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穢れた女と呪われた少年
第3話 - 穢れた女の呪印
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三日三晩寝込んだ
熱にうなされ、食事もする気になれなかった
フルーフが毎日のように丁寧に手当てをしてくれたおかげでなんとか四日目の朝には起き上がれるようになった
フルーフが今日も手当をするために肉のスープを用意し、隣に座る
「もうそろそろ歩けるようになりそうか?」
「そうだな、熱は引いたし。そろそろ動けるだろう」
俺は上体を起こすとフルーフからスープを受け取り、啜った
フルーフは俺の姿をじっと眺めている
スープを飲み終える頃、フルーフが尋ねてくる
「足りるか?もう肉も食えるなら焼くぞ」
フルーフは返事も聞かずに焚火に火をつけ、肉を焼き始める
ずいぶんと優しくなった、俺に呪印を刻んだ女とは思えない
そういえばなぜ刻んだのか聞いていなかった
「お前の首と俺の胸の呪印について教えてくれよ」
フルーフはこちらに顔を向けると立ち上がり、隣に座った
「私の呪印は奴隷印だ」
フルーフはうなじを見せる、確かに自分に刻まれたものとは模様が違うようだ
そもそも奴隷印とはどういうことだ?流民ではないのか?
「昔オークに捕まってな…その時に焼き印を入れられた」
オークに捕まっていた…という事は…
「察しの通り既に穢されている」
急に不愉快な気持ちになった
父親が肉塊にされ、村の女たちがオークに弄ばれていた記憶が蘇る
「すまん」
酷いことを聞いたと反省した
会った頃、私の子を殺すと言っていたのは産んだオークの子だったか
かける言葉が見つからない、しばらく沈黙が続いた
「私はこの呪印を解呪するためにオークの言葉を学んだ。その辺にある本はオークシャーマンから奪ったものだ」
息を整えながらフルーフは語りだした
彼女がオークを恨む理由はこれか、この国は誰もがオークとゴブリンに頭を悩ませているのでその程度かと思っていたが想像をはるかに超える理由だった
聞いてはいけないことを聞いたと思ったが聞いた手前止めるわけにもいかず
沈黙を続けた
「君に刻んだ呪印は戦意高揚の呪印だ、特に悪いものではない。オークが使う呪印だが君の力になるものを選んで刻んだ」
「そう、なんだ…」
「呪印は高度な魔法と違って描くだけで効果がある。魔法は習得するのに長い年月を要する、今の君にはうってつけだろう」
なるほど、たしかに理に適っている。死にかけたけれど
普通は長い訓練を経て騎士や一流の剣士になるが俺は実戦経験も少ない素人だ
ただ毎日体を鍛えただけでさしたる技能はない、多少フルーフに剣は教わっているがまだまだフルーフには一度も刃は届いていない
言われてみれば寝込んだ割に力はみなぎる、気がする
そういえばフルーフは呪印を解除する方法を知ることができたんだろうか?
「君の呪印を解呪する方法はわかったのか?」
フルーフは首を振った
「まだだ…一方的につけるだけでいいものをわざわざ解除する必要がないからな。どの呪術書にも印し方は書いてあるが解呪する方法は書かれていない」
またしばらく沈黙が続く
フルーフは肉が焼けた頃合いを見計らって持ってきてくれた
「食べれるか?呪印の傷が定着したらそろそろオークを狩りに行くぞ」
その言葉を聞いた俺は今までの事を全て忘れるように肉にかぶりついた
ようやく、復讐が始められる
◆ ◆ ◆
数年後
エーサーは20歳になった
もう一人でもオークは狩れるようになり、オーク達から奪った装備で武装も整えた
革の鎧、両腕に小盾、腰には手斧を6本下げている
オーク達は油が多く、鋭い刃物は5匹も倒せば使い物にならなくなるため斬るより叩き折る武器を選んでいった結果手斧になった
小さく、頭が重いため遠心力を得やすく、関節や急所を一撃で粉砕できる武器だ
重すぎないため動き回る時も邪魔にならない
オーク達はその巨体のため一撃が重い、盾で受けようものなら何発も耐える事はできない
大ぶりなため両腕に装備した小盾で軌道を反らして空振りさせるのが一番効率が良かった
今日も二人でオーク狩りに出かける
標的は小高い丘の上にある集落だ、崖を背に集落の周辺を木杭で囲んだ砦の体をしている
中には30体ほどのオークとシャーマンがいる
こちらは二人だ、さすがに正面突破は無謀すぎるためいくつか仕掛けを用意した
オークの集落の近くに住むジャイアントボア、シージボアなどをぶつける
集落の近くに興奮作用のある餌をまき、食わせる
その後隠れた場所から尻などに石を投げて刺激を加えると怒り狂い直線上の者をなぎ倒していくのだ
どちらも十分に加速した体当たりを喰らえばオークであっても致命傷になる
一度見つけた敵をしつこく追いかける習性があるのでジャイアントボアとシージボアを放った隙に周りの者たちを片付けていく作戦だ
また、追いかけられた場合に備えて森の中にもいくつか別の罠を設けている
木杭が飛び出す罠や杭を仕込んだ落とし穴など多数仕掛けた
オークは昼行性、本来なら夜に仕掛けたいところだがシージボアとジャイアントボアも昼行性のため昼に仕掛ける事になった
武具の手入れを入念に行い、狩りに出かけた
熱にうなされ、食事もする気になれなかった
フルーフが毎日のように丁寧に手当てをしてくれたおかげでなんとか四日目の朝には起き上がれるようになった
フルーフが今日も手当をするために肉のスープを用意し、隣に座る
「もうそろそろ歩けるようになりそうか?」
「そうだな、熱は引いたし。そろそろ動けるだろう」
俺は上体を起こすとフルーフからスープを受け取り、啜った
フルーフは俺の姿をじっと眺めている
スープを飲み終える頃、フルーフが尋ねてくる
「足りるか?もう肉も食えるなら焼くぞ」
フルーフは返事も聞かずに焚火に火をつけ、肉を焼き始める
ずいぶんと優しくなった、俺に呪印を刻んだ女とは思えない
そういえばなぜ刻んだのか聞いていなかった
「お前の首と俺の胸の呪印について教えてくれよ」
フルーフはこちらに顔を向けると立ち上がり、隣に座った
「私の呪印は奴隷印だ」
フルーフはうなじを見せる、確かに自分に刻まれたものとは模様が違うようだ
そもそも奴隷印とはどういうことだ?流民ではないのか?
