穢れの螺旋

どーん

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可哀想な村娘

第9話 - アールテラ

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フルーフの形見をもって俺は旅に出た

ずっと流民村暮らしだったのであまり街には詳しくないがとりあえず街道が見つかれば街には着けるだろうとひたすら歩いた

山や森を超えて三日は歩いただろうか
昼はオーク、夜はゴブリンの出る土地にたどり着いた

オークとゴブリンがそれぞれ縄張りを主張しており、魔物同士で戦っている事もよく見かけるようになった

オーク達はゴブリンたちを食べるようだ
ゴブリンたちは雑食であるためなんでも食べられるがオーク達は肉食だった
数が多いゴブリンたちを餌程度にしか見ておらず、よく争っている

オークは基本昼行性、ゴブリンは夜行性だ
だがこの土地はお互いが寝込みを襲うため警備などがしっかりしている
夜でもオークは歩哨や斥候に出ているし
ゴブリンたちも昼は歩哨と斥候を出している

この土地で休むには昼間、崖の上などの高いところで寝るしかなかった
オークは絶壁などの高い壁を登ることができない、体が重いせいだ
対してゴブリンたちはどこへでも潜り込んでくる、体が軽く登壁用の道具も使える

だが高いところは飛行する魔物によく狙われるためゴブリンたちもあまりいない
そのため崖の上に拠点を作りながら移動した

俺自身も何度も襲われそうになったがこの土地には大型の飛行生物はおらず、また数も少なかったため休むくらいは可能だった

高いところへ登ったことにより街も発見した
人の出入りが激しい街だった
あれだけの人が出入りしているなら安全なんだろう
何という街かわからないがその街で情報を集める事にした

◆ ◆ ◆

二日かけて街にたどり着いた

早朝、門へたどり着くと門衛に止められる

「ぐぁっ…おまっ…誰だ!」

門衛は鼻をつまんで槍を向ける

「くっせぇ…ゴブリンか!オークの匂いか?お前本当に人間か?」

オークの嗅覚に追跡されないよう血や糞尿を浴びたまま来てしまっていた
長い狩猟生活のせいですっかり慣れてしまっていた

「すまん…風呂を貸してくれ」

真っ黒に汚れた手足を見て、もう一度門衛を見た

「ふっざけんな!そんな体で街に入る気か!あっちに川の下流があるからそこで洗ってこい!」

門衛が槍を指す方向を見ると川がある
門衛は鼻をつまんだまま眉をひそめて追い払うようなしぐさをしながら元の位置に戻る
もう一度門衛を恨めしそうに睨んだ

「早く行け!お前がいつまでもそこにいると俺が文句言われるんだよ!そこは行商人も通るの!匂いがマシになったら入れてやるから早くなんとかしてこい!」

うつむきながらとぼとぼと川へ向かった
荷物を下ろし、鎧を脱ぐ、川で鎧を洗っていると日が傾くまで水が汚れ続けた
やっとの思いで鎧を乾かし、水を浴びる
体もまた頑固な汚れが多く、日が暮れるまで洗い続けた

夕方門衛の所へ戻ると既に意地の悪い門衛はいなかった

「止まれ、身分証を見せろ」

門衛は俺を睨みつけた

やれやれ、体を洗えば中に入れてくれるんじゃなかったのか…
身分証などもっていはいない、そもそも流民村の出だ
正体を明かせば殺される可能性だってある…
少し考えた後、話せる範囲で話す事に決めた

俺はフルーフの聖騎士証を見せる

「森で一緒にオークを狩っていた戦友が死んだんだ。故郷へ返すために旅をしている、入れてくれないか?」

門衛は聖騎士証を見てもう一度俺を見た

「たしかに、オルレンヌ皇国の聖騎士証だな…お前の身分証はないのか?」

しつこい男だ…これではダメだったか

「ない」

門衛はジロジロと俺を見て、もう一度聖騎士証を見て、聖騎士証を返してきた

「いいだろう、通れ。聖騎士様と一緒に旅をしていたなら怪しいものではなかろう」

あっさりと通したな、見るからに怪しんでいるだろう

「いいのか?」
「いいと言っている。明日には冒険者ギルドへ行け、その装備を見る限り数えきれないほどのオークを殺したんだろう?帷子と武器以外は全てオークの素材を使っているじゃないか。右腕は無いようだが武器は片手用の斧だ、腕自慢ならそれでもオークは殺せるんだろう」

よく見ているな

「冒険者ギルドで何をすればいい?」
「身分証を発行してもらえる、どうせ土地も持たない浮浪人だろう?依頼を受けて達成し、街の役に立て。そうすればこの先困ることはない」
「親切なんだな」

門衛は舌打ちをしながら俺を睨みつけた

「さっさと行け!ここはアールテラ資本国家、デメトリオ辺境伯領の街ミリア。アールテラは冒険者が街を護っている、力を持て余しているなら役に立て。力と金があれば大抵の事は解決する」
「わかった、ありがとう」

街へ入ると大きな建物がたくさん並んでいた
宿の場所がわからない
通りすがりの男に聞いてみよう

「ちょっと、宿の場所を教えてくれないか」

男は俺をジロジロと眺めた

「あんた冒険者か?随分と使い込んだ防具を着ているな…右腕はどうした」
「あ、えっと宿の場所を教えてくれないか」
「あ、あぁすまん。ここをまっすぐ行ったところにあるデカイ建物だ。金があるなら明日兵器ギルドへ行くといい。義手を作ってもらえ」
「助かる」

義手なんてものがあるのか、さすがに腕がなくなったままでは不信感もあるだろう
明日様子を見てみるとしよう

宿に入ると、カウンターに10代の村娘が見える

「いらっしゃい。お泊りですか?」

フルーフの荷物に入っていた金貨を渡した

「一晩休ませてくれないか」
「金貨!?ちょっとお待ちください一番いいお部屋を用意します!」

バタバタと奥へ行くと準備をし、風呂と飯を用意してくれた
飯と風呂を済ませ、部屋に入ると村娘が扉を叩く
「こちら、おつりです」

村娘は銀貨500枚を袋に入れて手渡した

「ありがとう」
「お客様は冒険者ですか?ここいらでは見かけませんが…この街は初めてですか?」
「そうだ、明日冒険者ギルドへ行く」
「やっぱり!じゃあ私が案内しますよ。私リンネって言います。朝起こしに来ますね!」

そういうと村娘は嬉しそうにパタパタと部屋を出ていった
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