくかえって恐ろしいものだが…
「クレマリーたちを呼んでくれ」
クレマリーたちが揃うとゾフィが説明を始めた
一通り呪鎧の戦闘力の解説が終わり、3人に問いかける
「みんな戦闘得意なんだろ?呪鎧乗ってみたくない?」
クレマリーは深刻な顔をしている
「確かに…超がつくほど強力ですが…」
デリックが首をかしげる
「ちと重すぎますなぁ…攻撃を受ける前提で戦うとなると盾が欲しい」
アンリだけが肯定的だった
「あたしは…二人に比べてそれほど剣はうまくないので乗ってみたいかなぁ」
その後ゾフィが1体だけ呪鎧を増産し、アンリに儀式を行わせた
街の外の草原に鉄杭を建て、騎士たちとゾフィ、俺の5人で実験を見守る
アンリが呪鎧に乗り込み、起動した
「へぇぇ、このメイス。あたしじゃ持ち上げる事もできなかったのに、片手で持てちゃう」
呪鎧用の爆裂メイスを珍しそうにぐりぐりと回しながら見る
ゾフィが鉄杭に丸太を固定し、声をかける
「よーし、準備できたよー!」
ゾフィが駆け足で離れていく
アンリはゾフィが十分に離れたのを確認すると爆裂メイスを構え、走り出し
ガシャガシャと走りながら滑るように踏ん張り鉄杭に括り付けられた丸太を殴る
爆裂音が鳴り響き爆裂メイスを振りぬくアンリ
折れ曲がった鉄杭が空高く舞い上がった
くるくると回転しながら鉄杭が地面に落ちる
太ももほどありそうな大きさの鉄杭を曲げ、空に飛ばす
その威力にアンリ自身が驚いていた
「やっば…」
戦闘技術が伴うと想像以上にすごかった
これは呪鎧同士であっても一撃で勝負が決まる
中の人間が耐えられない
樹木なんかも吹き飛ばすだろう
クレマリーとデリックは言葉を失って立ち尽くしていた
やがて二人とも呪鎧に乗る決心をしたようだ
「私も作って頂こうかしら…」
「俺も…」
この3人ならオークジェネラルを超える戦力になるだろう
クレマリーが俺を見て質問する
「エーサー様は作らないんですか?」
「俺は乗らない、きっと義手と呪鎧との操作で混乱する」
たしかに呪鎧の火力は高いが動きが遅いのは変わらない
鉄杭を飛ばす仕掛けで中の人間は殺せるだろうしそれほど脅威ではない
ただし、呪鎧と同じような火力をたたき出すことは難しい
だがまぁ俺にそんな火力は必要ないだろう
あまり頼りたくないが狂戦士の呪印を使ったら呪鎧の操作に集中できないだろうしな
生身で呪印だらけの俺は相性が悪い
バタバタとゾフィが駆けまわっている
「やばいやばい…呪鎧を隠さないと…」
ヘルゼは待つこともなく家に上がると大きな鎧を抱えるゾフィを見つけた
「ゾフィ、なんだそれ」
「あはは…親父…これは…鎧だ…」
「ほーん、お前は親父に隠し事をするような娘だったか?エーサーのところへやってからずいぶんとひねくれたようだな」
「いや…嘘は言ってないだろ…」
食堂で朝食を取る俺を見てヘルゼが食卓に座る
「エーサー、娘がグレちまった。お前からも言ってくれ」
「まぁ、もう隠すのは無理だろうな。ゾフィ、説明してやれ」
「はぁい」
ゾフィは呪印の効力とその扱い方について説明し
呪鎧を着用してその威力を見せつけた
ヘルゼは一通り見ると俺のところへやってくる
「おい、あれはダメだろ…なんで止めなかったんだ」
ヘルゼが一番に喜んで買い付けるかと思っていた
意外な反応だ
「俺が見た時には既に完成してたんだよ。それにヘルゼは喜んで買うかと思ってた」
ヘルゼは呪鎧に目をやるとため息をついた
「さすがにあれがどれだけヤバいかくらいはわかる。あんなのが量産されたら人同士の戦争が起こるぞ。今は魔物たちが天敵だからまとまってるんだ、魔物が敵で無くなれは人は人と争ってしまう。だからこの世はこんなにも魔物が溢れたんだ」
へえ、そんなに長生きしてたのか?
