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暗闇の中で

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「え、」

なに…ここ。

目に映るのは灯りひとつも無いただひたすら暗闇だ。
先程までいたコンビニなんて欠片すらも見当たらない。

なんで、さっきまでコンビニにいたのに…
え?なんで…

「なんで…」

何故自分がこんな場所にいるのか自分の置かれた状況が理解出来ず「なんで」と同じ思考ばかり繰り返す。
自分の心臓がバクバクと激しい音をたてている事だけが今理解できる。

何も見えない状況に大きな恐怖に襲われ体が震え出す。
体を動かす事ができずただただ立ち尽くす。

激しくなる心臓に息苦しさを感じ無意識に口が開き浅い呼吸を繰り返す。
口を閉じれば歯がカタカタと鳴る。
遂には足の力が抜けへたりこんでしまう。

そこで感じたのは草と土の感触だった。

「え、くさ?」

そこでやっと我に返ることができた。

手を伸ばし、辺りを触ってみる。
感じるのはやはり草と土。
また理解の出来ない事が起き、頭の中はまた「なんで」で埋め尽くされる。

辺りを探る中、手に草とは違う無機質な感触が当たる。
その事に驚き、慌てて手を引っこめる。

だがその時自分が携帯を落した事を思い出した。
もしや、と思い勇気をだしもう一度その物があった辺りを探ってみる。

また手に無機質な感触を感じその物を伝いながら触れてみると手に馴染むいつもの感覚を得る。

「けいたい…だ」

そしてはっとする。
これで明かりを得られるからだ。

いまだ震える手で携帯を掴み、画面をみてみる。あまりの眩しさに一瞬目が眩む。
明度を下げ画面をみてみると、時刻や通知などが一切表示されておらず電波や充電残量などの表示も無くいつも使っている背景だけが表示されていた。

だが今はそんな事は関係無く、ライトマークの部分をタップしライトを付け、周りを照らしてみる。

そして目に映ったのは

「木だ…」

周りをどれだけ見回してもただ大きな木だけが見える。

え…木って…
…ここ森なのか…?

何回見回しても景色が変わるはずも無くただ木が見える。
携帯のライトではそう遠くを照らすことはできず先に何があるのか全く分からない。
歩き回れば何かみつかるのかもしれないがこんな暗闇を携帯のライト1つで歩き回る勇気など到底あるはずもなく、まだあまり力の入らない体を奮い立たせて1番近い木の根元に四つん這いで近ずき携帯のライトは付けたまま気に寄りかかる。

そして四つん這いになった事で自分がリュックを背負い手にビニール袋を握っていた事を思い出した。
リュックには大学で使っている筆記用具やノート、財布やタオルが入れてある。
ビニール袋にはコンビニで買ったお茶とサンドウィッチが入っている。

こんな状況ではお腹が空いていた事などどこかに飛んでいってしまっている。

お腹はもう空いてないし、こんな場所じゃ食べ物があるかなんて分かんないしできるだけ少しずつ食べよう。
あー、…こんな事ならもっと日持ちするもん買っとけばよかった……

勿論、コンビニから森に来てしまう事など誰も思わないだろう。
こんな状況への現実逃避だ。
木に寄りかかったことで少し気が抜けたのかそんな事を考える。
そして同時にどっと疲れを感じた。

てかほんとに、なんで俺こんな所にいんの?
さっきまでコンビニにいたのに、意味わかんねえよ…
携帯の充電いつ切れるかも分かんないし。
なんで残量表示されてないんだよ…
震えとまんねえし…まじで、誰か助けてよ…

自分を抱きしめるように膝を抱える。
明かりがあるとはいえ、それは自分の足元だけを照らすような弱い光。
こんな暗闇では気休めにしかならない。
風が木を揺らすだけで恐怖心を煽られる。

膝に顔をうずめる。

朝になれば誰か人が来たりしないだろうか。
でもその前に自分が熊等に襲われて死んでしまうのでわないか。
自分は朝まで生きていられるのだろうか。
自分の家に帰ることはできるのだろうか。

そんなことばかりが頭を埋め更に不安になる。
そんな時、耳元でチリンッと鈴のような音が聞こえ、体を弾ませる。

先程まで聞こえるものは自分の心臓と風に揺れる木の音だけだったのだ。
耳元で聞こえた音の正体を確認したい。だが顔を上げる勇気は湧いてこない。

バクバクと心臓が早鐘を打つ。

またチリンッと耳元で音が聞こえる。
そして音と共に急激な眠気に襲われる。

なんで鈴の音が聞こえる?なんで急にこんなに眠い?
顔を上げるのが怖い。でも確認しないのも怖い。
どうしよう。どうしよう。

音に恐怖を感じ体の震えが強くなる。その間にも眠気はどんどん強くなる。

このまま眠ってしまうのが怖い。
このまま寝て俺はちゃんと目がさめる?
このまま死んじゃうなんてこと…

どんどんと瞼は重くなり、どんどん恐怖も増していく。そしてまたチリンッと音が聞こえた時

気を失うように意識を手放した
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