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9晩目 ホースケさん、棲家をゲットする

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 冒険者のランクは、AからFの基本ランクからなり、ある特殊任務をこなせると評価されたものからなる上位ランクSと別れている。

「もちろんのことだが ホースケ オメエのランクは、Fだ」

 ホースケの胸にかけられたプレートがキラリと輝く。

「俺のプレート!」
「新人は、真新しいからピカピカっスよ」

 真新しいプレートには、汚れも曇りも何一つない。

「俺、冒険者!カッコいい」
「最初は、お使い程度の依頼からはじめて少しずつ覚えて慣れていきゃあいい」

 ぽふぽふと大きな手を頭に乗せられ、マンキーに頭を撫でられた。撫でてもらうという感触も新鮮で、ホースケは「でへへ」と頬を赤らめ表情を崩す。

「ホースケ ずっと一緒だよ」
「ミーシャ」

 ヒシっとミーシャに抱きつき、頭をグリグリとすり寄せる。傍目から見れば、シマリスのぬいぐるみが幼い少女に抱きついている様にしか見えないため、みな微笑ましく眺めていた。

「ホースケって性別どっちなんだろう」
「ホースケって名前からして男だろう」

 ポツリと呟いた誰かの一言が、マンキーの耳に届いてしまう。ピキリとマンキーのコメカミに青スジが浮かび上がる。丸太の様に太い腕もパンプアップしたかの様に、太い血管が浮き上がった。

「んがー ミーシャはまだ嫁にはやらん!」

 今まで微笑ましく見守っていたが、ホースケが男であれば話は別。ミーシャの貞操の危機を守るのは父親マンキーの役目。

「ホースケ 娘には指一本触れさせんぞ」

 ホースケの首根っこを掴むとミーシャから引き離した。目を白黒させるホースケは、マンキーに掴まれ身体をブラブラさせる。

「パパ!ホースケに酷いことしちゃダメ!」
「知らん!」
「ママ!ママ!」

 マキマは、「はぁっ」と深く溜め息を吐き、手に持ったフライパンでマンキーの後頭部に綺麗な一発を入れた。

「ハンガッ」
「落ち着きな マンキー」
「ホースケ大丈夫? どこも千切れてない?」
「な 中身がはみ出るかと思った」

 どうやらマンキーは、娘の恋愛には過剰な反応をするタイプの父親だったらしい。

「だが、マキマ ミーシャに男は早すぎるだろう」

 マンキーは、そう言ってホースケを指差すが、どこからどうみてもホースケは、ただの可愛いシマリスのぬいぐるみだ。額に手を当ててマキマは、大きな溜め息を吐く。そして、マンキーの頭を引き寄せ優しく抱きしめた。

「アンタが、私やミーシャのために冒険者やめてギルドマスターになったのも解ってる」
「ああ、マキマとミーシャの側で守りたくてSの証を俺は返した」

 ガクリと首を垂れるマンキーの耳元で、マキマは優しく恐怖の言葉を囁いた。

「だけどね 娘は干渉し過ぎると嫌われるよ」

 ガバッと勢いよくマンキーは、離れた。その表情は、顔色を無くし恐怖に慄く。ガクガクとマキマの両肩を掴み揺さぶり懇願する。

「そ それは嫌だ だが、ミーシャは ミーシャは……」
「今直ぐに嫁に行くわけじゃないでしょ」

 ホースケは、ミーシャにそっと耳打ちする。ミーシャもコクコクと頷いた。両手を前に組んで、小首をコテン少し倒し、ちょっと片足をつま先でトントンしなかがら、小さなお尻ももじもじさせる。上目遣いでマンキーを見上げ、爆弾を投下だ。

「ミーシャ  パパのお嫁さんになりたい」

 小鳥のように可愛らしい声は、マンキーの脳髄に直撃、華麗なるクリティカルヒットを与えた。

 大きな掌を胸の前でぐっと握りしめて膝からガタリと崩れ落ちる。その表情は、昇天したかと思うほど幸せそうだったと後に誰もが語り継いだと言う。


「パパのお嫁さんになりたい」

「パパのお嫁さんになりたい」

「パパのお嫁さんになりたい」

 マンキーの頭の中で、同じセリフが何度も繰り返される。男親なら誰もが一度は言われたいセリフのナンバーワンだ。

「ホースケ アンタ ヤルね」

 マキマが、親指を立てて「ナイス」だと褒めた。ミーシャとホースケは、顔を見合わせて「キシシ」と笑った。



「取り敢えず、住むところも無いんだろ? うちの屋根裏部屋で良ければ好きに使うと良いよ」
「えー ミーシャのお部屋でも良いのに」
「また、アレマンキーが面倒臭いことになるだろ」
「はーい」

 少し不満そうだったが、「ホースケと一緒に住めるのなら」と最終的に納得した。

 屋根裏部屋は、少し天井が低かったが、オバケでぬいぐるみ姿のホースケには、何の問題もなかった。小さな窓も付いていて、なかなかの広さだ。

 マキマが、大き目のクッションを持ってきてくれた。

「必要ないかもしれないけど、ベッド代わりに使いな」

 コレもマキマの手作りなのだろうか?水色の四角いふかふかクッションで周りに可愛らしいレースがあしらわれていた。

 ホースケは、小窓を開けて、側にクッションを持ってきた。夜空には満天の星が煌めいている。クッションに腰掛けて夜空を見上げる。夜が明け、星が見えなくなるまでずっと星空を眺めていた。
 


 












 



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