「昔は人の方が強かったのか?」
「そうだ、魔法が今より発展していたからな。今や使えるのは聖騎士たちだけだ。俺が直接見たわけじゃないが火を吹いたり吹雪を呼んだりする魔導士たちが戦争に利用され絶滅したってよ」
ふぅむ…だがあれが無ければ女しかいないこの街を守る力はない
「まぁ呪鎧がどれだけ危険なのかは理解している。だが女しかいないこの街を守るのはあれがいるんだ」
「まぁ…そうだな。それはデカい課題だ…」
だがいずれ呪鎧の存在は世に広まるだろう
そもそもオーク語を喋れるのが俺一人ではない
研究が進めばあれに行き着く人はいずれ現れる
「あれはオーク語が読めるものが呪印の書を読めばいずれ発見される。どうすればいいと思う?」
ヘルゼは顎に手を当てうんうんと唸り出す
「うーん…まぁそうだなぁ…ゾフィが思いつくんだから既に実験されていてもおかしくはないな…ちと王都で調べてみよう」
そう言うとヘルゼは帰って行った
おそるおそる呪鎧を脱いだゾフィが近寄ってくる
「どうなったの?」
「さぁ、王都に行くって」
「ふぅん…エーサー、呪鎧って今あたしの含めて4体だろ」
「そうだな」
「クレマリーたちの分も作っていいか?」
戦闘技術のあるクレマリーたちがアレに乗るだろうか?
危機感の育っている戦士からすれば身体の重い呪鎧は回避が難しくかえって恐ろしいものだが…
「クレマリーたちを呼んでくれ」
クレマリーたちが揃うとゾフィが説明を始めた
一通り呪鎧の戦闘力の解説が終わり、3人に問いかける
「みんな戦闘得意なんだろ?呪鎧乗ってみたくない?」
クレマリーは深刻な顔をしている
「確かに…超がつくほど強力ですが…」
デリックが首をかしげる
「ちと重すぎますなぁ…攻撃を受ける前提で戦うとなると盾が欲しい」
アンリだけが肯定的だった
「あたしは…二人に比べてそれほど剣はうまくないので乗ってみたいかなぁ」
その後ゾフィが1体だけ呪鎧を増産し、アンリに儀式を行わせた
街の外の草原に鉄杭を建て、騎士たちとゾフィ、俺の5人で実験を見守る
アンリが呪鎧に乗り込み、起動した
「へぇぇ、このメイス。あたしじゃ持ち上げる事もできなかったのに、片手で持てちゃう」
呪鎧用の爆裂メイスを珍しそうにぐりぐりと回しながら見る
ゾフィが鉄杭に丸太を固定し、声をかける
「よーし、準備できたよー!」
ゾフィが駆け足で離れていく
アンリはゾフィが十分に離れたのを確認すると爆裂メイスを構え、走り出し
ガシャガシャと走りながら滑るように踏ん張り鉄杭に括り付けられた丸太を殴る
爆裂音が鳴り響き爆裂メイスを振りぬくアンリ
折れ曲がった鉄杭が空高く舞い上がった
くるくると回転しながら鉄杭が地面に落ちる
太ももほどありそうな大きさの鉄杭を曲げ、空に飛ばす
その威力にアンリ自身が驚いていた
「やっば…」
戦闘技術が伴うと想像以上にすごかった
これは呪鎧同士であっても一撃で勝負が決まる
中の人間が耐えられない
樹木なんかも吹き飛ばすだろう
クレマリーとデリックは言葉を失って立ち尽くしていた
やがて二人とも呪鎧に乗る決心をしたようだ
「私も作って頂こうかしら…」
「俺も…」
この3人ならオークジェネラルを超える戦力になるだろう
クレマリーが俺を見て質問する
「エーサー様は作らないんですか?」
「俺は乗らない、きっと義手と呪鎧との操作で混乱する」
たしかに呪鎧の火力は高いが動きが遅いのは変わらない
鉄杭を飛ばす仕掛けで中の人間は殺せるだろうしそれほど脅威ではない
ただし、呪鎧と同じような火力をたたき出すことは難しい
だがまぁ俺にそんな火力は必要ないだろう
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