「昔オークに捕まってな…その時に焼き印を入れられた」
オークに捕まっていた…という事は…
「察しの通り既に穢されている」
急に不愉快な気持ちになった
父親が肉塊にされ、村の女たちがオークに弄ばれていた記憶が蘇る
「すまん」
酷いことを聞いたと反省した
会った頃、私の子を殺すと言っていたのは産んだオークの子だったか
かける言葉が見つからない、しばらく沈黙が続いた
「私はこの呪印を解呪するためにオークの言葉を学んだ。その辺にある本はオークシャーマンから奪ったものだ」
息を整えながらフルーフは語りだした
彼女がオークを恨む理由はこれか、この国は誰もがオークとゴブリンに頭を悩ませているのでその程度かと思っていたが想像をはるかに超える理由だった
聞いてはいけないことを聞いたと思ったが聞いた手前止めるわけにもいかず
沈黙を続けた
「君に刻んだ呪印は戦意高揚の呪印だ、特に悪いものではない。オークが使う呪印だが君の力になるものを選んで刻んだ」
「そう、なんだ…」
「呪印は高度な魔法と違って描くだけで効果がある。魔法は習得するのに長い年月を要する、今の君にはうってつけだろう」
なるほど、たしかに理に適っている。死にかけたけれど
普通は長い訓練を経て騎士や一流の剣士になるが俺は実戦経験も少ない素人だ
ただ毎日体を鍛えただけでさしたる技能はない、多少フルーフに剣は教わっているがまだまだフルーフには一度も刃は届いていない
言われてみれば寝込んだ割に力はみなぎる、気がする
そういえばフルーフは呪印を解除する方法を知ることができたんだろうか?
「君の呪印を解呪する方法はわかったのか?」
フルーフは首を振った
「まだだ…一方的につけるだけでいいものをわざわざ解除する必要がないからな。どの呪術書にも印し方は書いてあるが解呪する方法は書かれていない」
またしばらく沈黙が続く
フルーフは肉が焼けた頃合いを見計らって持ってきてくれた
「食べれるか?呪印の傷が定着したらそろそろオークを狩りに行くぞ」
その言葉を聞いた俺は今までの事を全て忘れるように肉にかぶりついた
ようやく、復讐が始められる
◆ ◆ ◆
数年後
エーサーは20歳になった
もう一人でもオークは狩れるようになり、オーク達から奪った装備で武装も整えた
革の鎧、両腕に小盾、腰には手斧を6本下げている
オーク達は油が多く、鋭い刃物は5匹も倒せば使い物にならなくなるため斬るより叩き折る武器を選んでいった結果手斧になった
小さく、頭が重いため遠心力を得やすく、関節や急所を一撃で粉砕できる武器だ
重すぎないため動き回る時も邪魔にならない
オーク達はその巨体のため一撃が重い、盾で受けようものなら何発も耐える事はできない
大ぶりなため両腕に装備した小盾で軌道を反らして空振りさせるのが一番効率が良かった
今日も二人でオーク狩りに出かける
標的は小高い丘の上にある集落だ、崖を背に集落の周辺を木杭で囲んだ砦の体をしている
中には30体ほどのオークとシャーマンがいる
こちらは二人だ、さすがに正面突破は無謀すぎるためいくつか仕掛けを用意した
オークの集落の近くに住むジャイアントボア、シージボアなどをぶつける
集落の近くに興奮作用のある餌をまき、食わせる
その後隠れた場所から尻などに石を投げて刺激を加えると怒り狂い直線上の者をなぎ倒していくのだ
どちらも十分に加速した体当たりを喰らえばオークであっても致命傷になる
一度見つけた敵をしつこく追いかける習性があるのでジャイアントボアとシージボアを放った隙に周りの者たちを片付けていく作戦だ
また、追いかけられた場合に備えて森の中にもいくつか別の罠を設けている
木杭が飛び出す罠や杭を仕込んだ落とし穴など多数仕掛けた
オークは昼行性、本来なら夜に仕掛けたいところだがシージボアとジャイアントボアも昼行性のため昼に仕掛ける事になった
武具の手入れを入念に行い、狩りに出かけた
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