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聖騎士と異端者
第31話 - 穢れた女たちの行方
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廃墟を解放し、地下の女たちを救い出した
10人に及ぶ女たちが囚われており、聖騎士ギルドへ協力を要請して助けてもらった
女たちは皆人気のないところで強烈な眠気を感じ、起きると檻の中へ居たそうだ
全員オークの子を孕んでおりフルーフやクベアのようになるのではないかと心を痛めた
宿でマドロアを呼び、彼女たちがどうなるのか聞いた
「マドロア、彼女たちの処遇はどうなる?」
マドロアは目を閉じたまま答える
「子が産まれるまでは聖騎士ギルドで面倒を見ると思います。オークの子は隠され、処分されるでしょう。彼女たちは生き残ったこれからの方が大変かもしれませんね…」
具体的な救済措置は無かった
クベアが死を望むほどだ、よほど世間の風当たりが強いのだろう
彼女たちを助けてやったのは間違っていたのだろうか
「死んだほうがマシだったと思うだろうか」
「そうかもしれません、ですが私たちにできるのはここまでです」
「なぜだ?助けたのは俺だ、彼女らの意思を聞いてやるのも責任ではないのか?」
マドロアは目を閉じたまま首を振る
「聖騎士と言うのはこういう時に残酷です
正義と高潔を貫くために、人命を助けなければなりません
死を望んだとしても手を下せません、人を殺める事が罪だから
修道女となっても後ろから指をさされる事はなくなりません
穢れた人とそうでない人がいるからです
穢れた女たちが生きたまま地獄を見るのを黙って見届けるしかありません」
救いはないのか
クベアが死を望むわけだ
「日々安全を保証されている人々は自分と違う者を見つけ、いたぶる事で自分の存在価値を慰めます。あいつより自分の方が優れていると、小さな優越感の虜になるのです。私も…そうでした…」
マドロア一人悔い改めたところで小さな優越感に浸る人々全てが改善されるわけではない、かといって殺してしまえば罪人となる
救ったはずなのに、彼女たちは死ぬより辛い現実を生きて行かねばならないのか
救いがなければ正義と高潔はただただ悪魔のように残酷だ
生かす事を選択したというよりは、しなければならなかった。と
かといってその責任から逃げていいわけではないはずだ、この国は何かがおかしい
オークと取引をしている人間を突き止めなければ
フルーフやクベアと同じ思いをする女たちが増えてしまう
「マドロア、聖騎士ギルドに信頼できる人はいるか?オークと取引している人間を突き止めたい。穢れる女が増える前に止めなければ」
マドロアは顔を上げ、強く話し出した
「そういう事でしたら、聖騎士ギルド長のフレデリク様でしょう。フルーフ様の件もあり、そういった事を許す事はないはずです。きっと力になってくれると思います」
あいつ聖騎士ギルド長だったのか
フルーフを悲しむ彼なら信用できる、早速相談しよう
「秘密裏に連絡は取れるか?大事になると街の人たちが混乱する」
マドロアは顎に手をあて、考える
「はい、できると思います。日時が決まり次第お伝えします」
「わかった」
◆ ◆ ◆
数日後
フレデリクとマドロア、俺の3人で外壁沿いの人気がない場所に集まった
「エーサー殿、オークと取引をしている人間がいるというのは本当か?マドロアの話を聞いたが信じられん…」
「本当だ、廃墟のオーク達がそう言っていた。これがオーク達の使っていた連絡用の小箱だ、中に取引の内容が記されている」
小さな小箱を渡し、フレデリクが中身を改める
オーク語で書かれている内容を一つ一つ代わりに読み上げた
「なんだと…大問題どころの騒ぎではない…だがもう廃墟はない。取引の現場を押さえるのは難しいな」
これは俺の落ち度だな、殲滅せずにドグを生かしたまま報告するべきだったか?
だがドグを倒さなければこの小箱を証拠として出せなかったんだ
仕方がないだろう
フレデリクは他に証拠がないかと小箱を入念に見ている
手紙を見て、何度も裏返しては眺め続け
何かを悟ったように目を閉じ首を振った
「思った以上に根が深い、盗賊もどきが悪さをしていると言った話ではないな。貴族が関わっている」
貴族?オークを利用して何かを企んでいるという事か
何のために?誰が得をするんだ
フレデリクは話し続ける
「巧妙に出所を隠してあるが紙とインクは上等なものだ、貴族が使うものだろう。それに全てオークの言葉で印してある、オークの言葉がわかるものがいるという事だ。オーレオン様がこのような真似を見逃すはずがない、敵は手ごわいぞ。オーレオン様の目をかいくぐるほどだ」
聖騎士たちのいる街で、正義と高潔が尊ばれる街で、大胆なやつがいたものだ
人類の敵であるはずのオークを利用するなどどうやって思いついたのだ
手に負えなくなったらどうするつもりだったんだ
「貴族がオークを利用してどんな得があるんだ?」
「わからん…通商の安全でも確保しているのだろうか。捕まった女たちの身元を調べておく、エーサー殿も何かわかったら教えてくれ」
「わかった」
◆ ◆ ◆
翌日
マドロアと一緒に修道院へ行くことにした
フレデリクが身元を調べているが、それとは別に助けてしまった者として何か彼女たちに救いがあればと思った
救われないまま放っておくのは心が痛む
救った者の責任として何かできる事はないだろうか
10人に及ぶ女たちが囚われており、聖騎士ギルドへ協力を要請して助けてもらった
女たちは皆人気のないところで強烈な眠気を感じ、起きると檻の中へ居たそうだ
全員オークの子を孕んでおりフルーフやクベアのようになるのではないかと心を痛めた
宿でマドロアを呼び、彼女たちがどうなるのか聞いた
「マドロア、彼女たちの処遇はどうなる?」
マドロアは目を閉じたまま答える
「子が産まれるまでは聖騎士ギルドで面倒を見ると思います。オークの子は隠され、処分されるでしょう。彼女たちは生き残ったこれからの方が大変かもしれませんね…」
具体的な救済措置は無かった
クベアが死を望むほどだ、よほど世間の風当たりが強いのだろう
彼女たちを助けてやったのは間違っていたのだろうか
「死んだほうがマシだったと思うだろうか」
「そうかもしれません、ですが私たちにできるのはここまでです」
「なぜだ?助けたのは俺だ、彼女らの意思を聞いてやるのも責任ではないのか?」
マドロアは目を閉じたまま首を振る
「聖騎士と言うのはこういう時に残酷です
正義と高潔を貫くために、人命を助けなければなりません
死を望んだとしても手を下せません、人を殺める事が罪だから
修道女となっても後ろから指をさされる事はなくなりません
穢れた人とそうでない人がいるからです
穢れた女たちが生きたまま地獄を見るのを黙って見届けるしかありません」
救いはないのか
クベアが死を望むわけだ
「日々安全を保証されている人々は自分と違う者を見つけ、いたぶる事で自分の存在価値を慰めます。あいつより自分の方が優れていると、小さな優越感の虜になるのです。私も…そうでした…」
マドロア一人悔い改めたところで小さな優越感に浸る人々全てが改善されるわけではない、かといって殺してしまえば罪人となる
救ったはずなのに、彼女たちは死ぬより辛い現実を生きて行かねばならないのか
救いがなければ正義と高潔はただただ悪魔のように残酷だ
生かす事を選択したというよりは、しなければならなかった。と
かといってその責任から逃げていいわけではないはずだ、この国は何かがおかしい
オークと取引をしている人間を突き止めなければ
フルーフやクベアと同じ思いをする女たちが増えてしまう
「マドロア、聖騎士ギルドに信頼できる人はいるか?オークと取引している人間を突き止めたい。穢れる女が増える前に止めなければ」
マドロアは顔を上げ、強く話し出した
「そういう事でしたら、聖騎士ギルド長のフレデリク様でしょう。フルーフ様の件もあり、そういった事を許す事はないはずです。きっと力になってくれると思います」
あいつ聖騎士ギルド長だったのか
フルーフを悲しむ彼なら信用できる、早速相談しよう
「秘密裏に連絡は取れるか?大事になると街の人たちが混乱する」
マドロアは顎に手をあて、考える
「はい、できると思います。日時が決まり次第お伝えします」
「わかった」
◆ ◆ ◆
数日後
フレデリクとマドロア、俺の3人で外壁沿いの人気がない場所に集まった
「エーサー殿、オークと取引をしている人間がいるというのは本当か?マドロアの話を聞いたが信じられん…」
「本当だ、廃墟のオーク達がそう言っていた。これがオーク達の使っていた連絡用の小箱だ、中に取引の内容が記されている」
小さな小箱を渡し、フレデリクが中身を改める
オーク語で書かれている内容を一つ一つ代わりに読み上げた
「なんだと…大問題どころの騒ぎではない…だがもう廃墟はない。取引の現場を押さえるのは難しいな」
これは俺の落ち度だな、殲滅せずにドグを生かしたまま報告するべきだったか?
だがドグを倒さなければこの小箱を証拠として出せなかったんだ
仕方がないだろう
フレデリクは他に証拠がないかと小箱を入念に見ている
手紙を見て、何度も裏返しては眺め続け
何かを悟ったように目を閉じ首を振った
「思った以上に根が深い、盗賊もどきが悪さをしていると言った話ではないな。貴族が関わっている」
貴族?オークを利用して何かを企んでいるという事か
何のために?誰が得をするんだ
フレデリクは話し続ける
「巧妙に出所を隠してあるが紙とインクは上等なものだ、貴族が使うものだろう。それに全てオークの言葉で印してある、オークの言葉がわかるものがいるという事だ。オーレオン様がこのような真似を見逃すはずがない、敵は手ごわいぞ。オーレオン様の目をかいくぐるほどだ」
聖騎士たちのいる街で、正義と高潔が尊ばれる街で、大胆なやつがいたものだ
人類の敵であるはずのオークを利用するなどどうやって思いついたのだ
手に負えなくなったらどうするつもりだったんだ
「貴族がオークを利用してどんな得があるんだ?」
「わからん…通商の安全でも確保しているのだろうか。捕まった女たちの身元を調べておく、エーサー殿も何かわかったら教えてくれ」
「わかった」
◆ ◆ ◆
翌日
マドロアと一緒に修道院へ行くことにした
フレデリクが身元を調べているが、それとは別に助けてしまった者として何か彼女たちに救いがあればと思った
救われないまま放っておくのは心が痛む
救った者の責任として何かできる事はないだろうか
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